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    kai3years

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    kai3years

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    まだ沼に落ちていなかった頃の「ん?お?んんん?」みたいな感じのやつ

    光サンのような何か ああ、気分が好い。

    「そりゃよござんした」

     心に留めたつもりの声は、酒精をたっぷり含んだ吐息と、一緒に漏れていたらしい。サンクレッドの体を半ば抱えるように歩く男は、横顔をやや剣呑にして、真っ直ぐ前を見つめている。

    「なんだ。楽しめなかったか?」
    「めちゃくちゃ楽しんだよ、酒は。問題はそのあとなんだよな、というか、今なんだよな」
    「いいだろ、たまには」
    「酔っ払いの介抱を『たまにはいいな』と思う人間、あんまいないと思うぞ、俺は」

     ご尤も。サンクレッド自身も、迷惑をかけて悪いなと思っていない訳ではない。飲み過ぎたのは確かな落ち度だし、反省すべき点でもある。ただ、転んでから杖を引っ張り出したって、どうしようもない。
     飲み過ごしたのは、シンプルに、ただただ、楽しかったからだ。
     判断力を鈍らせる薬、毒とも言える酒を、サンクレッドも、この男も、普段は意図的に避けている。交渉のテーブルに着くなどで必要ならばもちろん飲むが、その際は己を疑うようにし、自分は酔っている可能性があることを忘れないよう努める。そんな意気込みで口にする酒が旨い訳はなく、その席も楽しい訳はない。
     しかし、今夜。ラストスタンドのテラスで冴えた星々を見ながら、心底くだらない冗談を交えて、こいつとただ飲んだ酒は、びっくりするほど旨かったし、びっくりするほど楽しかったのだ。それはもう、心の声と思っていたものが、ダダ漏れだったくらいに。

    「おっと」
    「フツーに足に来てるな!?」
    「いや、すまん。大丈夫だ」
    「大丈夫な奴は俺の肩を借りてないんだよ」
    「確かに」

     貶されている。のに、愉しい。なるほどこれは大丈夫ではない。のに、それもまた、愉しい。

    「一人で飲むときは気を付けてくれよ。暁の守護者が泥酔して寝込みを襲われました、なんてことになったら、タタルとクルルのダブル説教二時間コース待ったなしだぞ」
    「お前がいるときにしか飲まんよ」
    「俺に襲われる可能性は」
    「それは考えてなかったな」

     もう寝床のあるバルデシオン分館は目の前まで来ている。あとは部屋の前までこのまま肩を貸し続けてもらい、お休みを言って別れれば、今日から明日へと切り替わる。

    「嘘だな」

     それなのに、この男は、妥協を許さなかった。

    「考えたこと、あるだろ。……お前も」

     超える力で見た訳ではない。帰路に就いてからはじめてこちらを向いた顔が、目が、声が。それぞれ僅かに紅潮し、乾き、強張ったものたちが。今の言葉は問いかけであり、未知の回答を待っていることを、はっきりと語っていた。

    「……そうだな」

     であれば、真摯に答える以外の、何ができようか。

    「あるさ」

     抱えるとか肩を貸すとか、そういう表現には少し強すぎる力が、腰を抱く腕に載る。凭れたとかふらついたとか、そういう表現には少し多すぎる体重を、彼に明け渡す。
     二人で分館のドアを開けると、オジカは今日もシーツはさらさらにしてあると言って、笑ってくれた。それに若干の申し訳なさを感じるのは、はじめてのような気がした。
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