「ここか」
「ああ、そーみたいだな」
オレとシオンは目の前にそびえ立つ無機質な建物を見上げた。
─入った人間が帰って来ない建物がある。
連盟を通じてうちに調査依頼が来たのはつい先日のことだった。センセとギーは他の案件に対応中で、
それが終わってから合流することになった。
「結界が張られている様子はないな」
「びっくりするくらいフツーってか、何も感じなくて逆にこえーな」
「ふ、怖いのなら俺一人で充分だが?」
「今のは比喩だろ!ってか、一人はさすがにあぶねーって」
「ふん、精々足を引っ張るなよ」
「オマエこそイキって先走るんじゃねーぞ」
入る前からこんな調子で先行き不安でしかない。いざとなったら協力するとは思うけど。
シオンが慎重に扉を押した。鍵がかかってる様子はなく、簡単に開く。
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