黎明の光-アフターグロウ- 夜風が唸りを上げた。
木の葉や砂利を派手に巻き上げ、風がごうごうと鳴いている。何事もなければきっと月の美しい静かな晩だったであろうそんな日にて、妖魔との決戦は巻き起こった。
廃寺上空にて佇むのは一羽の怪鳥。巨大な翼がはためく度に大気が乱暴にかき混ぜられた。夜空に一点、月の手前を黒い塊が占拠し、山中の境内一帯に大きな影を落としていた。
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「最初に言った通り、自分の身は自分で守ります」
風音が獣のように唸る中で、臨時バディの口からそんな言葉が出た。
直前にて無謀な策を伝えられ、石蕗丸はすぐに止めた。けれども問答を繰り返した上で彼女を止めることはできないのだろうと直感で悟ってしまった。
彼女は、貴瑛は、出会った頃から変わらない “そういう目つき” で、真っ直ぐに石蕗丸の琥珀色を見つめていた。
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