Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    tia_10l0

    腐ってるなめこ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 18

    tia_10l0

    ☆quiet follow

    ダインスレイヴと旅人、空の話。
    空が悪夢を見る。
    水底に響くレクイエムだったか、そのあたりで書いたお話!

    深淵「わたしの家はお兄ちゃん、お兄ちゃんの家はわたし」
     目の前で金髪の少女は言った。少年は今にも泣きそうな顔をして、少女のもとへ駆けて行く。しかし、あと少しで触れられそうな時、少女は一歩後ろへ下がってしまった。
    「蛍! 一緒に帰ろう……!!」
     少年の呼びかけは虚しく、蛍は表情ひとつ変えず首を横に振った。
    「ううん、今はだめ」
    「どうして! なんで!!」
    「隣を見て」
     蛍は少年の側にいる者を指し示す。少年は言われた通りに隣を見た。蛍は話し出した。
    「ダインと一緒にいる。それは決別の証。言ったよね、ダインと一緒にいてはだめって」
    「……どういうこと……?」
     困惑する少年を見ないように蛍は瞳を伏せ、溢した。
    「今は言えない。ごめんね……お兄ちゃん」
     蛍が言い終わるや否や、彼女の背後に巨大な深淵が現れ、中から従者が出てきた。
    「行きましょう、姫様」
     蛍は頷き、最後に少年の方を見て言った。
    「またね」
    「待って! 蛍……!!」
     少年は手を伸ばすが、そこに自分の手は無かった。あるのは地面に滴る鮮血のみ。
    「あ……」
     赤い雫の背後に映ったのは……小さな少年の「手」だったのだ。
    「あああああああああ!!!!!!!」

     少年が発狂した時、冷たくも温かい何かが彼を包んだ。それは少女のものとは異なる温もりだが、不思議と肩の力が抜けた。
    「落ち着け、深淵に呑まれるな。お前は誰で、どこにいるのか意識をしっかり保て」
     ダインスレイヴは少年を抱き締め、慎重に声をかける。
    「ダ……、イン……」
    「そうだ。旅人、お前は誰だ」
    「お、れは……空」
     空は自身を認識した途端、やっと理解した。先程は夢を見ていたのだと。
    「落ち着いたか」
     しかし、妹の蛍がいないのは紛れもない事実であった。空はダインスレイヴを抱き返し、答えるのだった。
    「うん。……でも、もう少しこのままでいさせて」
     ダインスレイヴは口を結び、しっかり頷くと、空を包んでいる腕の力を微かに強める。
     じんわりと濡れる肩に、ただただダインスレイヴは黙した。

     ――旅人よ、どんな事があろうとも立ち止まってはならない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏😭👏😭🙏😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    sgm

    DONE現代AU
    ツイスターゲームをしようとする付き合い立て曦澄。
     確かに、藍曦臣があげた項目の中に「これ」はあった。そして自分もしたことがないと確かに頷いた。
     ただ、あまりその時は話を聞けていなかったのだ。仕方がないだろう?
     付き合い始めて一か月と少し。手は握るが、キスは付き合う前に事故でしたきりでそれ以上のことはしていない。そんな状態で、泊まりで家に誘われたのだ。色々と意識がとんでも仕方がないではないか。もしもきちんと理解していれば、あの時断ったはずだ。十日前の自分を殴りたい。
     江澄は目の前に広がる光景に対して、胸中で自分自身に言い訳をする。
     いっそ手の込んだ、藍曦臣によるからかいだと思いたい。
     なんならドッキリと称して隣の部屋から恥知らず共が躍り出てきてもいい。むしろその方が怒りを奴らに向けられる。期待を込めて閉まった扉を睨みつけた。
     だが、藍曦臣が江澄を揶揄することもないし、隣の部屋に人が隠れている気配だってない。いたって本気なのだ、この人は。
     江澄は深いため息とともに額に手を当てる。
     「馬鹿なのか?」と怒鳴ればいいのだろうが、準備をしている藍曦臣があまりにも楽しそうで、金凌の幼い頃を思い出してしまうし、なんなら金凌の愛犬が、 4757