「……寂雷…おい、寂雷!」
遠くから獄の声が聞こえる。
ふわふわとした浮遊感の中で、その声だけがやけにツンと耳に響く。
ここは確か……
「寂雷!ほら起きろって!」
貼り付いたように重い瞼を開けると私の顔を覗き込む獄の顔がどアップで見えた。
「獄……」
「ったく、論文仕上げたいから付き合えって言ったのお前だろうが。開始早々10分で寝入るなんて問題外だぞ」
そうだ。再来週発表しなくてはいけない論文があったのだ。
始めは自力で取り掛かっていたものの、夜勤続きなこともあり自宅ではどうも睡魔に勝てない。
そこで獄の自宅にお邪魔して見張り役を頼んでいたのだが……
背もたれ付きの椅子の上でうーん、と伸びをする。
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