まじないひとつ「好きだ。」
君は大きく目を見開く、だがきっと、それよりも私の方が目を見開いていた事だろう。
たった三文字の言葉、一体発したのは誰か。
君と私しか居ないこの空間で誰が?その声色は確かに己のもので…つまりそれがどういう意味か…事実を認識するまでに数秒。
困惑と思考の停止を幾度と繰り返す中で、先に口を開いたのは君の方だった。
「……な、なんだよいきなり!ビックリしたじゃねぇか!そりゃ俺様だってお前の事は気に入ってるが!!!」
明日は槍でも降ったりしてな!?急にどうしたんだよ?ん?
そんな風に、きっと気遣いからか茶化して応える君の姿を私はただ呆然と見上げるだけだった。
思えばこの三文字が、我々にとっての大きな分岐点になってしまっていたのかもしれない。
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