異常者と憧れズシッとした体の重み。滴る液体、むせ返るような匂い、歩く度にまとわりつく生暖かさ。
いつも通りの感覚にため息が出る。
すでに冷たくなり動かなくなったソレ。を抱き寄せる。柔らかくてまだ温もりがある。
なんだ。生きてたんだ
まぁもうすぐ死ぬだろうけど。
そっと顔をのぞき込んで見る。苦しそうな顔。
テレビではあんなにキラキラだったのに
血まみれで息を吐くことしか出来ない人形になってしまったみたいだ。
僕がその人と出会ったのは、先生の再現のために殺しに入った四人家族の家のテレビだった。
いつもみたいに飛び散った液体とむせ返るような匂いの中、ぼんやりと光る液晶の中、場違いに明るい笑顔が見えた。
カメラに向かう視線。きらきらした笑顔。キーボードに添えられたすらすらと奇麗に動く指。
何もかもが充実してるように見えた。
妬ましい。腹立たしい。
自分なんてどれだけ先生の作品を忠実に再現しても褒めてもらえない。感謝の一言もない。
なのにこの人はキーボードを引くだけで感謝される。求められる。
あまりにも腹立たしいかったから、テレビの液晶を叩き割った。
キラキラした雰囲気は一瞬で砂嵐に変わった。
腹立たしい、こんな気持ちは初めてだ。
あのキーボードの人。名前はなんていうんだろう。見た感じバンドだった。
音楽に触れたことがない僕にはわからない
僕は急いで携帯を取り出した。
いま人気のバンドを検索する。
何回か調べ直してヒットした。
MrsGREENAPPELというバンド。
キラキラしてる。充実してる。妬ましい。
僕は次のターゲットをMrsGREENAPPELにした。