「え?何だその弁当」
蓋を取った俺の弁当を見るなり、ローランは困惑した。
俺だって驚いているが、やっぱりまだ怒ってる……、とも思っている。
昨日少し立香と行き違いがあった。
喧嘩と言うほどではないと思うのだが、もしかしたら立香にとっては違ったのかもしれない。
お互い頭を冷やそうと、その喧嘩の後は顔をあわせず、今朝も立香は一人先に家をでてしまっていた。
リビングの机の上にはいつもの弁当包みがあったから、これが仲直りの印なのかなと楽観視していたらこれだ。
開けた弁当は一面真っ白。ご飯がいっぱいに詰まっているだけだった。
「アンタ何やったんだよ」
呆れていうローランは、完全にこっちが悪いと決めつけている。
俺との付き合いの方が長いくせに、こういう時は立香の味方になる。
「なんもしてない!昨日ちょっと喧嘩みたいなっただけだよ」
「喧嘩なー……あの立香がそんな嫌がらせみたいな弁当作るくらいだぞ。よっぽどなことやってるんだじゃないのか?」
「……」
ローランに言われずとも分かっている。
普段ほとんど喧嘩なんてしないし、ちょっとした言い争いがあっても翌日まで引きずる様な事はなかった。
こんな事になるのは初めてだ。
そんなに嫌だったのだろうか。
しゅんと肩を落として落ち込む俺を見て、ローランはばしばしと背中を叩いて言う。
「ちゃんと話し合って、謝れば大丈夫だって!」
力加減が出来ていなくて背中はじんじん痺れる様に痛むけれど、人からそう言われると何となく大丈夫な気がしてくる。
ぐっと顔をあげて礼を言えば、ローランもよかったと笑った。
とりあえずこの弁当を空にしてしまわないとと、ご飯に箸を入れると底から何かが顔を出す。
唐揚げ?
そっと他の部分もご飯を寄せてみると、底には卵焼きやら、ミニハンバーグに、きんぴらなどおかずが出てくる。
俺の好きなものばかりだ。
「ちょっと拗ねてただけかな」
それを見たローランはいらん口を出したみたいに渋い顔をしていた。
「なんで喧嘩したんだよ」
「皿洗いどっちがするかで揉めた。俺がやるからテレビ見ててって言ったら、見たいのがあるのは俺の方だろうって自分がやろうとするし、じゃあ明日って言っても自分がやるからいいって……」
「……へー」