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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ゲームをすることと引き換えにルチにカード整理のお手伝いをしてもらう話。

    ##TF主ルチ

    お手伝い その日は、朝から大粒の雨が降っていた。目が覚めた途端から、ザアザアという賑やかな音が聞こえてくる。身体を起こすと、先に起きていたルチアーノが窓の外を眺めていた。
    「雨か。これだけ降ってたら、屋外でのデュエルはできないだろうな。雨に濡れて風邪を引かれても困るし」
     そう言いながら、彼は僕に笑いかける。両目を大きく吊り上げたにやにや笑いは、何かを企んでいる証拠だ。嫌な予感がしながらも、僕はベッドから這い出した。
    「今日はカードの整頓をしたいから、ゲームは無しだよ。たまには休ませてくれないと、体力も持たないし」
     そう告げると、僕は洗面所に向かった。以前は身だしなみなど気にしたことは無かったのだが、ルチアーノと過ごすようになってからは毎朝洗面所に向かっている。彼は、意外なほどに身だしなみに口うるさいのだ。
     リビングに入ると、ルチアーノはソファの上で待ち構えていた。朝食の準備をする僕を見ながら、テレビにゲーム機を繋いでいく。食べ終わる頃には、対戦ゲームのソフトまで用意されていた。
    「ほら、さっさとコントローラーを持ちな」
     催促するルチアーノを無視して、僕はリビングを抜け出した。不満そうな顔のルチアーノが、とことこと僕の後をついてくる。机に向かう僕を見て、大袈裟に唇を尖らせた。
    「なんで無視するんだよ。上司の言うことを聞くのが、部下の役目だろ」
    「そう言われても、机の上はこんななんだよ。部下の仕事をサポートするのも、上司の仕事でしょ」
     そう言うと、僕は机の上を指差した。そこには、パックが箱のまま置かれている。買ったはいいものの、開けただけで整頓する時間が無かったのだ。
    「そういう細かい仕事は、部下がこっそり片付けるもんだぜ。気配りってやつだ」
    「こっそりも何も、そんなことする時間なかったでしょ。僕たちはずっと一緒にいたんだから」
     僕の言葉に、ルチアーノは悔しそうに主張を引っ込めた。ちらりと散らかった机を見て、諦めたように言葉を吐く。
    「分かったよ。とっとと片付けな」
     僕は、押し入れからストレージボックスを取り出した。僕はしょっちゅうパックを買っているから、箱の数もかなりのものだ。大量のカードが詰められた箱は、一つ一つがずしりと重い。落とさないように気を付けながら、箱の上に箱を積み上げる。バランスを取りながら、三箱ずつ運んでいった。
    「うわぁ。こんなにあるのかよ。全部使うってわけじゃないんだろ? 無駄じゃ無いのか?」
     机に並べられていく箱の山を見て、ルチアーノが呆れたように言う。思った通りの反応に、苦笑しながら答えた。
    「全部は使わないよ。もう使えないカードもあるし、今は使い道の無いカードだっていくつもあるから。でも、全部が思い出の詰まった大切なカードなんだ」
     答えながら、僕は目の前にあった箱を開けた。中には、ぎっしりとカードが詰められている。そのうちの一枚を取り出すと、ルチアーノの前に差し出した。
    「これは、ルチアーノからもらったカードだよ。ちょっと前まで使ってたんだ。覚えてる?」
     彼は、ちらりと視線をカードに向けた。印刷された文字を見ると、興味無さげに視線を離す。ベッドの上に胡座をかくと、どうでもいさそうに言った。
    「そんなの、覚えてるわけ無いだろ。いいからとっとと進めな」
     辛辣な声に、僕は苦笑いする。僕はこのカードをずっと大切にしてたのに、彼にとってはどうでもいいことだったのだ。大方、貢ぎものを気まぐれで横流ししたのだろう。
    「そっか。僕は、ずっと覚えてたんだけどな」
     答えてから、色の違うストレージボックスを取り出す。この緑の箱には、マジックカードが入っているのだ。隣に並ぶ赤い箱は、もちろんトラップカードだ。箱を積み上げると、こっちも慎重に移動した。
     箱の移動を終えると、今度はパックの中身を仕分ける。ストレージはカテゴリーと五十音で分けてあるから、順番になるように並び替えた。カードを積み上げていると、後ろからルチアーノの声が聞こえてくる。
    「おい」
    「どうしたの?」
     僕が答えると、彼は退屈そうにベッドに寝転がった。振り返ると、頬杖をついてこっちを見ている。
    「まだ終わらないのかよ」
    「まだって、さっき始めたばかりでしょ」
     答える声は、少し呆れを含んでしまった。まだ三十分も経っていないのだ。そんなに進んでいる訳が無い。ルチアーノは、退屈そうに溜め息をついていた。
     背後に視線を感じながら、僕は再びカードと向き合う。パックの仕分けが終わると、今度はストレージに差し込んでいく作業だ。箱を開けると、仕切りを見ながら目的のカテゴリを探す。
    「まだなのか? いつまでやるんだよ」
     背後から、再び声が聞こえてきた。退屈で仕方ないのだろう。足を揺らしているような音が聞こえる。
    「まだだよ。この調子だと午前いっぱいはかかるかな」
    「そんなにかかるのかよ。溜め込みすぎなんじゃないのか」
     文句を垂らしながら、ルチアーノはごろごろとベッドの上を転がる。その様子を見ていて、あることを思い付いた。
    「ねぇ、ルチアーノ。待ってるのが暇なら、手伝ってよ」
     そう言うと、ベッドの上に視線を向ける。彼は両目を大きく開いてこちらを見ていた。
    「はぁ? 君、僕に労働させるつもりなのかい?」
     尊大な態度で言葉を投げ掛ける。子供の姿をしているが、彼は神の代行者なのだ。そう簡単には手伝ってくれないだろう。何か口実が必要だった。
    「じゃあ、こういうのは? 手伝ってくれたら、ゲームに付き合ってあげる」
     そう言うと、彼は迷ったように身体を起こした。机の上に視線を向けると、目を細めて沈黙する。しばらくすると、小さな声で答えた。
    「分かったよ。手伝ってやる」
     意外とすんなり応じてくれた。そんなにゲームがしたいのだろうか。ちょっと驚きだ。
    「じゃあ、ルチアーノは魔法カードをお願い。こんな感じで仕切りで分けてあるから、同じカテゴリのカードをしまってね」
     モンスターカードでお手本を示してから、ルチアーノに魔法カードの箱とパックのカードを渡す。彼は、納得いかなそうな顔でそれを受け取った。
    「なんで僕がこんなことを……」
     ぶつぶつと呟きながらも、ベッドの上にカードを広げる。一枚ずつ手に取ると、ストレージボックスの中に押し込んでいった。
     僕も、自分の手元にあるモンスターカードを手に取った。二つ目の箱を開けて、該当するカテゴリにカードを差し込む。次のカードを手に取ると、別のカテゴリを探してカードを差し込んだ。ストレージボックスにはたくさんのカードがあるから、探すだけでも一苦労だ。
     カードと格闘していると、ことんと隣に箱を置かれた。見上げると、ルチアーノが僕を見下ろしている。空になったパックの袋を見せると、自慢げな表情で言った。
    「終わったぜ」
     にやにやと笑いながら彼は言う。その手元に、次のパックと箱を差し出した。
    「じゃあ、次はこれをお願い。トラップカードだよ」
    「まだやらせる気かよ。僕をなんだと思ってるんだ?」
    「終わったら遊んであげるから。手伝って」
     軽く手を合わせると、ルチアーノはため息をつく。こっちを試すような笑いを浮かべた。
    「もっと真剣に頼めよ。僕は神の代行者だぞ?」
    「ルチアーノ様。僕に手を貸してください。お願いします」
     両手を合わせて言うと、彼は満足そうに笑った。パックとカードを取り上げると、自信満々な態度で言う。
    「分かったよ。仕方ないな」
     ベッドの上に乗ると、パックの中のカードをひっくり返した。粗雑な扱いに冷や冷やするが、注意することはできない。そんなことをしたら、彼はやる気を失ってしまうかもしれない。
     ストレージボックスに向き直ると、残りのパックを手に取った。作業は順調に進んでいて、残りは新しいテーマだけだ。蓋を開けると、新しい仕切りを作ってカテゴリ名を記入する。
     カードを五十音に並べると、空いているスペースに収めた。まだスペースが空いているから、何も書いていない仕切りで蓋をする。これだけある空白も、次にパックを買ったらすぐに埋まるのだろう。蓋を閉めると、箱を順番に並び替えた。
    「ほら、終わったぞ」
     隣から、ルチアーノが箱を戻しに来る。差し出された空のパックは、まとめてごみ箱に捨てた。ストレージボックスを積み上げると、落とさないように気を付けながら押し入れの奥にしまう。ずり落ちそうになる箱を見て、ルチアーノが手を添えてくれた。
    「ありがとう」
    「一つ、借りだからな」
     にやりと笑いながら、ルチアーノが言う。借りということは、後で返さないといけないのだろう。
     扉を閉めると、彼は嬉しそうに笑った。僕の手を引くと、部屋の外へと引っ張っていく。
    「終わったな。約束通り、付き合ってもらうぜ」
     そういえば、そんな約束をしてしまっていた。軽率な言葉を、今になって後悔する。
    「ちょっと待ってよ。お昼だから、先にご飯を食べさせて」
     慌てて言うと、彼は動きを止めた。僕の手を離すと、生意気な態度で言葉を吐く。
    「仕方ないなあ。とっとと済ませろよ」
     僕が昼食を食べている間、彼はずっとゲーム機の前に座っていた。これは逃げられなさそうだ。諦めて覚悟を決める。
    「食べ終わったな。じゃあ、遊ぶぞ」
     食器を片付けると、すぐにコントローラーを渡された。
    「お願いだから、手加減してね」
     そう言うと、彼はにやりと笑った。嬉しそうにコントローラーを手に取ると、ソファの上に腰を下ろす。
    「気が向いたらな」
     これは、してくれないだろうな。にやにやと笑うルチアーノの姿を見ながら、僕はそう思った。
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