百物語転校にはもう慣れっこだった。ただいつもと違う点は、なんでだか有名私立校に通うことになったこと。学力もないおれがここでやっていけるのか不安だし、そもそもこんないい所に行かせてもらうのは申し訳がない。暗い気持ちを押し殺しミスタは教師のあとを歩く。
「転校生を紹介する」
これを聞いたのは何度目だろうか。今回もきっとすぐ環境が変わる。程よくやっていこう。
「ミスタリアスです。よろしく」
「席は闇ノの隣が空いているな」
そう言って教師が指さした先には、変わった髪型の男が座っていた。
「Hello〜〜よろしくね、ミスタくん」
「よろしく」
なんていって、すぐいなくなると思うけど。
□□□
やはり有名校だけあり、内容について行くのが難しい。数学なんて特に暗号にしか見えない。
「じゃあ次の問題を……せっかくだ。リアス、解いてみなさい」
「ぇ……」
マズい、なんもわかんない。
「エ-ト……」
その時、くい、と袖を引っ張られる。隣を見ると闇ノのノートに
「 だよ」
と答えが書いてあった。
「ぁ、 です。」
「正解だ。座っていいぞ」
注目が離れたことに一安心し、闇ノを見る。にこりと笑われ、あ、こいつ綺麗な顔してんなと思った。
「ありがと、正直暗号にしか見えなかった」
休み時間、闇ノにそう話すと
「んはは、苦手科目はそうなるよね。 ぼくも歴史とかわけわかんないし」
とケラケラ笑う。あ、こいつにも苦手科目とかあるんだ。
「シュ〜ウッ!」
その時、闇ノの後ろから勢いよく声が掛けられた。
闇ノを囲むのは3人の、これまた顔のいい男達で。イケメンはイケメンと繋がるものかと納得しなんとなくの暇つぶしでスマホをいじる。
「ねぇ、この子は?」
「あぁ、今日転校してきたミスタくんだよ」
自分からはもう話が逸れていると思っていた矢先に声をかけられ、ビクリと心臓が声をあげる。
「へぇ〜!オレはルカ!ルカカネシロ!よろしくね、ミスタ!」
「お、おう……よろしく……?」
することもないと思うんだけど。
「私はヴォックスアクマだ。気軽にヴォックスと呼んでくれ、可愛い坊や」
「かわ……?!」
「もう、ヴォックスったら。ミスタくんが驚いてるでしょ。 ごめんね、いつもこうなんだ。 あ、僕はアイク。アイクイーヴランドだよ。 生徒会の会長をしてる。 困ったことがあったらなんでも言ってね」
そういって、ふわりと笑うアイクはこの中で一番馴染みがなさそうというか、なんでこの集団とつるんでるんだ?ってぐらい清楚だった。
「で、今日はなんの用?」
闇ノが3人に話を促す
「百物語やろう!」
ルカが満面の笑みでそう言った。百物語か…。おれには馴染みのない
「ミスタも一緒にね!」
「は?!」
思わず声が出た。おれもいっしょに?
「イヤイヤ、おれは遠慮するよ。 仲良いところに水さしたくないし。 どうせおれ、すぐ転校するから仲良くしてもメリットねーよ」
だからほっとけ、と目でアピールするが、ルカはきょとんとしている。
「すぐ転校するかなんてわかんないじゃん。 あ、ミスタもしかして怖いの苦手?」
「ハ〜ア? 苦手じゃねえわ」
「じゃあ決まりね! 今日の放課後!」
「ちょ、待っ…」
「とっておきの実体験があるんだ。 話すのが楽しみだよ」
「僕のは創作だけど、結構気合い入れてるから覚悟しててよね」
「待って…」
「Ok〜 空き教室取っといてよね、アイク」
おれ、ホラー無理なんだけど。