サクラ、サクラ、巡りゆく 第一話 ある日、小鳥が現れた。白い羽をめいっぱい広げて、一本の木の枝に降り立つ。
小鳥は枝を一度つつくとピーピーと鳴いた。鳴き声はごく普通の鳥のまま、止まっている木の“魂”に語りかける。
『心を決めたか』
それに呼応して木の枝が揺れる。小鳥の“魂”への返事だ。カサカサと葉が重なる音が響く。
『うん、決めた』
小鳥がまた鳴く。
『最後に確認する。お前は想いを告げたら必ずこの桜の木に戻ることとなる。それでも良いのか』
『うん』
『今のお前の記憶は“向こう”では不完全になり得る。即ちそれは、お前の想い人の記憶も、その感情も、消えてしまう可能性があるということ。それでもお前は、想い人の傍を望むのか』
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