Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    とうた

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    とうた

    ☆quiet follow

    プロになった遊馬20才と海外でバリバリやってる出口さん。できてます。

    #腐向けaoas
    rottenAoas
    #出遊
    travel
    #でゆ

    甘えることを教えたのは、貴方だから 誰も来ないはずの場所に何故かその人はいて、やってきた遊馬を無言の微笑みで迎えてくれた。
     満員のホームスタジアムでノーゴール、晴天にまるで似つかわしくない惨めな敗戦。またもや首位は遠のいた。向こうのシーズンが終わってすぐに、この試合に間に合うよう飛んできてくれた彼にも不甲斐ないところを見せてしまった。
     何の数字も残せないまま八十分過ぎに下げられた自分が腹立たしくて、そんな自分を誰にも見られたくなくて、そっと群れを離れたのに、彼にはすべて見透かされている。オレもここで頭冷やしてたんだよ、と彼は笑う。
     隠し事ができない。弱いところを見られている。
     だけどさらけ出すことを初めて自分に教えたのは、他ならぬ目の前にいる彼。
     同族だから分かり合える。こんな試合のあとの悔しさや昂ぶりも、もっとやらせろと叫ぶ内心の咆哮も、全部。言葉にしなくても。
     ――さらけ出した先の快楽まで、全部。
     彼がエスコートするように右手を差し出す。
     甘え方は教えただろう? ――涼しげな瞳がそう語りかけている。
     大人になっても、プロの世界でいくつゴールを重ねても、未だに敵う気がしない相手。
     だけどその腕の中で深呼吸をしたかったのも確かで、遊馬は観念して身を預けた。
     見た目よりずっと逞しい腕に優しく抱き締められ、ぽんぽんと頭を撫でられる。
     獲物を仕留められず燻っていた獣性がようやく成りを潜めてきた。息を二、三回吸って吐く。もう少し、もう少し落ち着けば、皆の前にいつもの遊馬の顔で戻れる。切り替えるだけっすよ、となんてことない風に笑いながら、落胆している先輩方に発破をかけるのだ。
     もう少し、もう少し――懐かしいベルガモットの香りに宥められているうちに、遊馬ははたと気付く。
     自分の方はつい先程まで午後の日差しの中を走り回って、シャワーも浴びていない。汗臭いっスよと遊馬は身を捩ったが、彼は離すどころか更に抱き寄せて、犬にそうするように遊馬の髪に鼻を埋めて囁いた。
     日なたの匂いがするよ、と。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    みおみお

    DONE以前、イラストで描いたモノを、小話にしました。
    幽ちゃん曰く、蔵さんが子ども扱いしてくる!というイチャイチャ話?
    今は、甘んじてやるからな。「おいで」と柔らかな声で言われ、そのまま素直に蔵馬がいる場所へと体が吸い寄せられた。

    ✳︎ ✳︎ ✳︎

    今日も蒸すな。と思いながら垂れる汗を拭うと、じゃりっとした不快な感触。一応、玄関のチャイムを押す前にズボンの膝を叩くと、思っていた以上に細かい砂が舞った。

    日々の鍛錬。といえば聞こえはいいが、同じような趣味の奴と手合わせという遊びを楽しみ、汗に砂埃がくっついてどろっどろの状態で何も考えずに蔵馬の一人暮らしの部屋に寄れば、「とりあえず、シャワーでも浴びておいで」と回れ右の要領で浴室へと行くよう指示を受けた。
    シャワーを浴びている間に、蔵馬は…置いたままにしてある…オレの服を持ってきてくれた。脱いだままの服は、洗っておくよ、と洗濯機を回し始めるのだから、相変わらず手際が良い。「わりぃな、さんきゅっ」とシャワーの音にかき消されぬよう大きめの声で蔵馬に返事をして、オレは頭から爪先まで泡だらけの体をシャワーで洗い流した。汗も砂も落ちるとさっぱりして、気分は良い。
    2316