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    crow4610

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    crow4610

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    ロリショタリヴァハンの現パロ。すっごい書きたいけど書きたい欲が強すぎて逆に筆が進まなくなったやつ。書きたいけど、書きたいんだけど、進まない…。

    #リヴァハン
    riverhan.
    #現パロ
    parodyingTheReality

    結ばれなかった者達へ**結ばれなかった者達へ**



     ばたばたと布地のはためく音で目が開く。
     二メートル近くあるだろうか。へこんだ地面の縁で、深緑色の布の塊が強風に煽られて翻っている。風を孕んでは膨らんで、押し出されては萎む。繰り返されるその動作を眺めている内に、それの中央に一対の羽が刺繍されている事に気づいた。太糸で力強く縫い表されている。よく目を凝らして更に注視していると、それは誰かが羽織ったマントであることが判った。みるみる内にマントから手足が生えて、ちょこんと頭部が乗る。蹲踞した後姿に、ドキドキと胸が震えた。ゆっくりとこちらを振り返る人物の口元だけが妙にはっきりと見えた。

    「     」

     その人の口元が大きく笑みを象って、何かを告げる。ひときわ大きくなる風の音に、言葉の判別はおろか声すらも届かない。もう一度言って、と大きな声で懇願している内に、その人はゆっくりと風の中に溶けて消えた。
     一対の翼の残像が名残惜しそうに、瞼の裏に暫く焼き付いていた。



    ■□六歳、五月□■




    「おう、どうした」
    「ん……」

     ガシガシと乱暴に頭を撫でられて、リヴァイは重い瞼を開けた。目尻が痛い。

    「おうおう腫れちまってるじゃねぇか…」

     ぶつくさとボヤキながら、頭を撫でた伯父が慌ただしく部屋を後にする。

    「お母さん…」

     泣いて起きた朝は、母が優しく抱き上げてくれた。あんな乱暴な手つきで無遠慮に撫でたりしない。きょろきょろと形の良い頭を左右に振って見回しても、母はおろか父親の姿もなかった。
     妙に静まり返った家の雰囲気に、昨日の朝早くに父母が死んだ事を思い出した。「ああ…」と嘆いて顔を覆う。夫婦仲の良い父母は、リヴァイを伯父に預け、出先で事故に巻き込まれた。報せを受けて取り乱したケニーはリヴァイを抱擁したが、その腕はぶるぶると震えていた。

    「冷やせ、ほら」

     零れ落ちる涙を抑えた両手が優しく取られ、マイクロファイバータオルが渡された。冷たい水で冷やされたそれに両目を押し当てる。泣き腫らした瞼にじんと痛い。

    「お前、まだ六つなんだぞ。もっと大声で泣いて良いんだ。
     テメェがそんなだと俺が泣いちまうだろうが…」

     違うよ、とリヴァイは心の中でケニーに語り掛ける。起きた時に泣いていたのは、たまに見る夢のせいなんだ。ついさっきまで、お父さんとお母さんが死んだことを、忘れていたんだ。両親の死を嘆いて眠ったはずなのに、起きてすぐ母親を恋しがった事を、小さなリヴァイはとても申し訳なく思う。ケニーは隣でわんわんと泣いていた。


    「午後からビューイングが出来るように手筈した。
     それが終わったら、夕方から教会だ。しっかりお別れできるか」
    「…うん」
    「何せ、急だったからな。
     伯父さんもまだ心がついてってないんだ」

     ふと、夢の中の人の笑った口元がちらついた。心から笑っているあの口の開き方を思い出すと、胸がぎゅうっと痛くなる。ケニーの言う「心がついていかない」状態に近いのかもしれない。リヴァイは唇を尖らせて「わかるよ」と小声で言った。押し黙って泣いたものだから、喉が潰れて掠れた声だった。突然に誰かを亡くすその衝撃を、六歳のリヴァイは知っているような気がした。


    「リヴァイ、飯は食えるか」
    「ケニーは?」
    「俺ぁ、そうだな。ビスケット一枚で良いなぁ」
    「お母さんが一昨日作ってくれたカルターフントがある」
    「ああ、クシェルの菓子は美味いよな」

     優しく抱き上げられるものだから、リヴァイはも甘えてケニーの首に額を押し当てた。「リヴァイの大好物だから」と頻繁に作ってくれるチョコ菓子がもう食べられないなんて、信じられなかった。




    ◆◇◆



    「一応、持っとけ」

     グラシン紙で大雑把に包まれたカルターフント二切れを無理やり持たされて、リヴァイはぽいっと家から放り出された。できればずっと二人でくっついて両親を見つめていたかったのに、これからケニーは午後から始まるお別れの会の準備に追われるようだ。花屋や教会へ出向き、昨日の午後に両親の縁者に済ませた訃報の整理をし、客人を迎える準備をしなければならない。放り出されたばかりの玄関を振り返ると、そこに両親が立っているような気がした。
     さて、このどうしようもない寂しさと悲しみをどう紛らわせれば良いのか。ふむ、と考え込んでから、家から然程距離のない自然公園に行こうと結論を出した。公園とは名ばかりの、小川が流れるただの林だ。そこはいつもしんと静かで、両親との思い出も沢山ある。見上げた晴れ渡った初夏の空に、ぽかりと白い雲が浮いていた。



     五月の陽射しを受けて、小川ははキラキラと煌めている。川縁にあぐらをかいて、膝の腕に小さな肘を置く。肘から伸びた手に顎を置いて、泳ぎ遊ぶ小魚をぼんやりと眺めた。たまに上流から風で千切れたのだろう、青い葉が流れてくる。
     両親が死んで悲しくて堪らないのに、どこかで「こんなものだ」と感じている自分が薄情でとても嫌な気分だ。リヴァイは六歳の割に感受性が強く、そのくせ冷めた子供で、根っから陽気な両親を心配させた。自分が陽気でないことをリヴァイは十分に承知していたし、それがどうしてなのかも何となく理解していた。
     心の中に、ずうっと誰かが棲んでいる。


     『それ』を知ったのは、一年ほど前に見たテレビ番組のとある特集だ。SFやファンタジー小説を愛読する父の趣味に付き合って視聴したその番組は、少なくとも二百年以上も昔には巨人というものが存在していて、近年その証拠となる物的証拠がとある島から大量に発掘されたという内容のものだった。「凄いなぁ」と関心する父の横で、リヴァイはぞわっと背筋の粟立ちを感じた。
     血生臭いにおいと骨肉が折れて咀嚼される音、何かの唸り声の後にチリチリとする熱気が肌を這う。リヴァイは悲鳴を上げ、父の懐に飛び込んでわんわんと泣いた。普段は物静かな息子の様子に驚いた父親の、素っ頓狂な宥め方を思い出して、再び滲んだ目尻の涙を拭った。

     ぱしゃん、と水の跳ねる音がして、リヴァイはふと顔を上げる。カエルでも跳ねたかなと正面を見やると、同じ年頃の少年が膝までズボンの裾を捲り上げて川縁に仁王立ちしていた。新緑の色に初夏の匂いを感じるとはいえ、まだ五月になったばかりだ。水遊びに興じるには肌寒い。

    「ひゃ~~また逃げられたなぁ!」

     どうやら小魚を捕りたいようだ。幾分か高くなった陽に赤茶色の髪が透けて見える。裾のリブから覗くひかがみの影に少しだけ胸が疼いた。

    「何ってすばしっこいんだ、ここの小魚たちは…」

     ぶつくさとぼやきながら「やあっ」と勇ましく掛け声して、また川に手を突っ込んでいる。あんなにうるさくては、小魚も逃げやすいだろう。バッシャンバッシャンと水を蹴る音もけたたましいのだから、あれに捕まる魚は愚図以下だ。何とも微笑ましい光景に涙もすっかり引っ込んでしまった。
     そんなやり方ではいつまで経っても捕れないと助言しようかと口を開いたが、すぐに閉じる。涙が引っ込んだのは事実だけれど、このどん底の気持ちは川遊びに興じられるほど浮上していない。普段通りの日常を過ごしているだろう他人の姿に、ちょっとだけ惨めな気分だってしている。かと言って、家に戻っても益々孤独を感じるだけだ。

     はふと吐いた息が、信じられないほど一人遊びの上手な少年の耳に届いてしまったらしい。ぐるりとこちらを振り向いた目は大きく、半年前にこの林で拾った艶々のくぬぎの実に似ている。かっちりと視線が嚙み合ってしまい、リヴァイは思わず頭一個分後ろに胸を反らせた。頭髪よりも明るいブラウンの瞳がにこやかに綻んでこちらを見ている。

    「やあ、初めまして!
     きみはこのあたりのこども?」

     まるで年嵩のように馴れ馴れしく話しかけてきた。思わず眉間に皺を寄せて警戒する。リヴァイのそんな様子は意に介さず、彼は大きな石を選びながらぴょんぴょんと片足飛びで跳ねながらこちらへ寄ってきた。だいぶん温かくなった石の上で足の裏を乾かそうとしているらしい。

    「うーん、タオルを持ってこなかった。失敗失敗…」

     大きめの石に腰かけて、彼は徐にズボンの裾を下ろした。多少だぼだぼのそれで脹脛についた水滴をぽんぽんと払う。陽気に誘われたようなその緩慢な動作を、リヴァイは信じられないといった目で凝視している。きちんとしていない子だ、と思いついてもう一歩後退った。それでも一応、声をかけてみる。

    「な、何してたの」
    「え?!わたし?!魚だよ、魚を取りたかったんだ!」
    「ああ…そう…」

     リヴァイの社交辞令とも言える問いに予想通りの答えが返ってきた。しっかりと目線の合った瞳の奥が星の光で煌めているような、明るい茶色の大きな双眸。その生命力の強さに引き込まれそうになる。

    「ここの魚はすばしっこいね。
     家の周りの池の魚はもっと大きくてね、手を突っ込めば大抵その尾びれを掴まえる事が出来るんだ!でもここの魚は本当に小さいし、川の流れに正確に沿って泳いでいるようで実は結構ランダムに動いていて動きの予測がつけにくい。
     あ~~、網でも持って来ていたらなぁ~!きっと何匹か捕獲できたはずなんだけどなぁ~!」

     同じ年頃に見えたがその口はよく動いた。圧倒的な語彙に気圧されながら、リヴァイは大人しく彼の話に耳を傾ける。態度はどうあれ耳障りの良い声だと感じたし、何より黙っているだけで時間が有意義に流れていくのは悪くない。

    「家、ここから遠いの」
    「わたしの?!そうだね、遠いよ!
     今日はね、お父さんの用事があってこの辺に来たんだぁ。昨日の夜に出発してね、一晩中運転していたものだから、父さんったら疲れちゃって、まだ車の中で寝てるんだよね。
     あんまりにも暇だしお腹も空いちゃったから、何か無いかなと思って探しにきたのさ」

     ふうん、と相槌を打って、リヴァイはケニーに持たされたグラシン紙の包みの存在を思い出した。オーバーオールの真ん中に取り付けられた大きなポケットに突っこんだままだ。とてつもなく溶けている様を想像し、青くなりながらそろそろと取り出してみたが、バタークッキーの周りをコーティングしているチョコレートは悲惨なまでには溶けていない。六枚の層になっているクッキーにしっとりと溶け込んで、より美味しそうに見える。ほっと胸を撫で下ろしながらグラシン紙を器用に破き、包んだカルターフントを一枚手渡した。
     一連の動作を黙って見つめていた子供の瞳がキラキラと輝いている。丸い頬は上気して、見るからに美味しそうなチョコレート菓子にちょっぴり涎が垂れていた。

    「いいの?」
    「お腹、空いてるんだろ」
    「うわあ、ありがとう…」

     ほう、と溜息を吐きながら、そろそろとカルターフントに寄っていく唇を観察する。はむりと齧りつくと、クッキーがさくりと軽い音を立てた。鼻の頭にチョコレートがついても構わずにサクサクと食べ進めている。母の手料理が他人の胃を満たしていく様には、何とも言えない幸せがあった。食べ終わってしまいたくないという未練を見せながら、それでもあっという間に無くなってしまったお菓子に眉が下がっている。

    「ん」
    「えっ」
    「ここに来る前に、もう食べたから」
    「うわあ…本当にありがとう。
     きみは天使さまかなぁ…?」

     もう一つを差し出すと、丸い目が更に丸くなった。先ほどよりも一層増した瞳の輝きに思わず照れてしまう。少年の身形はきちんとしていて、特に貧しい子供のようには見えなかった。彼は宝物を受け取るような厳かな手つきで焼き菓子を受け取って、またはむりと食いついた。

    「こんなに美味しいカルターフントは初めてだよ…。
     どこのお店で買ったんだい?父さんに教えてあげたいな」

     うっとりとした目つきでそう言われ、リヴァイは思わず口ごもる。

    「買ったものじゃないんだ」
    「そうなの?そうしたら、これは誰かの手作り?」
    「母さんの…」
    「お母さん?!凄い凄い、きみのお母さんは素晴らしいね!
     こんっなに美味しいお菓子を食べられるなんて…きみはなんて幸せな子供だろう!」

     思わぬ羨望の眼差しに、リヴァイはぎくりと肩を竦めた。少年がこちらの事情を把握しているわけではないから、向けられた素直な感想はとても嬉しいのだけれど。
     お母さんはもういない。その事実が、今になって漸く、小さな心にちくりと刺さった。ケニーがあんなに泣いていて、リヴァイもあんなに悲しかったのに、今さらに事実を突きつけられたような気分になったのは、目の前の少年には今日がただの日常でしかないからだろう。

    「もう、食べられない」
    「え?」
    「父さんも母さんも、昨日死んだんだ。
     今、家で伯父さんが葬式の準備をしてるから。だから、今は、ここで時間を潰してる」
    「え――」

     鳶色の瞳が大きく見開いて、チョコレートのついた口がぽかんと開いた。両親を亡くすというのは、やはり見ず知らずの子供にとっても衝撃的な事なのか。リヴァイは絶句する少年の揺れる瞳孔に、ますます悲しみを募らせる。込み上がる涙を飲み込んで「気にしないで」と言ったリヴァイの言葉に「ヨハンナ!!どこだ!?」と叫ぶ声が被さった。


    「あっ、父さんだ…」
    「え、ヨハンナ?」
    「ああ、ええと、わたしの名前」
    「ヨハンナ??」
    「えと、うん、わたしはヨハンナ。
     ごめん、自己紹介をしていなかったね。
     わたしは、ヨハンナ・スミス。六歳だよ。きみは?」
    「リヴァイ。リヴァイ・アッカーマン、同じ、六歳」

     チョコレートのついた指で「よろしく」と握手を求められ、リヴァイはすっと手を後ろに隠した。




    ◆◇◆


    「いや、申し訳ない。娘が迷惑をかけました」
    「いやいや、かまわねぇんですよ。
     あいつにも良い気晴らしになったみたいだ」


     伯父とヨハンナの父の会話に耳を傾ける。彼は父の大学時代からの旧友らしく、葬儀に駆け付けるために一晩中車を駆って今日の未明にあの自然公園のパーキングに到着したそうだ。着いて早々に仮眠を取り、携帯電話のアラームで目覚めたところ、助手席の娘が忽然と姿を消していたらしい。よっぽどゾッとした事だろう。




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    DONE猗窩煉/現パロ
    実家から出て2人で同棲してます。
    ライトな「価値基準が違うようだ!」が書きたくて書いたお話です。
    喧嘩したり家飛び出したりしてるけど内容は甘々。
    「君とは価値基準が違うようだ!!実家に帰らせてもらう!」

    近所中に響き渡る声と共に、騒々しく杏寿郎は出ていった。
    またか、と勢い良く閉められた玄関のドアをぼうっと見つめること10分。リビングの方から間の抜けた通知音が響く。重たい足取りで通知を確認すると、それはまさしくさっき出ていった杏寿郎からのメッセージだった。

    『今日は実家に泊まる』

    …律儀と言うか何と言うか。喧嘩して出ていったにも関わらず、ちゃんとこういう事は連絡をしてくるのだ、杏寿郎は。

    先程までどうしても譲れないことがあって口論していたのに、もう既にそのメッセージだけで許してしまいそうになる。

    駄目だ、と頭を振って我に返る。この流れもいつものことだった。実際、今までは俺の方から折れている。

    杏寿郎と一緒に住むようになったのは一昨年の12月。あれから1年と少し経っているが、住み始めた頃も今も、些細なことで言い合いになって杏寿郎が家を飛び出すという事がたまにある。

    その度に「価値基準が違う!」とか何とか言って出ていくものだから、正直なところ、デジャブの様なものを感じてかなり傷ついていた。

    だが毎回、言い争いの原因は 3534