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    oishichimi

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    oishichimi

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    SNSのアカウントからママを特定しようとするペロスお兄さまの現パロ転生
    突然始まり突然終わる
    文字書きさんじゃないから許してくれ

    無題SNSのアカウントからママを特定しようとするペロスお兄さまの現パロ転生

    ※前提
    ペロスお兄さまがSNSを見てこのアカウントはママでは!?って特定しようとする夢を見た その垢は色んな男との写真がデートの記録として残っていて(スタンプ加工やトリミング済)、お兄さまはその写真の口元や指のネイルみたいな細かいところから「これはママだ」って確信を強めていくんだけど、ママに会いたいから特定のために写真をつぶさに見て、知らん男とママ(仮)のツーショットに脳を沸騰させながら、でも投稿内容を見るにコイツはもう別れてるからなザマァ見ろ!みたいに一喜一憂?してるという夢…
    というところから妄想した話、書きたいとこだけ



    「気色悪すぎるだろ」
    昼時になり活気付く社員食堂。
    私は正面に座る弟の顔をした男から溜息混じりに出た言葉に返事をしなかった。無駄だからだ。もうここ数日、奴の口からはこれしか出ない。私も奴も、気色悪い程度の悪態で私が止まるとは思っていない。ただ、自分は私の行為に反対であるという主張のために毎日「気色悪い」と述べるだけだ。
    スマートフォンの画面を見つめたまま、定食の残りのお新香だけで2杯目の米を食らう男の立て肘をつんつんと突いた。無意識にそうなっていたのか、居心地悪そうに身じろぐ。私のかわいい弟であれば、すぐに自分の無作法を詫びたろうし、そもそも食事中に立て肘なんてしようはずもない。顔が同じだけ。ついでに言えば、年齢も同じだ。私と。私と同い年、大学で出会い同期入社、本人は私のことを友と呼ぶ。奴は私の反応が芳しくないとわかると、今度は自身の隣に座る後輩に声をかけた。
    「お前だって気色悪いと思うよな?SNSの写真から本人を特定して会いに行く?やってることがストーカーだろうが」
    「でも、おれもマ、えっと、兄ちゃんがそんなに会いたい人なら、会えるといいなと思うし、会ってみたいかなって…」
    「馬鹿を言え!向こうからしたら全くの他人だぞ!」
    弟の顔をした同期が弟の顔をした後輩に向かって怒鳴る。後輩は他人という言葉に傷ついたような顔をしてこちらを見た。ババロア、と、彼の氏名とは似ても似つかないあだ名を小さく呼べば、その目元が少し和らぐ。このあだ名は家族の絆である。お前だってそうなのに。クラッカー。口の中でそう呼びかけながら、後輩を威嚇する同期に言い返す。
    「向こうが覚えているかどうか定かじゃないのは確かだが、他人と括るのはやめてくれるか。まだそうと決まったわけでもないんだから!」
    「昔会ったことがあろうが覚えてなけりゃ他人だろう!大体お前はたまにおかしいんだ、後輩に自分のことを兄と呼ばせたり」
    「クラ…先輩、おれは一人っ子だから兄ちゃん呼びも本当の兄弟みたいで気に入ってるし」
    「そうとも、同意の上だ」
    同期は自分の旗色が悪いことを察したのか、フン、と鼻を鳴らして白米を口内に詰め込む作業に移った。ぎゅうぎゅうと、傷のない頬が膨らんでいく。よく食べ育てよかわいい弟。確かに今生ではドレンチェリーのように真っ赤な他人ではあるし、消費カロリーの少ないこの生活では油断すると育つのは腹の肉ばかりなのだが。弟に似たその顔を出会えたことのよすがと思ってしまうのも、まあ仕方のないことだ。
    同期がすっかり黙ったのを見て、後輩もカレーのおかわりをしに席を立った。私はまた手元のスマートフォンに視線を落とす。

    SNSで彼女を見つけたのは偶然だった。日課のスイーツタグ巡りをしながら週末に立ち寄る店を選んでいたとき。フルーツと生クリームが山盛りの分厚いパンケーキの横、揃いの指輪をした男の手に重なる、その美しい手!ナパージュよりもつややかで、クリームよりもなめらかで、パンケーキよりもやわらかで、嗚呼私がずっと、ずっと探し焦がれていた…。
    「ママ!」と1人きりの部屋を揺らすような声が出た。ドン!と隣の部屋の住人が壁を殴る音が聞こえたが、喜びに満ちた私には祝砲代わりの一発にしか思えなかった。
    そこからは時間さえあれば彼女のアカウントを見つめる日々である。投稿内容や日時、写真から読み取れる情報を片っ端から割り出していく。彼女の投稿は男とスイーツの写真がほとんどだ。美しいスイーツの隣に、おおよそ2〜3ヶ月周期で入れ替わる恋人と彼女が見切れる形で写る。重ねた手であったり、組んだ腕、抱きしめ合う胸、そしてスイーツ越しに触れる唇…。
    正直に言えば何度発狂しかけたかわからないが、いま現在の恋人以外は全て過去の男なのだから気にするだけ無駄だ。見たこともない男どもをザマァ見ろ!と嘲笑って心の安寧を保つ。ママが他人の男を愛するわけがないんだ、いっときでもママの隣にいられたことに感謝しろ!まあ私自身もママが覚えていなければ他人になってしまうのだが、そこはそれ、なんとかなるだろう。昔からママをなんとかごまかすのは私の役目だったから。

    彼女のアカウントを見つけてしばらく経った。
    過去の投稿から割れる情報は全て割り、けれどそれだけでは満足できなかったので、彼女に話しかけるためのアカウントも取得してSNS上での交流を図った。美味しそうですねとか、この店がオススメですよとか、他愛ない会話だが、これが意外と役に立つものだ。世間話になると人の口は緩む。住所までは届かなかったが、ある程度の活動範囲は絞り込めた。県はまたぐが然程遠くない。いかにして会いに行くかと考えていると、きっかけは向こうから転がり込んできた。彼女から誘いがあったのだ。
    私の行きつけの店の常連限定裏メニューが食べたいから一緒に店に入ってほしい。その申し出に私は一も二もなく飛びついた。ママは絶対にあの味を気に入ってくれるはずだ!そう思えば予約の電話も声が弾んだ。「女か?」と勘繰る店主に「彼氏同伴のな」と返す時ですら口角が上がっていたくらいだ。
    彼女の今の恋人は、私の知る歴代の男よりも少し長く続いている。体格は良く、筋肉量も多く、写真の端に写る腕にはタトゥーが入っている。写真を見た同期は真顔で「この腕の太さ、殴られたら死ぬから気を付けろ」とアドバイスを寄越した。彼女とSNSでやりとりというだけで疑われても仕方ないのに直接会うなんて!とボコボコにされる私を想像して勝手に身をすくめる姿に、私は弟を重ねて微笑んだ。生意気に何を言われても、ママに会えるという喜びがまさっていたのだ。

    そうして迎えた当日、私は待ち合わせの駅で彼女たちを待っている。後輩から『ママまだ?』というメッセージとかわいいスタンプが届いたので、適当なスタンプを返してやろうと思ったところで彼女から『着いた』と連絡が来てすぐに顔を上げた。
    見ればすぐにわかる、改札の向こうに周りより頭ひとつ背の高い、美しい男女がいる。私が手を上げて合図をするより早く、この世の誰より美しい女性を連れた、かわいい弟が私を呼んだ。
    「ペロス兄!」
    その逞しい腕でママを支えながら小走りでこちらに駆けてくる弟を、黒いマスクを顎まで下げて、尖った歯を見せて大きな口で笑う弟を、私は昂った気持ちのままハグで迎えた。
    「驚いた、久しぶりだ!ペロリン♪」
    「おれはそうじゃないかと思っていた。期待半分だったが」
    なんて素敵な日だろうか、何より望んだママとの再会に弟にまで会えるなんて!
    「なんだ、お前たち知り合いだったのかい?」
    早々に仲間外れにされて拗ねたように彼女が口を尖らせる。私より少し高い目線。たっぷりとした睫毛が影を落とす赤銅色の瞳が私を映している。ついうっとりと見つめ返すと、明らかに見惚れる私に気を良くしたらしい彼女の目が弧を描いた。自分に従うものを愛する支配者の視線が我が身を貫く、このチリチリとした緊張が懐かしくも愛おしい。
    「昔、会ったことがあった」
    恋人が少し身をかがめて顔を擦り寄せると、男二人の関心が自分に向いたことを理解した彼女はすっかり機嫌を直したようだった。ふーんと笑う彼女の興味はもうすっかり目当てのスイーツに移っているに違いない。嗚呼なんて身勝手で可愛いのだろうか!
    難しくはない店への道を歩きながら、スイーツに心奪われる彼女と、そんな彼女にくびったけの私と、なんだか物言いたげな彼女の恋人。彼女の可憐な歌にまぎれてどうした?と聞けば、先程の彼女とそっくりに拗ねた顔の弟が「靴」と呟いた。靴、くつ。彼女は真っ赤なハイヒールを履いている。私はブーツ。弟は革靴。
    …あっと思い至ってつい広い背をバシンと叩いてしまった。デカい男はびくともせずに、マスクの下でニヤリと笑う。叩かれた衝撃なんて全く伝わっていない彼女は、恋人と腕を組んだまま上機嫌に自作の歌を歌っている。
    「お前、でかした!ママより大きいな!」
    「ああ。ペロス兄なら真っ先に気付くと思っていた」
    「ママとの再会だけでいっぱいのキャパだぞ?その上お前というサプライズもあって、悪いがそこに気付けるだけの余裕はねェよ」
    「それはそうか」
    最愛の女性とかわいい弟と甘くて美味しいスイーツ、考えるだけで楽しくなって、つい彼女のメロディに即興でコーラスを重ねてしまった。彼女は気にせず歌い続けている。私も気にせず歌うことにした。挟まれた弟は楽しげに目を細めている。他人同士のおかしな家族で迎えるお菓子の時間が、もうすぐそこまで来ている。
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