恋は戦争 お疲れさまでした、の声にこもった熱気は、嫌いじゃない。道流は柔道の試合で頭を下げるように深くお辞儀をする。隣にいたタケルも静かながらお疲れさまですと伝え、漣はというと大きなあくびをしながら先に楽屋へ戻っていった。その背中をタケルと苦笑しつつ見守り、「自分たちも戻るか」と足を向ける。
今日の仕事はCM撮影で、午前に稽古、午後に本番というかなり詰まったスケジュールだった。それでも上手く、余裕をもってこなせるのは我らが虎牙道の良いところではあるが、自分たちほどの体力を普通のキャストや、監督や、カメラマンや、音響や、そのほかのスタッフが持っているわけではないことをちゃんと知っている。タケルの顔色にも疲労はうかがえないが、他のキャストが顔に浮かべているのは達成感だけではない。
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