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    里上久路

    亀甲貞宗のことしか考えてない
    かといえばそんなことはないけれど
    亀甲貞宗ばかり描いています
    応援絵文字、とても嬉しいです!

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    里上久路

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    プロットを組んでいたら文章にしたくなったので文章にしました。
    後で漫画に直します。(いつになるかは不明)
    ※大型商業施設『万屋』は、いわゆる政府のひざ元にあって、数多の本丸が利用できるまさに『大型の万屋』なのです!

    #亀甲貞宗
    kamehamehaSadamune
    #二次創作
    secondaryCreation
    #刀剣乱夢
    swordAbuseDream
    ##・・れたい亀甲さんと・・たくない審神者
    ##後で漫画にするテキスト

    よその…ここは、大型商業施設『万屋』――

    「えーーんえーーん…」
    人通りもまばらな通路。
    立ち尽くして泣いている男児とばったり出くわした審神者は、保護者らしき人物がいないかとあたりを見渡した。
    そもそも人がいない。
    時間は平日の午前中。フードコート近辺は閑散としていた。
    「どうしたの?パパママとはぐれちゃったのかな?」
    怖がられないかな、などと不安に思いつつも彼女はしゃがんで声をかける。
    男児はぐずぐずとしゃくりあげながら首を横に振った。
    「違うの?…え~と、じゃあ、落とし物したとか?」
    この問いにもまた首を振る。
    「……きんじ…」
    男児の口からぐすぐすとつぶやくようにこぼれた単語。どうしたものかと考えあぐねているところに出たそれが聞き取れずに、審神者は「ん?」と首をかしげた。
    そこに。
    「ご主人様!」
    自分を呼ぶ彼の、いつもの声が聞こえて、振り向くと亀甲がいた。
    だがその彼は、審神者でなく男児のほうに駆け寄った。
    「きっこう!」
    「よかった、こんなところに…!ごめんね、ご主人様……!」
    男児は彼の顔を見て緊張が解けたのか、さらに泣いてしがみつく。
    それを受け止めて、亀甲も膝をついてよしよしと抱きしめた。
    (……あぁ、この子の……)
    その様子を見てすぐに得心がいった。
    この幼い男の子も審神者なのだ。この子の近侍も亀甲で、ふとはぐれてしまって泣いていたのだろう。
    しかし、この亀甲貞宗は自分の知るひとではない、別のものなのだと頭では理解しても。自分以外の誰かを『ご主人様』と呼ぶ彼を目の当たりにして、審神者は少し寂しさを感じた。
    そんな彼女の事情など知る由もなく、亀甲は自分の主をなだめながら顔を上げる。
    「ありがとう。君がご主人様を保護してくれていたのかな」
    「いっ、いや!保護というほどのことは、何も!声かけただけで!」
    きれいな顔。優しい声。知っているのに知らない。主ではない自分に話しかける亀甲貞宗。
    先ほど感じた寂しさとやらはいずこへ。(亀甲さんに『君』とか呼ばれるの……新鮮~~!)などと、ちょっとドキドキして楽しんでいる。
    「声をかけてくれただけでも、多少はご主人様の不安も和らいだと思うから…」
    「…きっこう」
    小さなご主人様がもじもじと声をあげる。
    「ん?」
    「おトイレ」
    「!!」
    安心したからだろうか。そうでなくても子供というものは突然“その意”を表明するものだ。
    それにしても彼はいささか驚きすぎではある。「亀甲」「トイレ」審神者は嫌な予感がした。
    「……ご主人様、それは」
    「トイレ行きたいって言ってるんだよ」
    何かを続けようとした亀甲を遮って、反射的に言葉を発する審神者。
    そのさりげないツッコミに亀甲は振り向く。
    「ここの奥にトイレあったから、早く連れてってあげなよ」
    間髪入れずに行き先を案内する審神者に驚きを隠せない亀甲。
    「相手は子供だぞ」
    「もれる」
    「ほら早く」
    矢継ぎ早に言葉をたたみかける審神者たち。
    「あ、あぁ、すまない、助かるよ。本当にありがとう!」
    「気を付けて~」
    色々と。とは声には出さず、審神者は手を振り返した。
    その相手は、小さなご主人様の手を引いて通路の向こうに(小走りで)去って行く。
    (…よその亀甲さんだけど、思わず言っちゃった)
    多分、彼が言おうとしたことは子供の教育上よくないしそもそも子供に通じないし、それに何より教育上よくないことだろう。止めるしかなかったのだ。
    後ろ姿を見送りながら審神者は、亀甲を近侍に置く男児の将来が心配になった。

    さて、と彼らと反対の方向に進もうとしたところに、「ご主人様!」と呼ぶ声が聞こえた。
    ダッシュで駆けてきた亀甲貞宗が、ぜぇはぁぜぇはぁと乱れた息を目の前で整える。
    「ご主人様…やっと見つけた…!ぼくを置き去りにするなんて、あぁあ…っ!」
    その頬の紅潮と荒い息は走って来た所為なのか何なのか。
    可笑しい。
    「……ふふ。私の亀甲さんだ」
    そう言うと、審神者は彼の横をするりと抜けて、足取りも軽く歩いていく。
    ――例えはぐれても、主を捜して見つけてくれる亀甲貞宗。
    でも、同じ姿をしていても意外と見分けがつくものだ、と、何だか嬉しくなって審神者はまた笑ってしまった。
    「あぁ!ぼくはご主人様の亀甲貞宗だよ!だって身も心もご主人様にきつく縛られているんだからね!!」
    亀甲は彼女の後を追いながら、身をよじる仕草も交えつつ声高に言い放つ。
    くすくすと行き交う人に笑われている。仲が良いね、なんて。
    「ちょっともう声デカい!笑われてるじゃん!あとトイレ長い!」
    「あぁん!申し訳ありません!」
    恥ずかしい。恥ずかしいけれど悪い気はしない。
    一体誰が、誰の色に染められているというのだろう。この感情はきっともう手遅れなのだ。と、斜め後ろの彼をちらりと盗み見てから、審神者はもう一度笑った。

    同時に手洗いに入ったのになかなか亀甲が戻ってこず辺りをうろついていたら男児を見つけた、というのが事の始まりなのだが。万屋に侵入しようとしていた遡行軍を、たまたま居合わせたよその本丸の男士たちが協力して人知れず退けた…というのはまた別のお話し。
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