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    BBD_6P

    @BBD_6P

    TGM/TG。ハンルス/ハンとルス/グスマヴェ/86
    壁に向かって素振りした供養のしなじなを詰めています。

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    BBD_6P

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    【あぶ空】ハンルス(琥珀糖)
    つきあってる。R18要素はないけど全編裸なのでお気をつけください。
    死について話すようにみせかけて別のことに気を取られるはなし。
    ちゃんと書き直したい。
    Talkin’ bout ThaT. アレについて話そう
    They Kill PPL. あいつら最高

    Talkin’ bout ThaT./ They Kill PPL.Talkin’ bout ThaT.

     最近では物騒な事件が多いという。部屋の隅に捨て置かれた小さな画面から、今日もどこかで誰かが命を落としたというニュースが流れていた。暗い世相を反映しているのでしょうか、長引く不況が人々の心を荒ませるのでしょうか。深刻そうな声を聴き流しながらハングマンは小さく笑う。
     戦場では毎分毎秒、今この瞬間にさえ多くの兵が命を喪っているというのに、日常の中で生きる人々はそんなことには無頓着だ。用意された原稿を読みつづけるぺらぺらの美人の紅く染められた唇は、訓練を重ねて作られたうつくしい声に併せてうねうねと動く。
     だれかがそういうことにしたいんだろうな。肩を竦めると苦い笑いがくちびるの上へと戻ってきた。生きている人間は実にグロテスクだ。殺す相手の顔すら見えない戦場も、そこで死に行く者も、生きて戦争を操っている奴等に比べればずいぶんと上等な存在に違いない。戦争なんてクソくらえだ。しかし自分はその中で生きている。
     
    「さっきからなに笑ってるんだ?」
     不機嫌そうな声に、優秀な男は慎重に笑いを収めた。なあ雄鶏君、という呼びかけに応えたルースターの声は思っていたより穏やかで、ハングマンを安堵させる。
    「人は死ぬとき、どんな気分になるんだ?」
     視線を移動させながら訊くと、ルースターはかすかに右眉を上げて、さあ? と答えた。
    「まだ死んだことないからわかんないな」
    「それもそうだな」
     ハングマンは肩を竦めた。バカなこと言った、忘れてくれ。
     …まあ死にかけたことがないわけでもないよ、主に上官のせいだと思うけどさ。そう言って相手が笑うので、思わずことばを継いだ。じゃあお前は「死」って何だと思う?
     
     さあ? 再白してルースターは目を閉じる。考えたこともない。…そういえば、遂情のことを小さな死、とも言うけど、それは?
     へえ、さすが基礎教養の塊だな。大げさに頌えると、可愛い男は声を立てずに笑った。ひたりと合わされた裸の胸から笑いが細波のように伝わってくる。おいおい、お前、何わらってるんだ?
     聞き覚えのある言葉でじゃれついてみせる。穏やかなスフェーンの瞳は笑いのかたちをとっていたが、剣呑な声がうるさい、と言い、ついでのように唇に噛みつかれた。なんだよ、もっかいすんのか? 目を細めて問い掛けると、死ぬときの気分が知りたいんじゃなかったのか、とまぜっ返される。俺はいいけど、とハングマンは宝物の背に腕を回しながら悪戯っぽく囁いた。ほんとにいいのかよ。
     なぜ、という不審げな問いかけをさらりと流してシーツを剥がす。
     
    「だって言うだろ。食べても差し支えありませんが、風味の点では劣りますって」
     
     ブラッドリー・ブラッドショーは声をあげて笑うと、じゃあ俺がお前を殺してやるよ、と優しく言った。
     
     


    They Kill PPL.

    「あつい」
     囁くように呟いたルースターは、シーツを剥いで蹴り飛ばした。ずっしりと湿ったオフホワイトのシーツが、すらりと長い膝下に絡まって半分だけ床へとずりおちる。あつい、ともういちど唸って、ルースターは枕を床に落とし、まっさらなシーツに頬をつけて満足そうにとろとろと微笑んだ。その背中をひょいと越えて枕を拾い上げ、ハングマンは男の額を右手で拭う。おやおや、かなり汗かいてるみたいだな……大丈夫なのかよ。
     恨めし気な男は瞳だけでこちらを睨み、お前こそ、と言い捨てた。
     
    「で、どうだ。死んだか?」
    「生憎まだ生きてるらしい」
     
     そうか。ごく薄く笑って、ハングマンはシーツを拾いあげた。二三度振り捌いて使い物にならないとわかったコットンを放り出して、引き出しから取り出した新しいシーツで恋人の体を背から包み込む。ルースターは俯せたまま、つめたい、と呟き、わずかに身じろいだ。平素から迎撃を得意とする男がおとなしくされるままになっているのに気をよくして、かたちのいい頭を縁取る甘い色の巻毛を撫でつけながら、ハングマンは我知らず小さな笑いを零した。
     
    「……なんだよ」
    「こっちの話だ」
     訝しげに寄せられた眉間の皺を人差し指で伸ばしてやりながら、いつか訪れる死のことをもう一度考える。死はだれにも平等に、ただ一度だけ与えられた人生最後のイヴェントだ。不確かなようであれほど確かなものもない。死からの生還、臨死体験、どれもまことしやかに語られるが、それは死ではない。あくまでそれと似た何か別のものだ。たとえこの目の前の不敵な男がいかに温かく鼓動していようとも、いつか必ず自分とは別の死の機会を迎えるに違いない。それはとても確かで哀しく、しかし敬虔でうつくしいことだ。太古の昔、死者を包むために遣われたやわらかな布に似たシーツの中でしずかに呼吸しているルースターの首筋をみつめながら、ハングマンはそれがあの時ではなかったことについて、何者かにそっと感謝する。
     おい、いつまで続けるつもりだよ。窘められて漸く指をはなすと、ルースターの眉間には剽軽な赤みがさしていた。それすらも愛しい。
     
    「ベッドでの『しんじゃう!』って何だと思う」
    「何って…演技以外の何物だと思ってるんだ?」
     
     即答したルースターの顔をまじまじと見て、ハングマンは声をたてて笑った。おいおい、それは残酷にすぎるだろう、世の男の九割が立ち直れない。甘えてみせると、真の毒舌の射手は何を今更、とさらに冷たく言い返してきた。
     
    「演技か」
    「演技だ」
     
     そうか。まぶたの際から瞳をちらりと閃かしてハングマンは聞く。お前はどうなんだよ、俺のブラディ。そうだな、とのんびり相槌を打って、のんびり屋の雄鶏はちょっとだけ考え、まあ臨死体験くらいには、と呟いてからこちらに向き直った。
    「正直に言えば許してやるけど」
     そう言いながら、すっかり皺になったシーツの中から両手を出して相棒の頬を挟む。
    「お前も死んでるはずだぞ、ジェイク」
     愛する男の唇はあたたかく、生ける命の味がした。
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