切なくて苦しくて暖かい感情 最近、ルフィの私を抱える体制が変わった。
前は肩に担ぐかお腹に腕を回されてたけれど、最近じゃあ正面に抱えられる運び方で照れてしまう。
そして抱える体制が変わっただけで照れを感じてしまう自分に対して戸惑いを覚える。
少し前まではこんな感情を持ち合わせていなくて、今の心地よい関係を壊したくなくて、だから未だ何もルフィには伝えられていない。
だってそうでしょ?
ルフィはきっとこの気持ちを伝えられても困ってしまう。
伝えたらこの関係も終わってしまう。
――きっと変わってしまう。
それだけは嫌だった。
ルフィの船員として誇らしく、堂々と胸を張っていられるこの関係が。
仲間達と何の懸念もなく共にいられるこの立場が。
私はこの関係が壊れてしまうことに恐れている。
大事だから。大切だから。
口には出せないけれど、愛しく思っているから。
いっその事、宝箱に大事にしまって誰にも壊されないようにしてしまいたいくらいに、それほど愛してしまっているから。
でも私達のこの関係はそれほど脆くは無いことは解っている。それどころかとてつもなく強固で、頑丈で、壊そうと思っても壊れなくて、消そうと思っても離れてくれない。
誰でもない私が経験している。
否定して、壊そうとして、逃げようとして、それでも変わらないでいてくれた。一緒に居てくれた。
でも、それでも心配なの。
私はこの関係を気に入っているし、ルフィだっておそらくそうだろう。
薄々、仲間たちが私のルフィに向ける感情に気づいている気がするけれど。
私はこの気持ちに蓋をし続けなければならない。
いつか蓋の中身が溢れようとも。
この抱いた感情が零れ出そうとも。
きっと伝えない事にも限界が来る。いっそその前にこの感情が消えてしまったらいいのに。
そんな思ってもみない事を考えている自分に嫌気が差して。
こんな気持ちを抱いていなかった頃に少しでも羨望がある事に気づいて、動揺して。
滑稽無糖な事を願っている自分に対して溜息をついて。
ねえ、ルフィ。
無意識でもいいの。
あんたの抱え方が変わったことに意味があったとしたら。
あんたの宝物を預けるのが――直すのが私だという事に何か特別な意図があるのだとしたら。
あんたが私を救い出してくれた事に何か意味を見出してくれたとしたら。
――期待しても、いいの?
鈍感で、純粋で、我儘で、キラキラとした宝石以上の何かを秘めたあんたが少しでも今までとは別の感情を私に抱き始めたことに。
――『深い絆で結ばれた仲間』とは別の感情を私に抱き始めたことに。
その感情が私と同じだってことに。
ルフィの息遣いと声がすぐ近くに聞こえて戦闘中にも関わらず安心してしまう自分がいる。
この心地良い、太陽の様に暖かい温もりにいつまでも浸かっていたいと思う自分がいる。
その事にほんの少しだけ、罪悪感を抱くの。
けど、もう少し。もう少しだけこのままでいたいのは私の我儘かしら?