初めてのデート 冬の寒さが肌を突き刺す。それでも心は暖かくて、はじめての経験にドキドキしていた。シュウと付き合って少し、ようやくはじめての二人だけのデートだ。プランはなんてことなくて、一緒にランチを食べてショッピングをして解散するだけ。それでも、シュウの好きな店を見たり美味しいねってご飯を食べあったりできると考えたらこんな寒さなんてどうでもよくなるぐらい。
「早く着きすぎたな…」
時計を見ると、あと三十分もある。流石にまだ来ないだろうと思い、寒さを凌ぐためにもホットココアでも頼もうかなとその場を後にしようとした時─
「ミスタ?」
愛しい恋人の声がした。
「シュ、ウ…?」
「ミスタ、早いね。 まだ三十分前だよ」
「あ、うん…」
突然のことに、思考がついて行かない。目の前にいるのは確かにシュウだ。それはわかる。けど、でも。
「な、なんで女の格好…?」
シュウは白が基調の淡く可愛い色味のロリータ服を着ていた。足元では水色の靴が可愛らしく存在を主張し、風が吹く度結い上げられたツインテールがはらはらと舞う。
「えっと、変…かな?」
「や! 可愛い! すげー可愛い! けどシュウ、そういう趣味ないんじゃ…?」
「ないよ。 でもその、初めてのデートでしょ? くっついたりしたいなぁと思ったんだけど、男同士じゃ目立っちゃうかと思って」
アイクに見立てて貰ったんだ、とその場でくるりと回る。待て可愛い。勘弁してくれ。
「ぼくが奇異な目で見られるのはいいけど、ミスタがそう見られるのは嫌だったんだ。腕とか肩とか誤魔化せるやつ選んでもらったんだけど、女の子に見える?」
「…シュウに見える」
「そりゃぼくだからね。 うーん、ごまかせないか…」
「誤魔化すとか誤魔化さないとかじゃなかてさあ、おれのシュウはどんな格好してても可愛いんですけど」
ギュッと抱き寄せ、思い切り抱きしめる。腕の中から、花のような香りがした。あ、香水も女もんつけてんだ。
「んはは…もう、ミスタってそういうとこあるよね」
「真実だろ。 で、どうする? お外デートやめて家にする? 女の格好落ち着かないんじゃね?」
「うーん、せっかく選んでもらったし遊んで帰ろうよ。 アイクから写真送ってって言われてるし」
「は? それはダメ。 無理。シュウはおれのだから」