1-1 再会 この1週間、厄年も抜けているというのに、不思議なほどにツイていなかった。
まず実家の猫が死んだ。享年20歳。家猫にしては、とても長生きした方だ。
その知らせを聞いた当日、3番目の元夫と偶然街で遭遇した。3番目の元夫、尾形百之助は幽霊でも見るかのように私を見たあと顔面を喜色で満たし、歩行者信号が赤だったのにも関わらず、勢いよくこちらに駆け寄ってきた。脱兎のごとく逃げる私と、両手に買い物袋を下げたまま追いかけてくる元夫。結局、女の脚力とパンプスが男の脚力とスニーカーに勝てるわけもなく、100メートル走ったあたりで捕まった。その後別に興味もなかった彼の現在の暮らしぶりを聞かされ、しまいには「自分の店開いたんだ」と名刺を押し付けられた。
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