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    tia_10l0

    腐ってるなめこ

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    tia_10l0

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    ダインスレイヴと旅人、空の話。
    空が悪夢を見る。
    水底に響くレクイエムだったか、そのあたりで書いたお話!

    深淵「わたしの家はお兄ちゃん、お兄ちゃんの家はわたし」
     目の前で金髪の少女は言った。少年は今にも泣きそうな顔をして、少女のもとへ駆けて行く。しかし、あと少しで触れられそうな時、少女は一歩後ろへ下がってしまった。
    「蛍! 一緒に帰ろう……!!」
     少年の呼びかけは虚しく、蛍は表情ひとつ変えず首を横に振った。
    「ううん、今はだめ」
    「どうして! なんで!!」
    「隣を見て」
     蛍は少年の側にいる者を指し示す。少年は言われた通りに隣を見た。蛍は話し出した。
    「ダインと一緒にいる。それは決別の証。言ったよね、ダインと一緒にいてはだめって」
    「……どういうこと……?」
     困惑する少年を見ないように蛍は瞳を伏せ、溢した。
    「今は言えない。ごめんね……お兄ちゃん」
     蛍が言い終わるや否や、彼女の背後に巨大な深淵が現れ、中から従者が出てきた。
    「行きましょう、姫様」
     蛍は頷き、最後に少年の方を見て言った。
    「またね」
    「待って! 蛍……!!」
     少年は手を伸ばすが、そこに自分の手は無かった。あるのは地面に滴る鮮血のみ。
    「あ……」
     赤い雫の背後に映ったのは……小さな少年の「手」だったのだ。
    「あああああああああ!!!!!!!」

     少年が発狂した時、冷たくも温かい何かが彼を包んだ。それは少女のものとは異なる温もりだが、不思議と肩の力が抜けた。
    「落ち着け、深淵に呑まれるな。お前は誰で、どこにいるのか意識をしっかり保て」
     ダインスレイヴは少年を抱き締め、慎重に声をかける。
    「ダ……、イン……」
    「そうだ。旅人、お前は誰だ」
    「お、れは……空」
     空は自身を認識した途端、やっと理解した。先程は夢を見ていたのだと。
    「落ち着いたか」
     しかし、妹の蛍がいないのは紛れもない事実であった。空はダインスレイヴを抱き返し、答えるのだった。
    「うん。……でも、もう少しこのままでいさせて」
     ダインスレイヴは口を結び、しっかり頷くと、空を包んでいる腕の力を微かに強める。
     じんわりと濡れる肩に、ただただダインスレイヴは黙した。

     ――旅人よ、どんな事があろうとも立ち止まってはならない。
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    はるもん🌸

    MOURNINGまだ魏無羨は弟子たちを引きつれたまま帰ってこない。泊まり込みになると聞いてはいた。魏無羨が不在になってから二日目の午後、気づけば魏無羨の事ばかり考えている。なかなか家業に集中できずにいる自分に気づき、冷泉で少し頭を冷やそうと考えた。冷泉に体を落とし、心が落ち着いてもやはり頭に魏無羨がよぎる。あの笑顔を思いだすと、自然と胸がじんわりとあたたまる。愛しい。そう思った時、一つの旋律が藍忘機に流れた―――
    藍忘機の鼻歌「…~♪」
    魏無羨は耳を疑った。
    (まさか藍湛の…鼻歌?!)
    いてもたってもいられなくなった。彼は急いで服を脱ぎ、ザブンと冷泉に入る。

    * * *

    今回の夜狩りの監督は大変だった。新参者の姑蘇の弟子が複数いて、それぞれ腰を抜かしそうになったり手が震えるものがいたりしたのだ。
    「俺が14歳だったころはもっと男らしかったぞ」などとぼやきながら静室に戻ろうとしていたその時、
    曲がり角でばったりと藍思追と遭遇した。

    「魏先輩」
    「思追、どこにいくんだ?さっき帰ってきたばっかなんだからヘトヘトだろう。なんだその本の量」
    「夜狩りでの魏先輩を見ていたら、まだまだだなと思いまして」
    「それで、その量の本を今から読むのか?やめろやめろ。勉強なんて寝てからやれ」
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