愛してると言って 毎朝のルーティンがある。食事や一通りの身支度を終えたら玄関に向かうのだ。そこに外出予定の有無は関係ない。玄関を開けいつもの場所に視線を向ける。用意したおもちゃサイズの木の椅子。今日は利用者がいるようで、小さな恐竜の人形がお座りし、下にはメモが挟まっている。
『おはよう!今日の夏祭りは会場集合だって!14時にそっちに行くよ。』
エイリアンによって置かれた小さな訪問者を胸に抱き扉を閉めた。まだまだ時間には余裕があるが用意を始めよう。去年の浴衣は何処に仕舞ったか。
同じマンションに入居者するエイリアン。彼に出会った時の事はよく覚えている。呪術師という職業柄、不可思議の存在には見慣れていた。なんなら知り合いに竜人や鬼がいるので、エレベーターで一緒になった生き物の頭に角が生えていようが特段驚くべきことではない。しかし、ほとんど反応しなかった筈なのに、相手は目ざとく擬態を見破られたことに気がついた。狭い密室で自分よりも遥かに強いと分かる異形に追い詰められる恐怖を生涯忘れない。
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