空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:22 既に太陽は山の向こうへと沈み、空には昼の名残のような淡い青空とそれに影を付けるような雲の深い青が混ざり合い美しいコントラストを作り出している。
その濃淡がまるで水彩画かちぎり絵のようだなんて、ぼんやりと思いながらバイクを走らせていた空閑はようやく目的の人影をその視界の中に収めていた。
静かに舗装された道から逸れ、砂と礫と少しの雑草が生える地面にバイクを停める。そこには彼が乗るそれと同じフォルムをした一台のバイクが既に停められていた。後輪の泥除け部分に剥がれかけた校章のシールが貼られている事を確かめて、その先に積まれている消波ブロックの上に腰掛ける人影のシルエットを見上げる。
顔を確かめなくてもわかる。そこに佇んでいるのは、汐見だった。
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