君から受け取るのは ニタリと笑った心裡は身を低くして手を広げ男に向かって走り出す。
「ハハハ!そんなわかりやすい行動、避けられない訳ないだろ!!」
男は笑うと右手を心裡に向ける。手からロープが飛び出し心理に向かって飛んでいく。
「彼岸刃鳴(ヒガンバナ)」
心理は1度足を止めると落ち着いた口調で呟き、ロープに向かって地面から生えた赤い手が次々と向かっていく。
やがてロープをその手が掴むと心理は続けて話す。
「残念だけど、俺様には勝てないんだよ。てめぇがかっしーに手ェ出した時点で俺様に目ェ付けられたんだよ。」
親指を自分に向けた後男を睨みつけるようにして言うと、
「千手観音:降魔(せんじゅかんのん:こうま)」
と呟き、周りのガヤ達を一瞬にして壁から飛び出した釈迦の手が殴り伏せる。
そのまま先程と同じく腰を低くして男に向かって突進する。男はロープを彼岸刃鳴に取られ焦っている様子が見て取れる。
「畜生め、調子に乗るなよバンダナ野郎!!」
男は自分の体をロープに巻き付けると、ロープを飛ばす。
ロープは心裡の方に投げられると、そのロープを伝って体が移動していく。
「距離が近けりゃ動きも早くなるんだぜ...」
男はロープを心裡の首に掛けることに成功する。
「はぁ...なるほどねぇ」
「ならこんなのはどうかな、千手観音:舞踏奏楽天人(ぶとうそうがくてんじん)」
壁から生えた手は一斉に手を叩く。
男は手拍子の音に腕を吹き飛ばされる。
「!?...何をした...!?」
「あぁ、もう時期決着さ。」
「タダではやられるかよ!!」
男は残った腕とロープで心裡の首を締め上げる。
「ぐ...やられる前にやってやるよ...!!」
手拍子は段々とペースを上げていく。男は次々と身体を吹き飛ばされつつもしっかりと心裡の首を掴んでいる。
「うらァァァああああああああぁぁぁッ!!」
「おらァァァァァああああああああァァァ!!!」
……しばらくの沈黙が続く。
瓦礫の音と共に男が立つ。
「はは、ははは...勝った...勝ったぞ...!!」
男は高笑いを始める。
「へぇ、で、誰に勝ったって...?」
男はハッとした顔で瓦礫の上を見る。
そこに座っていたのは、仮死川だった。
「随分と、心ちゃんに無茶苦茶してくれたね...」
仮死川は隣で倒れている心裡を見てそう呟く。どうやらこの瓦礫の中から1人探したらしい。
「私たち二人とも怒らせられるなんて、君、サンドバッグ向いてるよ。」
「さぁ次は私が相手。不意をつかれたさっきみたいには行くと思わないことだね。」