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    "100日間生き残れ"その場にあったのはそう書かれた一枚の紙切れ。ごめんね先生達4人は摩訶不思議な黄昏時の世界で奇妙なサバイバル生活を始める───。

    テラーで載せた二次オリ小説の第一話、こちらでも記載させていただきます🙇‍♂️

    【二次オリ】100 Days Twilight二次オリ集合
    黄昏の森で100日サバイバル

     ご機嫌よう。本日は黄昏の森へお集まりいただき誠にありがとうございます。
     早速ですが、皆様にはこの黄昏の森で100日間生き延びていただきます。
     ただ…精鋭揃いの皆様ではただ生き残るのでは少々物足りないでしょう。なので以下の条件をクリアしていただきます。

    1. "ヒドラ"の討伐
    2."孔雀扇"、"山鳴りの角笛"、"灰のランプ"の入手
    3."最後の城"への到達

     以上の条件を100日以内にクリアしてもらいます。もしクリアできなければ一生黄昏の森からは出られなくなります。
     それでは、皆様のご健闘を心よりお祈り申し上げます。

    ***

    「100日間生き残れ、と……紙にはそう書かれているわ。」

     日没のような空。鬱蒼としげる奇怪な森。蛍が淡く照らすその森の中に、招かれし4人が目を覚ます。
     とある英雄を彷彿とさせる服装と、ピンクのメッシュが入ったボブカットが特徴的な女性──ごめんね先生と呼ばれる女性は、一枚の紙切れを手に目を細めている。

    「目が覚めたらこんなところにいるなんて、びっくりしたよ。……うん。空から見てみたけど、ここは間違いなく"黄昏の森"だ。」

     ごめんね先生の呟きに応えるように空から降りてきたのは、一言で言うと天使…否、神だろうか。純白のフードを被り、あどけなさの中に神々しさを秘めたような風貌の少年──ミスターパステルは杖を抱え空を仰ぐ。

    「はぁ……面倒なことになったな。」

     少し離れたところで大木にもたれ掛かるのはミスターウィング。一見可憐な少女のようだが彼はれっきとした男だ。儚げにも見えるその風貌だが、近寄る者を拒むような刺々しい空気を纏っている。

    「ごめんね先生、これって例の"主催者"の仕業かもしれないよ。前にも何度かあったんだよね。今回の犯人も、すまない先生たちが巻き込まれたやつと同じなんじゃないかな?」
    「今はまだわからないわ。だって今回のターゲットはすまない先生たちじゃなくて"私たち"だもの。」

     むくれ顔で杖を振るミスターパステルをなだめるごめんね先生。パステルの言う"主催者"とは、すまないスクールに所属するすまない先生やその生徒たちを何度も"デスゲーム"に巻き込んだ謎の人物である。
     その"デスゲーム"には必ずすまない先生が巻き込まれているのだが、今回彼はここにはいない。ミスター銀さんやブラックだっていない。では何故自分たちなのか?と疑問が浮かぶが、彼らもまたすまないスクールと深い関わりを持つのである。
     だが自分たちをこんなところに放り込んだ犯人が、その主催者と同一人物かどうかは今は探りようがない。出口らしきものも見当たらないので、自分たちはこの紙切れの通り100日生き延びる他ない。

    「誰が何のために私たちをここに放ったのかはわからないわ。けど私たちは必ず全員揃ってここから生きて帰る、それだけは変わらないからね!」

     ごめんね先生の激励に少し安心したように笑みを浮かべるミスターパステル。少女のような愛らしさを纏うごめんね先生だが、彼女もすまない先生同様1人の立派な教師である。故に生徒たちを守り抜こうという強い責任感を持っている。

    「うん、そうだね。皆でここから生きて帰ろう!……ってミスターウィング、どこに行くの?」

     しかしその中で、1人だけさっさとどこかへ向かおうとしている人物がいる。ミスターウィングだ。それに気づいたミスターパステルは、はぐれようとするウィングを慌てて引き止める。

    「何処へって…ナーガの神殿に決まっているだろう。ここから出るためには100日生き延びるだけでなく、三つの条件をクリアしなくてはならない。そのうちの一つ…ヒドラの元へ向かうためには他のボスモンスターも倒さなくてはならないんだろう?それに…」

     一度言葉を止めて、腰のリボンを軽やかに靡かせくるりと振り返る。そしてパシッ!と"カゼヨミのリボン"と呼ばれるそれを構える。

    「ボクは強い奴と戦いたい。そのためにも僕は先に行かせてもらう。」
    「ちょっとミスターウィング!気持ちはわかるけど落ち着いて、単独行動はダメよ!今は私たちと一緒に行動すること、わかった?」
    「そうだよウィング!それに戦うにしても色々準備とか必要でしょ?拠点とか武器とか、食料確保とか!」
    「……はぁ、仕方ないな。わかったよ。けど準備ができたらすぐにでも討伐に向かうからな。」

     ごめんね先生とミスターパステルに説得されて、渋々と言ったように戻ってくるミスターウィング。彼は戦闘狂ではないが、強くなることに強いこだわりを持っている。そのこだわり故に相手のことを深く調べずに突き進んでしまうこともあるのだ。
     ここでは何があるかわからない上迂闊に動き回って怪大怪我でもしたら…だから何があってもすぐにでも対処できるように、なるべく固まって行動するべきだとごめんね先生は判断した。
     ウィングも戻ってきたところで早速拠点作りのための材料を…と言ったところで、ミスターパステルがあっ!と声を上げる。

    「…あっ!そうだ、ミスターモグラ!大丈夫!?モグラは日光に当たると倒れちゃうって…」

     慌てたようにパステルが声をかけた先、ヘルメットにマスクとゴーグルで顔を隠した少年──ミスターモグラは手袋を外した手を上にかざして…親指と人差し指で丸を作る。

    「……なんともない、ってことで良いのよね?」
    「……ああそっか、黄昏の森って常に黄昏時…というか四六時中明るい夜みたいなところだものね。」

     黄昏の森は常に夕暮れのような世界で、強い日差しに照り付けられることはない。日光に弱い体質のミスターモグラにはむしろ好都合かもしれない。

    「それじゃあ落ち着いたところで早速ダンジョン攻略…と行きたいところだけど、まずは拠点を作りましょう!サバイバルは拠点がないと始まらないものね!」
    「それなら僕に任せて!建築のことならミスター銀さんに色々教わったからね。どんなのにしようかな?」
    「そうね…せっかくだからツリーハウスはどうかな?こんな大きな木があるんだし、それに高いところからだと周りを見渡せるもの!」
    「いいねそれ!どうせなら飾り付けも──」

     そんなやりとりをしながら早速設計を練るごめんね先生とミスターパステル。屋根の形は、柱は、ベッドの色はと話し合う2人は楽しそうだ。
     そんな2人を横目にせっせと作業台で道具を作るミスターウィング。木は出来るだけ多く取った方が良いな、などと考えながら斧で木を伐採しているところで、草を刈って種を回収するミスターモグラが目に入る。

    「…ミスターモグラ、お前先生達に混ざらなくて良いのか?」
    「………建築は得意じゃない。」

     ミスターモグラはそれだけ答えて再び種の回収に勤しむ。サバイバルは拠点だけでなく食料確保も大切だ。畑はモグラに任せても良いだろう。
     ある程度木材を回収したところでミスターパステルの声が響く。ツリーハウスに丁度良い大木を見つけたようだ。大木の根元でごめんね先生がこちらに手を振っている。ミスターウィングはミスターモグラと共に木材と道具を抱えて先生達の元へ向かった。

    ***

     数時間後、大木には4人の協力により見事なツリーハウスが完成した。
     ミスターウィングが素材を集め、ごめんね先生とミスターパステルで建てた拠点は、原木と木材を組み合わせ大木の雰囲気に合わせつつ装飾でアレンジされた見事な建築だ。
     そして木の根元にはミスターモグラが耕した麦畑が出来上がっている。種を植えたばかりなのでまだ育っていないが、しっかりと柵と松明で囲われている。
     拠点の中にはラージチェストにかまどが三つ、木材で作ったダイニングテーブルに四人分の椅子、そしてこの森の羊から刈り取った羊毛で四人分のベッドが並べられている。
     もう少し凝ったものにしたかったとパステルが呟いていたが、各々のカラーに合わせたベッドやカーペットを用意したのはパステルだ。それに限られた素材で居心地の良い部屋を作ったのだからパステルの腕は見事なものである。

    「さて、今は簡易的なものだけど…良い拠点が完成したから雨風を凌ぐのは問題ないわね。それにしてもシンプルだけど、この部屋すごく落ち着くなぁ…これもパステルのおかげね!」
    「えっへへー。これも銀さんに色々建築のこと聞いたからさ。素材が集まったらもっと豪華なの建ててあげるから待っててね!」
    「それは楽しみね!私も素材集めとかダンジョン攻略とか頑張らなきゃ!それとあとは食料問題だけど…小麦が育つまではお肉や魚を狩るしかなさそうね。」

     焼き鳥食べたいな、と内心で呟くごめんね先生。今のところ見つかった動物は鹿と大きなツノが生えた羊、それから兎や小鳥などの小動物だ。ごめんね先生は焼き鳥が好物なのだが、普段の世界ならあちこちで見かける鶏がこちらでは全く見つからないのだ。
     ひとまず羊毛ついでに狩った羊肉を調理して食べながら、今後について話し合っているところである。

    「最初のダンジョンだけど、まずはやっぱりナーガ神殿だよね。こいつは装備と盾さえ揃えれば何とかなるはず。」
    「そうね。ダンジョン攻略は私とミスターウィングで行きましょうか。その間ミスターパステルとミスターモグラには物資調達をお願いしても良いかな?」
    「任せてよ、木材も食料も鉱石もバッチリ揃えておくから!それにちょっと離れたところに大きな山みたいなのがあったんだ。そこに行けば素材がたっぷり手に入るかも!ね、モグラ!」
    「……ん。」

     大きな山と聞いてごめんね先生はぎょっとする。この黄昏の森での大きな山といえばあれしかないだろう。だが…

    「え?大きな山って…もしかして亡霊鉱山かな?そこは強いモンスターが沢山いるから今は危ないわ。まだ近づいちゃダメだからね?」
    「ええー?せっかく鉱石たくさん採れるチャンスなのに…でもそっか、たしかにモンスターがいっぱいいるなら危ないよね。モグラ〜鉱山は諦めてブランチマイニングしよっか。」

     ミスターパステルが見つけたという大きな山──亡霊鉱山を諦めて地下を掘ろうと言う二人にほっとするごめんね先生。
     亡霊鉱山は黄昏の森での出現確率が高く大量の鉱石やレアなアイテムが入手できるが、強力なモンスターが蔓延っているのだ。おまけに規模が大きければ大きいほど攻略難易度も大いに跳ね上がる。資材の少ない今の状態で攻略に挑むのは非常に危険だ。

    「じゃあそう言うことだから、ミスターパステルとモグラはブランチマイニング。私とウィングでナーガ神殿攻略で決まりね。」
    「拠点は出来たし役割分担も決まったな。ならボクはとっととナーガ神殿に…」
    「ダメ、今日は一旦お休みするの!」
    「さっきも言ったけど装備と盾まだ揃えてないんだから、こういうのはしっかり準備しないと!」

    ***

     数日後。ある程度資材が集まったところで準備を整えた面々は、各自の役割を果たすべく拠点の前に集まっていた。

    「ミスターウィング、忘れ物はない?装備は…うん、ちゃんと付けてるわね。」
    「見ての通り準備完了です先生、早く行きましょう。」

     念入りに装備を確認するごめんね先生だが、ミスターウィングは待ちきれないとばかりに神殿の方角に目を向けている。そんな彼にミスターパステルが苦笑いを浮かべる。

    「それで、ナーガ神殿はあの方角で合ってるんだよな?」
    「やる気満々だねウィング…この目でバッチリ見たからあっちであってるよ。って言っても見たのはほんの一角だけど…うん、二人ならきっと大丈夫だよ。ナーガの討伐頑張って!」
    「素材、集めておきます。」

     ミスターパステルと素材を集めに行くのだろう、ミスターモグラも愛用のツルハシを構えて張り切っているようだ。……表情は変わらないが。
     パステルとモグラは昨晩食材の種類が足りないと話し合っていたようだ。今日は先生達が討伐に向かっている間に素材を見つけたいのだろう、この黄昏の森でどれほどの資源があるかは未だわからないが。
     行ってきますと神殿の方へ歩いていく先生達を、パステル達は手を振りながら見送った。

    ***

     それを一言で言うなら、祭祀場か。

     数刻後、ごめんね先生とミスターウィングは目的地にたどり着いた。四方を囲むような塀は苔むしてヒビが入っているが、入り口らしきものは見当たらない。
     入るなら塀をこじ開けるか、あるいは飛び越えるか。

    「ナーガ神殿は…ここで合ってますか?」
    「ええそうよ。ナーガ神殿はダンジョンというより祭祀場の跡地って言えば良いのかな?迷路やトラップは特になかったはずだから、この神殿のボスを倒せば……ってちょっと!ウィング君待ちなさい!」

     ごめんね先生が言い切る前に、ミスターウィングは塀を飛び越えてしまう。ひらりと塀の向こうに靡くリボンを追うように、ごめんね先生も塀を登る。
     神殿内は石柱が数本に、ひび割れて苔むした壁があちこちに張られている。高い生垣は草が覆い茂り、何年も放置され忘れ去られたような印象を受ける。
     見たところトラップのようなものも見当たらない。神殿という闘技場になるのだろう。塀を越えてダンジョン内に侵入したウィングの足が地面についた直後…"それ"は現れた。

    ずる……ずる……

     緑色の鱗に覆われた身体。とぐろを巻きながら神殿内の中心に現れた巨体は、遠目から見てもただならぬ威圧感を放っている。

    「だめじゃない先に行っちゃうなんて!ナーガは神殿の中に入った瞬間に現れるのよ。黄昏の森で最初のボスだからって油断してはダメだからね?」
    「分かっています先生。それよりも……あの大蛇のようなものがナーガですか?」

     後から入ってきたごめんね先生は、塀から降りてウィングの隣に立つ。完全に姿を露わにした大蛇───ナーガはこちらに気づくとシュルル…と舌を鳴らして先生達を睨みつける。

    「ええ、ナーガは周りのブロックを破壊しながら突進してくるわ。当たると打ち上げられるから、突進には特に気をつけて。」
    「なるほど…っと、来ましたね。」

     直後、ナーガは猛スピードでこちらへ突進してくる。破壊された石柱の破片がこちらに降りかかり、先生とウィングは咄嗟にかわす。
     石柱に飛び乗ったウィングは、上からナーガの動きを観察する。ごめんね先生は愛用の武器”ネオンシューター“を構えて応戦している。神殿内の壁や生垣を破壊しながら暴れ回る巨大な蛇は、動きこそ派手だが行動パターンは単純なものだ。

    「(攻撃は1パターン、突進のみといったところか。図体がでかい分攻撃範囲も広いし接触するだけでダメージが入るだろう。….だがどうということはない、当たらなければこっちのものだ。)」

     ウィングは一度柱から降りる。目の前に降り立った獲物をナーガは逃がさない。獰猛な唸り声をあげて突進するナーガを、ウィングはすぐさま後ろに飛んでかわす。側面に回り込もうとするが、長い胴体ですぐに追いつかれてしまう。
     ならばと今度は正面からのナーガに飛びかかる。ギリギリのところで突進をかわし”カゼヨミのリボン“をナーガの胴体に巻き付け、その勢いでナーガを石柱に叩きつけようとする。
     しかし力自体は相手の方が上なようで、ウィングは勢いよく振り払われてしまう。ウィングは咄嗟に宙返りをして背後の壁を蹴り付け、ナーガに飛びかかる。
     脚力で勢いをつけたウィングは今度はナーガの身体にリボンを叩きつける。”カゼヨミのリボン“はウィングの専用武器で、相手に巻きつけたりムチのように扱うことができるのだ。
     高威力のリボンをもろに受けたナーガはうめき声を上げて体勢を崩す。見るとナーガの胴体は出現時よりも少し短くなっている。ダメージが入れば入るほど短く切れていくのだろう。だがナーガはすぐに起き上がり、ウィングに狙いを定めて再び体当たりを仕掛ける。

    「なんだ…さっきよりも動きが早い…!」

    ウィングは着地するが、動揺するあまりバランスを崩してしまう。その隙をナーガは逃さない。牙を剥き出し障害物を蹴散らしながら飛びかかり、後ろに倒れ込んだウィングに喰らい付き───

    ドンッ!

     ───大きく鋭い牙に噛みちぎられ血飛沫が舞う…ことはなかった。視界の端に映ったのは見慣れた桃色。顔を上げると、ごめんね先生が立ち塞がっていた。

    「っ、先生…」
    「ナーガは突進してきた時に盾でガードすれば、少しの間気絶する。その隙に──」

     盾でナーガの攻撃を防いだごめんね先生は、ネオンシューターを構えチャージする。

    「─ナーガの頭を狙うの!」

     最大までチャージし、レーザーブラストを放つ。高威力のブラストを正面からもろに受けたナーガにはひとたまりもないだろう。あっという間に胴体が焼け落ちる。だがあと少し、まだ残っている。ナーガは血走った目でこちらを睨みつけ、キシャアアアアア!!と耳をつん裂くような咆哮を上げる。
     満身創痍になりながらも飛びつくナーガのスピードは、最初の頃よりも遥かに上がっている。すんでのところでかわすも、間近に受ける風圧も相当なものになっている。

    「胴体が更に短くなっている…けどスピードがさっきよりも早くなっている…!」
    「その通り、ナーガはダメージを受ければ受けるほど素早くて厄介なものになる。それにダメージを受けていない時間が一定数経つと回復して再生するの。だから次で一気に決めましょう!」

     ナーガが突進を仕掛けたところでごめんね先生は再び盾を構える。しかし向こうもこちらの動きを読んだのだろう、当たる寸前で引き下がりこちらの隙を伺うように睨みつける。
     ごめんね先生もそれを読み取ったのか、一度盾を構えた腕を下ろし無防備な状態で立ち塞がる。しばらく睨み合いっていたが、先に痺れを切らしたのはナーガの方だ。ずるずると後ろに下がり、そして咆哮を上げて目にも止まらぬ速さで飛びかかる。そしてナーガの牙が先生の頭を捉え──

    ガツンッ!!

     牙が触れる直前、ごめんね先生は降ろしていた盾を思いっきり振り上げ、ナーガの下顎に盾の角を打ち付ける。骨が軋む音と共に宙を舞う大蛇を横目に、ごめんね先生はウィングの方に振り返る。

    「今よ、ウィング君!」

     先生の合図に応えるように、ウィングは勢いよく駆け込みナーガ目掛けて飛びかかる。自慢の跳躍力で高く飛び上がったウィングは、渾身の力でカゼヨミのリボンをナーガに叩きつける。

    バシィッ!!!

     破裂音が辺りに響き渡る。と同時に…頭部だけになったナーガは地面に叩きつけられ、爆破と共に消滅した。

    「……倒せた、のか…?」
    「そうみたいね……ほら、黄昏の森のボスを倒すとトロフィーが貰えるの。」

     ナーガの残骸が散らばる所に歩み寄るごめんね先生。散らばった鱗の中から拾い上げたのは、一ブロックサイズに縮んだナーガの頭のようなもの。これがトロフィーだろうか。

    「…見た目はただのモブの頭ですけど。」
    「これはとても重要なものよ。次のダンジョンの攻略のためにもね。それからナーガの鱗はクラフトすれば防具にもなる。一緒に持って帰りましょう。……よく頑張ったねミスターウィング、お疲れ様。」
    「……ありがとうございます。けど…次は、自分の力で頑張りますので。」

     悔しそうに顔を顰めるミスターウィング。そんな彼の横顔を見るごめんね先生は困ったように笑い、大きな怪我をしなくて良かったと心の中で呟く。そして二人はトロフィーと戦利品を抱えて拠点へと戻るのだった。

    ***

    「あ!ごめんね先生、ミスターウィング!おかえり!ナーガの討伐は…できたみたいだね、おめでとう!」
    「あ……おかえり、怪我はありませんか?」

     拠点に戻るとミスターパステルとモグラが出迎えてくれた。笑顔で迎えるパステルと後ろから顔を覗かせるモグラに、ごめんね先生の頬が緩む。

    「二人ともただいま!大きな怪我はしてないから大丈夫……なんだかいい匂いがするんだけど、これって…」
    「にんじんとじゃがいもを見つけたから、僕とモグラで野菜スープ作ったんだ。タラも見つけたからそれも焼いたんよ。」
    「…パステルが教えてくれました。」
    「そうなの?…2人ともありがとう!すっごくお腹空いてたんだぁ〜、ウィングも早く食べましょ!」
    「………はい。」

     テーブルに着くと出来立てであろう料理が並べられていた。湯気を立たせたスープや焼魚からはとても良い匂いがする。ここに来てまだ数日だが、こんな温かな香りはいつぶりだろうと思わず目頭が熱くなる。
     配膳の最中だったのだろう、モグラが運び終えたところで皆席に着き、いただきますと手を合わせる。

    「……美味しい!まさかサバイバル生活でこんな美味しいスープが食べられるなんて…!」
    「まあね、なんたって僕たち2人で心を込めて作ったんだもの!けど先生達の口に合って良かった。」
    「うん、なんというか…昔ながらの味って言うのかな?なんだか芯から温まるような、そんな優しい味がする。」

     にこにこと笑顔を浮かべていたパステルだが、ごめんね先生の言葉に頬を染めてさらに笑みを深める。そんな2人のやりとりを見つめるモグラは、表情こそ変わらないが眼差しは穏やかだ。
     そんな中…ウィングだけはどこか浮かない顔をしている。

    「あれ?なんかウィング元気ないね。…もしかしてあまり美味しくなかった?」
    「………?ああ、そういうわけではない。ただ少し、考え事をしていただけだ。」
    「そう?それなら良いんだけど…でも明日から本格的に討伐とかしなきゃいけないんだよね?」

     真剣な眼差しになったパステルの言葉に、全員の目の色が変わる。

    「そうね…そうだわ。ナーガはまだ序盤でしかないのよね。黄昏の森には倒さなきゃいけないボスがまだまだいるもの。ヒドラも、それから最後のダンジョン攻略のためにも。」
    「ナーガの次は、確かトワイライトリッチだったか…」
    「そう、そしてトワイライトリッチはリッチタワーという所にいる。ナーガ神殿はバトル場だけど、リッチタワーからは強いモンスターがたくさん出現するわ。今よりも気を引き締めていかないと。」
    「今よりも強い、か…」
    「タワーってなると攻略が大変になるね。どんなギミックがあるんだろう?けどうかうかしてもいられないよね。だって……」

     そこで言葉を止めて、パステルは部屋の一角──サバイバル初日に手元にあった紙に目を向ける。

    「あと95日…それまでに条件全部クリアしないとだよね?」
    「…まるで見せつけてくるみたいね。あの紙。」

     壁に貼られた紙にはサバイバルのクリア条件、そして残りの日数が赤字で表示されている。今日はナーガの討伐に成功したがゴールはまだ遠い。こうしている間にも表示された時間は進み続ける。
     ……この子達を無事に守り抜くことができるだろうか?ごめんね先生の中にじわりと不安が込み上げる。

    「……大丈夫、ダンジョン攻略は僕も手伝うよ。いざとなったら僕の杖でバーって退治してあげる!だから皆心配しないで。」
    「………できる限りのことは、やりますので。」
    「…そっか、ありがとう2人とも。弱気になってちゃダメよね。うん。私も頑張らなきゃ。」

     そう言って杖を構え笑顔を見せるパステルとこちらを真っ直ぐに見つめるモグラに、ごめんね先生は強く頷く。

    「ウィング、貴方も私たちの仲間よ。だから…心配しないで。一緒に頑張ろ?」
    「先生……」

     そう言ってごめんね先生はウィングの方に目を向ける。最近すまないスクールに訪れたウィングは、まだ自分たちのことを信用しきれていないのはわかる。しかしだからこそ彼を1人にしてはおけない。
     ほんの少しでも彼のことが分かれば、少しでも寄り添えられたら…。

    「(大丈夫、皆は私が最後まで守り抜くから。皆は私の大切な生徒だもの。)」
    「(ナーガとの戦い…あれはボクのミスだ。今のままでは駄目だ。ボクはもっと強くならないと…。)」


     それぞれの思いを抱えながら今日1日が終わろうとしている。
     残り95日。サバイバルはまだ始まったばかりだ。


    ***

    おまけ:パステル&モグラ inドルイドの家

    「ふぅーっ……と、ざっとこんな感じかな?」

     森の中に佇む古びた小屋、ドルイドの小屋と呼ばれるその建物にミスターパステルとモグラは侵入していた。ごめんね先生がいない間の素材集めをしているのである。
     “千変万化の杖“と呼ばれる杖を構えたパステルは小屋の中を見渡す。中にはドルイドと呼ばれるモンスターが数体いたが、パステルが杖を使って見事にドルイドを倒してしまった。今はスポーンブロックを全て破壊し一息ついているところだ。

    「ガラスブロックを用意しておいて良かったよ。生で見るのは初めてだけど、スケルトンドルイドって矢じゃなくて毒の魔法弾を飛ばしてくるなんて…もろに受けてたらやばかったね。」
    「………」
    「でもこのくらいなら僕でもなんとかなるよ。モンスターとの戦いなら僕に任せてね!……ちょっと流れ弾当たっちゃったけど。」
    「……大丈夫、ありがとう。」

     千変万化の杖は先端にブロックをはめる窪みがあり、はめるブロックによってさまざまな効果をもたらす。今回はドルイドを外に誘導したところでガラスブロックを使って隕石の雨をお見舞いしたのだ。
     流れ弾を少し受けてしまったが、その怪我はモグラが手当をしてくれたおかげで問題なし。そういうわけで意気揚々と再び小屋に入り込む二人。パステルが暖炉に目を輝かせていると、マスクを外したモグラがチェストに目を向ける。

    「パステル、チェストからりんごの匂いがする。」
    「お、どれどれ……本当だ!それに小麦と、スイカの種がある。これ帰ったら早速畑に植えよう。スイカ食べたいね!」

     早速チェストから食料を見つけるパステル。回収しているパステルの横ではモグラが蛍の入った瓶に夢中になっている。瓶入り蛍はランタン代わりになるだろう。持って帰れば良いインテリアになりそうだ。
     他にも何かないかと小屋の中を探していると、ふと床に何か違和感を感じたパステルが部屋の隅を削る。すると…そこにはトラップドアが隠されていた。おそらく地下室に繋がっているだろう。パステルは蛍瓶を抱えたモグラに声をかける。

    「ねえ、こっちに地下室あるよ。下に行けばまだ何かあるんじゃないかな?僕とってくる!」

     トラップドアを開いて梯子に足をかけようとしたパステルだが、モグラはすぐさま引き止める。

    「まって」
    「?どうしたのモグラ?」
    「だめ、いかないで。………火薬の匂いがする。」

     火薬の匂い、と聞いてパステルは梯子に足を伸ばした体勢のまま固まる。モグラは匂いに敏感で少しの匂いも嗅ぎ取ることができる。火薬ということはTNTか。もしかしたら地下室にTNTが仕掛けられているのかもしれない。

    「まじか…せっかく素材が手に入ると思ったんだけどな…下手に漁って爆発に巻き込まれたら危ないかも。仕方ない、地下は諦めて──」
    「ううん…ちょっと待ってて。すぐに終わる。」

     そう言うとモグラは外していたマスクを付け直し、もう一度小屋の外に飛び出してしまう。何をするのかと追いかけると、小屋のすぐそばで穴を掘って潜り込んでいるのが見えた。
     しばらく待っていると、TNTを抱えたモグラが穴から顔を出した。

    「終わった。パステル、降りてきて。」

     マスクを外したモグラに言われるままもう一度小屋に入り梯子から地下に降りる。地下室内には絵画が数枚、枯れた花の刺さった植木鉢がある。そして待っていたモグラの目の前にあるチェスト、そのすぐ後ろには大きな穴が出来ていた。TNTを取り除いた跡だろう。
     よく見るとチェストはトラップチェストになっていた。これは気づかずに開けていたら爆発の餌食だっただろう。

    「おおお…もしかしてTNT全部取り出してくれたの?ありがとう!これでアイテムが手に入る───」

    カチッ

    「───えっ?」
    「………‼︎」

     シュウッという爆発物特有の音が聞こえた瞬間、咄嗟にモグラがパステルの手を引いた。直後ドォン!!という強烈な破裂音と熱風、そして木片や砕けた石が飛び散る。どうやらまだTNTが残っていたようだ。
     幸い残っていたのはひとつだけだったのか被害もさほど大きくはなく、パステルもモグラも怪我はない。が、衝撃のあまりパステルは開いた口が塞がらず、普段表情が全く変わらないモグラも目を見開いて爆破痕を見つめている。

    「びっ………くりしたぁ!まさかまだ残ったなんて…!」
    「ご、ごめんなさい。全部取り除いたと思ったのに……!」
    「え、ああ!大丈夫気にしないで、僕の不注意でもあるし!それよりもチェストの中確認しよ、何かいいもの残ってるかも…!」

     顔を青くして俯くモグラを宥めるパステル。己のミスに落ち込むモグラを元気付けようと、彼の手を引いて残りのチェストに向かう。

    「あ、小麦と…またスイカの種だ。それにタラもあるし…あ、ジャガイモとにんじんがある!これ植えれば栽培できるよ!やったね!」
    「………」
    「そうだ、今日の晩御飯これ使って野菜スープ作ろう!タラもあるから焼きタラも…ねえモグラ、晩御飯作るの手伝ってくれる?」
    「……わかった。」
    「ありがとう!やったぁこれで久々に美味しいご飯が食べられるよ!」

     なにせこの数日間食べていたのは、狩りや罠で仕留めた動物の肉や川で釣った魚を焼いたものばかりで。それでも昨日は小麦が収穫できたのでパンも食べられたが…いくら美味しくても毎日肉類ばかりだと流石に飽きてくる。
     サバイバルでこんな贅沢を言うのは野暮ではあるが、こう言う時こそ美味い飯を食いたいものである。
     喜び全開で手を上げて満面の笑顔を浮かべるパステルにつられて、モグラも口元を緩める。と言ってもほんの数ミリ口角が上がっただけで、知らない人が見たらさっぱりわからない変化だが。
     少し元気を取り戻したところでチェストの中身を回収し終え、ついでに植木鉢も持って帰ろうと回収して……ふとそれに気づく。

    「パステル、これ……」
    「うん?ああこれ…ってうわっ!ウィザースケルトンの頭だよ…確かウィザー召喚に使うんだよね?でもなんでこんなところに…レアアイテムだから一応……」

     持って帰るか、と言いかけてふと脳内に浮かんだのは……ウィザーと戦わせろと意気揚々とリボンを構えるミスターウィングと、ごめんねー!!と叫びながらネオンシューターをチャージするごめんね先生。
     ………強さを求めるウィングと生徒を守る気持ちが強いごめんね先生が、あらゆるものを葬る破壊魔を目の前にすれば、うん。確実に巻き込まれる。戦闘慣れしているパステルはともかく、戦いに不慣れなモグラはひとたまりもないだろう。二人は顔を見合わせて頷く。

    「…………今は見なかったことにしようか。」
    「うん。荷物いっぱいだから。」
    「そうそう、荷物いっぱいで持ち帰れないからね!これだけあれば資材は十分だし、今日は帰ろう!」

     こうして二人は無事目的の素材を確保し、拠点に戻り仲良く夕食を作ったと言う。
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