「感度3000倍……? ……感度3000倍!?」
とうてい一回では飲み込めずに、向かい風にも負けない声で繰り返し叫ぶ。賢者を箒の前に乗せ運ぶシャイロックは涼やかな声で、あくまで推定値だそうですが、と応じた。
その間にも背後では、魔法舎の崩落がけたたましい音を立てて進んでいる。
「なんで、そんな……オズは大丈夫なんですか? 風が当たるだけで痛そうですけど」
賢者の跳ね返る前髪を、しなやかな指先が落ち着かせた。
「ご安心ください、効果は対して続きません。あくまで心の持ちように作用する西のジョークグッズですから」
「心の持ちよう……?」
「小さな喜びが気絶しそうなほどの歓喜に変わり、些細な悲しみが血を吐くほどの絶望に変わる。気持ちの振り幅のメモリを狂わせるハーブが混ざってます。ムルのことですから、多少の小細工はしていそうですが」
1312