夏の明るさがよく似合う男だ。千早瞬平の話である。
熱さにゆらめく土の上で、しゃんと立つ二本の脚。伸びた背筋と、小さくはあるが紛れもなく男の骨が作る顔。さらりと綺麗で、膨れているわけではないのに突けばやわらかく凹んでしまいそうな頬は「君と違って気を遣っているので」とのことだ。綺麗な顔をした男がいるものだと、改めてしみじみ思ったのは、去年の冬の頃だった。
この綺麗な顔はやけに嫌味な言葉をぶつけてくるから、藤堂のことがあまり好きではないのかもしれない、とふんわり考えていたのが一年の春。先輩方や同級生の山田には優しくあたるから、間違っているとも思わなかったし、それで別に良かった。幼い子どもではないから練習で支障は無かったし、すべての言葉に嫌味を含めてくるわけでもない。ただ、きっとこれ以上の仲になることは、無いのだろうな、とぼんやり。
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