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    ぽけ🐥

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    ぽけ🐥

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    シゲトキ
    シガーキス

    研究所をでて数歩先、青空の下屋根と灰皿を設置しただけの簡易的な喫煙スペースには先客がいた。
    「意外だな」
    僕が呟くと、トキオは杏色の瞳を忙しくしばたたかせた。咥えていた煙草を細い指先でつまんで、自由になった口元に柔和な笑顔を浮かべてみせる。
    「そう?」
    変声期を経てもなお透明感の残る清々しい声で答えて、地面へと息を吐きだした。白い煙は彼の意図を汲まず、空へと昇っていく。
    「むしろ、煙草なんて嫌がるものかと思ってたよ」
    僕の言葉に、トキオが笑う。
    「そうでもないよ。息詰まるときには、外に出る口実にもなるしね。…っと、禁句だった?」
    「いや、うん、まあ」
    論文の作成が思わしくない。現状を言い当てられた気がして、一瞬顔が強ばってしまった。めざとく気づいたトキオの言葉に、上手く応えられない。
    さっさと煙草をくわえて間を持たそうとするものの、今度はライターが見つからない。あちこちとポケットをまさぐっていると、トキオから声をかけられた。
    「火、貸そうか」
    答える間もなく、杏色の瞳が近付く。息がかかるほどの距離。身にまとう体温とトキオの髪が風に流れる音を確かに感じて、心臓が痛いほどに早鐘を打つ。
    驚いて動けない僕の口元、数センチ先のタバコに火がついて、トキオの体が離れた。
    「おっけ。点いた」
    トキオが満足げに笑う。彼の紫煙がユラユラと空へ昇る様子を見ながら、心臓の動悸と恋心に気づかれないよう、僕は小さく息を吐き出した。
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