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    月希(@tsuki359)

    @tsuki359

    成人済/夢好き(not腐)/夢絵(顔有夢主)/
    3むそアプリと8エンパで燃えに萌えました。
    イケオジと軍師が好き。

    Twitter、pixiv(https://www.pixiv.net/users/86217530)にも夢絵載せてます。
    ※🔞成人向け作品は18歳未満の方は閲覧禁止です。成人後にご覧ください
    ※パスは英字3文字です

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    荀攸→アプリ主夢
    ※荀攸視点
    1人で抱え込むアプリ主と、彼女に好意を抱いてる荀攸の話。明るくはない。

    25/9/1

    #無双夢
    #荀攸夢
    xunyuDream

    月明かりは未だ届かずふっ、と突然帳を下ろされたかのように、辺りが暗くなった。
    伏せていた顔を上げれば、今まで光があった場所――年季の入った燭台から、ゆらゆらとか細い白煙が立ち上っていた。
    長かった蝋が燃え尽きるまでの間、策を練るのに没頭していたようだ。
    もう少し戦術の細部を詰めたいが、飾り窓から差す月光が床に落とす影の具合からして、すっかり夜は更けている。これ以上長引けば、次の軍議に障る。
    どうしたものか――
    逡巡の最中、不意に懇意にしている女傭兵の顔が浮かんだ。
    彼女は今、どうしているだろう。夢の中か、はたまた夜警にでも駆り出されているか。
    逸れた思考は迷いを払い、自然、身体を突き動かした。
    己の手と闇の境界も不確かな暗い部屋を出て、煌々とした月明かりの下を行く。
    たとえ彼女が部屋にいたとて、非常時でもないこんな真夜中に訪う理由はない。
    ただ叶うなら、一目彼女の姿を見たい。一言でも彼女の声を聞きたい。そう思ってしまった。

    足音を消し廊を幾度か曲がった先――中庭の池に面した高欄に、思いがけず彼女の姿があった。
    「――傭兵殿」
    知らず口をついた呟きは、日中の暑さの余韻が残る温い夜気を伝って、彼女に届いたようだ。
    やおら振り返った彼女は「こんばんは、荀攸殿」と微笑んだ。
    控えめな笑みは夜半だからか、何かを憂いていたからなのか。尋ねようとして、
    「荀攸殿、また策を練るのに夢中で時を忘れていたんですか?」
    少しの呆れを含んだ彼女の声に、遮られた。
    彼女が意図してそうしたのかはわからないが、やはり声音にいつもの明るさが感じられない。
    「……ご明察の通りです」
    「やっぱり。戦術を考えるのもいいですけど、自分の身体の事もちゃんと労ってくださいね」
    「ええ……そうします。あなたも、ご自愛ください。何か……俺に出来ることがあれば、いくらでも手を貸します。他ならぬあなたのためなら、喜んで」
    心配のあまり、少し意気込み過ぎたか。やや早口になった自覚はあった。
    彼女は他人の事はあれこれと気にかけ世話を焼くが、自分の事は後回しにするきらいがある。そういった所が気がかりであり、もっと頼ってくれればと、もどかしさもあった。
    彼女に伝えた「一蓮托生」は何も、あの一時だけを示した言葉ではない。この先もずっと仲間として……更にもっと深く、強固な関係を結んで行きたい。
    「ありがとうございます。荀攸殿にそんなに気にかけてもらえて、嬉しいです」
    彼女は照れたように笑い、髪を耳にかける。
    よく変わる表情から一見分かりやすい様でいて、その実、彼女はのらりくらりと追求を躱し、なかなか心の内を見せてはくれない。
    短い付き合いではないというのに。
    もどかしさに突き動かされるまま、その細く白い手を取って彼女を掻き抱けば、この胸を埋め尽くす熱が伝わるだろうか――
    沸き起こった感情のうねりは、いつも通りの無表情で押し隠す。事を急いて彼女の意思を蔑ろにしてはならない。日に日に身を焦がし膨れ上がる好意は、あくまで一方的なものだ。双方向ではない。今は、まだ。
    「俺は、社交辞令は言いません。あなただからこそ、言葉を……心を尽くしたいと思うのです」
    失礼。一言断りを入れ、彼女の頬に触れる。
    彼女はびくりと肩を揺らすこともなければ、身体を引き逃げるような素振りもない。
    信頼――されているのだろう。それ自体は喜ばしいが、男として意識されていないのは考え物だ。
    「……荀攸殿?」
    「夏とは言え、長い事夜風に晒されていては身体に障ります。眠れないのであれば、一献付き合います」
    「ふふ。魅力的なお誘いですけど、今日は辞めておきます。また今度、一緒に飲みましょう」
    春の日差しの如く穏やかに微笑んだ彼女は、腰を下ろしていた高欄からひらりと飛び降りると、足取り軽く自室へ帰って行く。
    揺れる髪と華奢な背を、ただただ視線で追う。
    彼女の意識を囚えていたものは、多少なりとも和らいだのだろうか。そうであれば良いが……。
    気にかかるあまり不躾に見つめすぎたのか、扉を開けた彼女はこちらを見て苦笑気味に「おやすみなさい」と手を振った。
    「おやすみなさい。……良い夢を」
    小さな音と共に扉が閉まり、彼女の足音が遠ざかって行く。
    自分も部屋へ戻らなければ。気配に敏感な彼女の事だ、このままここに居ては眠りを妨げてしまう。
    しかし頭では理解していても、身体はなかなか動こうとしない。心とは難儀なものだ。
    ついさっきまで彼女がいた高欄に手をつき、短く息を吐きながら夜空を仰ぐ。
    いつか彼女の許しを得られたら、秘匿されている心の奥底に触れたい。彼女が何を憂い、何を怖れ、何を思っているのか知りたい。
    無理に暴くのではなく、彼女自身の口から抱えているものを打ち明けられたい。
    そうして、何人も介在出来ない深い繋がりを築きたい。
    「いつか、必ず――」
    彼女からの好意を、勝ち得てみせる。
    決意に拳を握り、月影に背を向けて踵を返した。


    *終わり*
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