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    tekko33

    自分が描いたイラストを載せております。
    主に刀剣乱舞がメインですが他の作品もあったりします。

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    tekko33

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    一応出来たけど、最後が納得してないので一応供養なできたwww

    #みかんば
    mandarinPlant

    雨の雫 花の雫サァァァァァァ…

    外から聞こえるのは雨の音。
    折角満開に咲き誇った桜も、雨の雫を追いかけるようにハラハラと落ちている。

    そんな様子を山姥切国広は縁側で見ていた。
    普段は晴れていても雨が降っていても、隣にはいつも好きな人が座っていた。
    告白はしていないが、今の関係のままでいいと思っている。
    自分は相手にとって不釣り合いだと思う。
    山姥切は小さくため息をつくと、空を見上げた。
    雲はいつも以上に暗く、まるで自分の心の様。
    目を閉じ、雨の音を聞こうとすると今まで聞こえなかった音色が聞こえた。

    「山姥切。」

    それはいつ聞いても綺麗な音色だった。
    他の男士の名を呼んでもそう思わないのに、自分の名を呼ばれると不思議と心が温まる。
    山姥切は目を開けると、声という音色が聞こえた方を見た。
    そこには今思いえがいていた人物が立っていた。

    「三日月。」

    山姥切は眩しそうに目を細めると、小さく名を呼ぶ。
    三日月宗近。
    天下五剣にして強さと美しさを兼ね備えた男士。
    三日月は小さく頭をコテンと横に倒すと、山姥切の隣にある座布団に座った。

    「何かあったか?」

    三日月の問に、山姥切は首を振る。

    「いや、何も…。」
    「そうか。」

    三日月は手に持っていたお盆を山姥切と自分の間に置く。
    そして、お盆の上にある急須の蓋を取ると、お茶の葉を入れ始めた。

    「今日は『桜茶』だ。」
    「もう散りかけているのにか?」

    小さく笑う山姥切に、三日月も笑う。
    急須に桜茶の葉を入れると、仄かに桜の匂いが漂う。

    「いい香りだな。」

    再び目を閉じ、満開だった頃の風景を思い出す。

    「ほら、入れたぞ?」

    三日月の声に目を開けると、湯呑みを持った三日月が目の奥に写る。
    小さく礼を言うと、湯呑みを受け取る。
    ふと湯呑みの中を見ると桜の花が浮かんでいた。

    「日向が珍しく梅干しではなく桜の花を塩漬けしたらしくてな?それを少し分けてもらったのだ。」

    自分の湯呑みを持ち、中にある1輪の桜を見て三日月は微笑んだ。
    その顔を山姥切は再び眩しく感じ目を細めた。
    その笑顔を自分だけのものにしたい…。
    だが、写しの自分が天下五剣につり合うわけが無い。
    山姥切は小さくため息をつくと、桜茶を1口飲んだ。

    山姥切はこの時間が好きだった。
    好きな人と一緒に過ごせるこの時間。
    大切にしたい時間だった。
    ふと、三日月の顔を見る。
    優しく微笑んで話す三日月に、山姥切は心臓をトクトク鳴らす。
    暫く他愛もない話をしていると、ふと三日月の表情がかわる。

    「三日月?」

    首を傾げ、三日月を見ると少し顔が赤い。
    今日は雨だ。
    もしかすると身体を冷やしたのかもしれない。
    山姥切は湯呑みを置くと、三日月に手を伸ばした。
    すると、その手に三日月は優しく握ってきた。
    山姥切は驚いたが、三日月のしたい様にさせた。

    「山姥切…。」

    三日月の切ない声にトクンと心臓が鳴る。
    ゆっくりと指を絡ませてくる三日月に、山姥切は目を閉じる。
    それが合図と思った三日月は、ゆっくりと山姥切に近づく。
    あと数ミリで口付け出来る距離まで来ると、ハッとした様に山姥切が目を開け掴まれていない手で三日月を押し返した。

    「山姥切?」
    「…駄目だ…。」
    「何故だ?」
    「アンタには…俺はつり合わない…。」
    「ま…待て!!」

    絡めていた手を離し、立ち上がろうとした山姥切を三日月は再び手を握る。
    驚いた山姥切はバランスを崩し、三日月に倒れた。
    それをすかさず三日月は山姥切を抱きしめる。

    「み…三日月!離せ!」
    「駄目だ!離したらもうこの時間は戻らぬであろう!?」
    「なっ…!?」

    山姥切は三日月の言葉に驚いて彼を見た。
    そこにはいつもの笑顔ではなく、顔を真っ赤にさせた三日月がいたから…。
    目を見開き、山姥切は暴れるのをやめた。
    それを見た三日月はホッとしたのか、山姥切の肩に顔を埋めて優しく抱きしめた。




    『どういう事だ?三日月が顔を真っ赤にさせるなんて…。』

    それに…。

    『駄目だ!離したらもうこの時間は戻らぬであろう!?』

    あの言葉…どういう意味…?




    身体に入っていた力を抜いて、山姥切は三日月に声をかける。

    「…三日月。」
    「…なんだ?」
    「どういう意味だ?」
    「うん?」

    山姥切に顔を埋めていた三日月がゆっくりと顔をあげる。
    そこにはいつもの三日月がいた。
    優しい眼差しで見られ、山姥切の心臓が激しく鳴り響く。

    「…あの…。」
    「うむ。」
    「『離したらもうこの時間は戻らない』って意味は…。」
    「そのままの意味だ。」

    三日月は優しく微笑むと、山姥切の頬に自分の手を触れさせる。
    そして、小さく優しい口付けをした。
    すぐに離れたが、それはとても暖かくて山姥切の心をくすぐった。

    「…三日月…。」
    「なぁ、俺が何故お主を茶に誘うか分かるか?」
    「…え?」

    小さく顔を傾ける山姥切に、三日月は再び優しく微笑んだ。

    「俺はな?山姥切…いや国広の事が好きなのだ。」

    三日月の告白に、山姥切は目を見開く。

    「なん…で…。」
    「前に桜の木に登っておっただろう?その時俺はお主を探していたのだ。」




    あの日…主に頼まれて近侍である山姥切を探していた三日月は、ある場所にある桜の木にたどり着いた。
    それは見事な桜で、三日月は見入っていた。
    その時、バサバサと桜の花びらを纏わせた山姥切が降りてきた。

    『お主は…桜の精か?』

    山姥切は三日月の言葉にに驚き、目を見開いていたが、立ち上がると布に付いた花びらを払い落とした。

    『…アンタ…、頭ぶつけたのか?』
    『…あ、いや…。忘れてくれ。』

    あまり話したことの無い二人だったが、それが初めての会話だった。
    口に手を押さえ、黙った三日月に山姥切はため息を付くと三日月の横を通り過ぎようとした。

    『あ…待ってくれ。』

    三日月は慌てて山姥切を止めた。
    山姥切は三日月の方を見ると首を傾げた。
    何か用か?と言わんばからの視線に、三日月は何故引き止めたのかも分からず、ただ次の言葉を繋ごうとした。
    しかし、出てこない。
    三日月が黙っていると、山姥切は再びため息を付く。

    『用がないなら行くぞ?』
    『あ…。』

    立ち去ろうとした山姥切に手を伸ばすと、無意識に山姥切の髪に付いた花びらを取る。

    『…っ!』

    山姥切は驚いて振り返った。

    『あ…いや…花びらがな?』
    『…花びら…。』
    『スマン…驚かせてしまったな…。』
    『いや…こちらこそすまない…。』

    山姥切は布を深く被るとその場を走るように本丸の方へ向かった。
    三日月は山姥切が見えなくなるまで見つめていた。




    「あの時から、国広の事が忘れきれなくてな?毎日あの桜の木の元へ行っていたのだ。」
    「…そん…な…。」
    「桜の精と…国広と話がしたい。ただそれだけだった。」
    「1年も…前の話だぞ?」
    「あぁ。だが、お主と話した事が嬉しくてな。」

    三日月はそういうと、山姥切を再び抱きしめた。
    嫌がらない山姥切に胸を撫で下ろす。
    そして、話を続けた。

    「しかし、会えなくてなぁ…。ならば食堂でなら会えるのではないかと思ったのだ。そしたら案の定、山姥切はいて…。いつも近くで食べる山姥切を俺は見ていた。」
    「…三日月もか?」
    「あぁ。盗み見はあまり良くないが、いつも見ていたぞ?」

    クスクス笑う三日月に、山姥切は恥ずかしくなった。
    そして、三日月の肩に顔を埋める。

    「…俺も…。」
    「ん?」
    「俺も、いつもアンタを見ていた…。あの桜の木で出会う前から…。」
    「そうだったか。」

    自分の頭を優しく撫でてくる三日月に、山姥切は目を閉じる。

    「…アンタが…顕現したあの日から俺は…。桜を舞わせて現れたアンタが綺麗で…。その時から心臓が痛くて…。兄弟に…堀川国広に相談したら、それは恋かも!と言われて…。」

    それから三日月宗近を目で追いかけるようになった。
    三日月の好きな物、嫌いな物、得意なもの、不得意なもの…。
    色々知っていったが、何かが足りなくて…。
    あの姿をもう一度見たくて…。

    「では、いつも桜の木に居たのは…。」
    「…アンタがいつか桜の木の元に来てくれるのではないかと思って…。」
    「国広…。」
    「…でも来なくて…。あの日、アンタが来なかったら諦めようとしていたんだ。」

    この願いも…この想いも…。
    でも…。

    「そしたらアンタがいたんだ。俺が降りた所に。」

    山姥切はグッと三日月を押し返すと、顔をあげ目の前の人物を見つめた。

    「桜の精は俺じゃない…アンタだ。」
    「国広…。」
    「あの時に見た桜の花びらとは違うが、やはり綺麗だと思ったんだ。桜を纏うアンタが…。」
    「そうだったのか…。」
    「だから、あの時三日月が来てくれて良かったんだ。」

    山姥切は小さく笑うと、首を傾げ口を開いた。

    「俺も…好きだ、三日月宗近。」




    サァァァァァァ…

    外から聞こえるのは雨の音。
    しかし、今の二人には届かなかった。
    今は幸せの音に包まれているから…。
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