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    雪絹✯月鯉幸せになれ

    @yukinu63f6

    鯉登少尉をもぐもぐして生きてる

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    POIPOI 20

    転生現パロ月鯉会話劇
    金塊戦争で月鯉二人が生存した後に、記憶持ちで転生
    前世を振り返る二人の話です
    懺悔と感謝と告白
    最終回で正解が出る前に供養┏(ꒉ:)💦

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    光り輝いていた 少尉殿!


     またか月島ァ、今世の私はもう少尉ではないぞ?
     どこにでもいる普通の男子大学生だ。


     ……貴方が"普通"かどうかは少々疑問が残りますが…、そうですね…すみません。
     いまだについうっかりとそう呼んでしまいます。


     フン、おまえにとっての私は相変わらずいつまで経ってもヒヨッコの新品少尉のままなのだな……
     あの後、私が出世してからも良くこのやり取りをしたものな。


     ヒヨッコ……まあ最初は確かにそうでしたけどね……
     でも貴方はあの当時、旅の中や様々な場所で大きな成長を見せて下さいましたよ、御立派でした。
     過去の私にとってもあの頃が一番激動の時代でした。
     鶴見中尉や貴方には心身ともに随分と振り回されましたね……
     
     ……だからかもしれません、当時【少尉】であった貴方に私はきっと未練があるのです。
     色々とありましたが、あの頃は毎日が目まぐるしくも日々充実していました。
     私は貴方の世話を焼く事がやぶさかではなかったのですよ。
     手がかかる子ほど可愛いとはよく言ったもので、面倒だと言いつつも『俺が側にいてやらないと駄目だ』と、庇護欲をかきたててくれる貴方。
     事ある毎に「月島!」と私の名を呼ばれる事で、私は承認欲求も満たされていました。
     
     今思うと自分はガキの頃からやたらと承認欲求と庇護欲が強い人間だったんですよね。
     父親には物の様に扱われ、名前など呼ばれた事はなかった。
     甘えたい頃にはすでに母は居らず、周囲には悪童と石を投げられました。
     そんな中で唯一私の名前を呼んでくれた女も居ました。
     その子は承認欲求と庇護欲のどちらも満たしてくれたのです。
     誰かを愛おしいと感じる優しい気持ちも教えてくれました。
     愛を知り、私はそこで初めて【人】になれたと思いましたね。
     でも…その彼女も私が戦争に行っている間に俺の前から居なくなってしまったのですよ。
     その原因が自分の父親らしいと知り、私は父を殴り殺して尊属殺で死刑囚となりました。
     しかしもう満たしてくれる存在が無くなって活きる気力も無かったのでそれでもいいかと思っていたのですよ。
     そんな時です、そこで鶴見中尉と出会いました。
     
     彼は私を必要としてくれました…だから嘘を吐かれているかもしれないと理解わかっていても、私の飢えた承認欲求を満たしてくれる彼の為になれたら…と、彼に尽くす事にしたのです。
     ですが、彼は"弱く"はなかった。
     承認欲求は満たしてくれましたが、庇護欲は満たしてくれなかった。
     人が生きるのには水と空気が必要ですよね?私にはその2つがそれに値するのですよ。
     私、月島基という男はね、とんでもなく自分勝手なのです。
     自分を満たしてくれるかどうかが一番大事。
     そんな男です。
     
     だから貴方という存在は私にとって生きる理由になった。 
     函館に向かう列車の中、傷つき床を這ってでも私なんかに手を延ばす貴方の姿に愛しさと庇護欲を感じました。
     私の名を呼んで必死に庇ってくれる姿に、俺の方こそこの子を護らねばならないのに…と、目が醒めました。
     札幌のビール工場で身体が勝手に動き、任務よりも貴方の救出を優先してしまった時にはもう応えが出ていたのですよ。
     いつ死んでも良かったと思っていた私は、実は生きたかったのだと。
     でも貴方に優先順位を間違えるなと叱られて、そこから目を逸らしてしまった。
     列車の中で牛山バケモノと共に逝く覚悟を決めたにも関わらず、強行出来なかった時点できっと自分はもう鶴見中尉の望む兵としては使い物にならなかったんです。
     生きたい、生かしたい、と【生】に未練たらしい人間が、死神の片腕として働ける訳がなかったんですよ。
     だから貴方が【解放】を口にしてくれた時に一気に脱力しました。
     承認欲求という【水】と、庇護欲という【空気】を吸って【生きろ】と言われたのだと、やっと認識したのです。脳と身体が。
     
     生きて良いのだ……そう思ったら目の前が急に滲んで、両足がフワフワとした所に立ってるような気分になりました。
     ひどい出血のせいもあって、そのままスウッと意識を失くしてしまいましたが、その時は痛みを感じることもなく、なぜかひどく気持ち良かったのを覚えています。
     
     次に目を覚した時、最初に目にしたのが貴方の顔でした。
     生まれたばかりの赤ん坊が見る景色はきっとこういう感じなのだろうと思いました。
     生んでくれたこの人を愛し、未来これからを精一杯生きるのだと希望に溢れた清々しい景色。
     その後、世界はこんなにも綺麗だったというのを思い出しました。
     あの時は本当にありがとうございました。
     
     
     ……ここまで私の事ばかり讃えてるが、おまえが少尉という言葉に囚われている原因は鶴見中尉にもあるだろう。
     
     光を亡くし暗い海の中に居たおまえを最初に引き揚げて下さった鶴見中尉あのかたの階級は当時【少尉】だっただろう?
     だから余計に思い入れがあるのだろうな…少尉というものに。
     なるほど、理解した。
     


     ああ……。そう、ですね…私が少尉という階級に未練たらしい理由が少し解けた気がします。
     
     
     
     仕方ないな。
     たまに呼び間違えるのは赦してやろう。 
     
     
     だが、今世に生を受けた私は、やはり少尉ではないのだ。
     しっかりと現代の等身大の鯉登音之進をおまえには見て欲しい。
     
     まっすぐ進めているか、横でも前でも後ろでもいいから見ていてくれ。
     そして成長する様を見守ってほしい。
     今世でも遠慮なく月島おまえを呼ぶし頼るからな。
     横道に逸れたら叱り、成功したら盛大に褒めろ。
     私がこの現代世界でも高く昇り、立派な大人の男になる様に補佐をしてくれ。
      
      
     あ、もちろん成長した後も手放す気はないぞ?
     
     ずっと側にいてくれ。  
       
       
       
     一緒に生きよう。 
     
     今世も。
     
     
     なぁ、月島ァ。
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