東離猫奴世界(1)猫は可愛い。
猫中毒に果てはなく、深い底なしの海のようなもの。
猫への愛が東離を支配すれば、どんな強者もひれ伏すでしょう。
猫大君主の魅力には、あの殤不患と仲間たちも、誰も抵抗できません。
猫嫌いの人はいないはず。
そう考えるようになったのは何時からだったのでしょう。
萬軍破は無界閣から異飄渺の姿が消えていることに気づいた。
これから軍議で鳳曦宮に戻るために、鬼鳥の監視を言いつけたばかりだ。
無界閣の広間にも回廊にも、岩の乱立した広場にも、神蝗盟の野営地にも見当たらない。
鳳曦宮から逃げた殤不患と仲間が、またいつ襲撃するか分からない。
そんな最中に姿を消すとは職務怠慢である。
「異飄渺、何処だ?」
猫の鳴き声が聞こえたような気がした。
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