溶けない雪 厚手のストールをぐいと顎の下まで下ろすと、ストロファイアは長い溜め息を吐いた。息が白くならないのだなぁと感心する深緑の毛糸の帽子に、フンとそっぽを向く。
エキゾチックな柄織の黒地のストールは、見た目が寒そうだからと真吾に無理やり巻きつけられたものだ。ハイネックのセーターもダウンコートもレインブーツもそうだ。
寒さなど感じないストロファイアにとっては動き難いだけで何の利もない。それでも我慢して着ているのは、どれも一郎の服だからだろうか。とは言え、どの服も持主は一度も袖を通したことはないのだが。
ストロファイアが慣れないブーツに癇癪を起こし悪態をついている。一歩進む度に足が深く埋もれ、バランスを崩して転びそうになるのが彼の自尊心に障るのだろう。真吾が支えようとすると、余計なお世話だと、その手を払い除けた。
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