煙草をふかす仕草が妙にこなれているように思え、無意識に凝視していると目が合った。
酔ってるんだか平常心なんだか区別の付かないいつも通りの据わった目が、何か、と言いたげにゆっくりと瞬く。
逸らすのも癪だ。視線をかち合わせたまま、奴の前に置かれた灰皿に手を伸ばす。
「…副流煙がどうのと人を散々悪者にしやがった癖、吸うのかよ、テメェも」
佐々木は返事の代わりに一つ、煙を吐き出した。悪びれもしない態度だった。
「コレですか?付き合いです」
「それだけじゃねぇだろうが」
「はぁ。まぁ、昔は吸ってましたよ。意外でもないでしょ。みんな吸ってたんだから、あの頃は」
あの頃。あの頃とはいつの事か。少し前までは、確かにそうだった。分煙だなんだと騒がれ始めたのは比較的最近のことだ。
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