慣れない甘さ「もういい加減にして!」
ミスタは困惑していた。ヴォックスの行動がおかしいのだ。いつもならばたわいない話をして笑いながら食べるだけの食事だったのに、口を開けてと言われて食べ物を運ばれたり外に出る時には手を繋がれたり。これまででは考えられない甘やかされ方をしていた。
「無理無理無理無理、ヴォックスどうしちゃったんだよ。 変な感じ」
「言っただろう、これからはお前だけを愛すると」
何を当たり前のことを、という風な顔で目の前の鬼はあっけらかんと言い放つ。確かに愛してると言われた。これからはミスタだけだとも言われた。だがこんなに簡単に対応が変わるとは思っていなかったのだ。
「野郎が揃ってあーんしてたらおかしいだろ」
「おかしくなんかないさ、好きな相手なんだから」
「だから…」
それもおかしいんだって、と口をついて出そうになる。
「私の言葉が信じられないか?」
「そういうわけじゃ…なくはないけど。 これまでの事があるし」
「これまでも私は嘘はつかなかったはずだが」
「こんなすぐに行動が変わったら困惑するって言ってんの!」
焦るミスタを見て、ヴォックスはやわりと微笑む。
「慣れていない姿も可愛らしいな、坊や」
ちゅ、と手にキスが落とされる。ミスタはもう限界だった。
「あーもう! 俺出かける!」
「一緒に行こう」
「やだ! 来んな! 一人で行きてぇの!」
「お〜、そんな釣れないことを言わないでおくれ愛しい子よ」
「ほんとマジ、手加減してって…」