契りの指輪「よく頑張ったね、満点だ。」
「ありがとうベレト、あなたの指導のお陰よ!」
穏やかな雰囲気に包まれた昼下がりのカフェテラスに、快活な少女の声が響き渡る。今日は学びを求める仲間達に向けて不定期に開催される、紋章士ベレトの個人授業の日だ。士官学校の教師であった彼の教える内容は実用性に富んでおり、戦術の座学から剣術、体術、魔術の実技まで求められた事柄によって授業を変える。本日の授業は、オルテンシアが苦手としていた戦術の試験の日程だった。
(初めて顕現された姿を見た時は、冷たい印象を持っていたけど…)
「オルテンシア、何か分からない事でも?」
「ううん、あなたの教え方は丁寧だから何も問題無いわ。ただ…」
オルテンシアが慌てて否定の意を伝えると、紋章士に共通した碧眼が細められる。生徒が理解するまで内容を噛み砕いて何度でも教え導いてくれるベレトの姿は、生徒想いの優しい先生そのものだった。
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