長編 エピローグ 微睡みの中で、僕は夢を見ていた。
ルチアーノと二人で、遠く遠くの観光地に遊びに行く夢だ。僕たちはしっかりと手を繋いで、人で溢れる大通りを歩いていく。遊園地で疲れるまで遊び、近くのホテルで一晩をすごし、翌日には海を見に行くのだ。ルチアーノは子供のように笑っていて、僕も心から楽しんでいた。この幸せな時間が、いつまでも続けばいいと願いながら……。
その世界から僕を引っ張り出したのは、ルチアーノの温かい手のひらだった。僕の頬に左手を当てると、慈しむように何度か撫でる。彼の人間そっくりな息づかいは、微睡みの中にいる僕にも微かに聞こえてきた。頬を何度か叩かれて、僕はようやく意識を覚醒させる。
「おはよう、○○○」
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