遠距離「つかさ。」
名前を呼ばれて振り返ると、ぎゅっと力強く愛しい人に抱きしめられた。
「レオさん?」
「おれ、明日からしばらくフィレンツェで仕事になったんだ。」
そう言った声は少し申し訳なさそうで、顔を覗き込む。
「随分と急ですね?次は半年後って言ってませんでしたっけ?」
「その予定だったんだけど、相手側がその時期忙しいみたいなんだよ。たぶん向こうに行ったら一月はいることになるだろうし…。」
初めから分かっていたことだが、こうして度々訪れる遠距離に寂しさが隠せない。
「そうなんですね…。」
「そんなに悲しい顔しないで?すぐに戻ってくるから。」
「わかっています…仕事ですし。でも、少し寂しいと思ってしまって。」
胸に顔を埋めると、優しく頭を撫でてくれる。これでは余計に寂しくなってしまうというのに、どうしても離れ難くて、撫でる手の心地良さに身を委ねてしまいそうになる。
2836