ライスカリィ一息付きたいと思う自分の元へとコーヒーが注がれたカップが置かれた。
「休憩しましょう。先輩の分、ここに置いときます」
品川くんだ。彼は新木場さんの元へコーヒーを運ぶ。
「ありがとう、品川君」と新木場さんが穏やかに礼を言った。
暖かな日が差し込む柔らかな午後の時間帯だ。
優しい時間を切り裂く様に、けたたましく電話が鳴る。
「大崎さん!!大変、大変、大変なんです!!」
「汐留さん!?どうされたんですか?!」
思わず声をあげてしまった。
職場にまで電話をかけてくるほど大変な事とは?
どうしよう、どうしよう、と汐留さんの切羽詰まった声が聞こえる。
汐留さんに一体何があったんだ。背中に冷たいものが走る。
「汐留さん、落ち着いて話して━━……」
「カリィが!!カリィが!!2人じゃ食べきれません!!」
「……カレイ?」
「カレーですよ。ライスカレー。近所の喫茶店のマスターに作り方教わったんです。知ってます?カレーって大きなお鍋でゴロゴロ大きな具材をじっくりコトコト煮込むんですけど━━……」
「…………煮込み過ぎて具材が溶け、継ぎ足ししたら大量に作っていた、という訳ですね」
「当ったり〜!!さっすが大崎さん。名探偵〜!!寸胴鍋2個分になっちゃいました〜!!でも煮込んだ甲斐あって、めちゃくちゃ美味しいですよ!!」
「カレー屋でも始めますか」
「いひひっ、冷やし中華始めました的な」
寸胴鍋…。自分達が頑張っても食べきれる量じゃない。
ふと、顔を上げると新木場さんや品川君と目が合う。先ほど自分が声をあげてしまった為、心配しつつもカレー屋を始める発言に困惑した様子だった。
いつまでも職場の電話を私用で使う訳にはいかない。
受話器を話し口を包みこみ、2人に声をかけた。
「2人共、夕食は何を?めちゃくちゃ美味しいライスカリィ食べに来ませんか?」