6.もしも 幽助との関係において『もしも』はいくつも思い浮かぶ。もしも幽助が出会ったばかりの自分を信じなかったら。もしも幽助を手助けするというコエンマの提案を受けなかったら。もしも――。挙げているとキリがないが、最大の『もしも』は彼が魔族ではなかったとしたら、に違いない。
麗らかな春の陽気に包まれた小さな公園で、幽助が一人の男の子と遊んでいる。初対面の幽助にも物怖じせず無邪気に滑り台を下りるその子は、今年で三歳になる蔵馬の義弟の子供だ。義弟は今朝いきなり蔵馬の部屋にやってきて、自分も妻も急な仕事が入ってしまったため夕方まで息子を預かってほしいことを告げてきた。こちらが恐縮するくらい頭を下げながら。
たまたま予定のない土曜日だったし、甥っ子はそれなりに可愛いので預かること自体は構わなかったが、いざ二人きりになると時間を持て余す。近所のファミレスで悪戦苦闘しながら昼食を終えたあとは、特にしてあげられることがない。そこにたまたまやってきたのが幽助で、彼は意気揚々と甥っ子を近所の公園に連れ出した。
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