ヨリを戻したい風信「やり直したい」
慕情のしなやかな手をキュッと握り射抜かれそうなほど熱っぽい目で見つめられる。
その言葉と熱に浮かされそうで男に身を委ねたい衝動を抑え込みながら風信を睨み、離せと低くうめいた。
男はそういうも強く握りしめたその手を話そうとはせず、何か言いたいようだが口を開けては閉めてを繰り返している。
この男は何を考えている?今更やり直す?私たちの関係を?
そもそもコイツはまだ私のことを好いているということなのか…?六〇〇年以上経つというのに…
慕情は驚きと昂りで眩暈がするような感覚を覚えた。
(風信とやり直す?)
もう一度自分の中でその言葉が反復された、否そんなものは無理だ。人というものは……裏切り裏切られる、それは神であろうが鬼であろうが変わらない。
だから信じない。それは人を敬愛する人や同僚であり最愛の人を裏切って蹴落としてのし上がってきた自分だから一番わかることだ。
周りがどうかは知らないが自分はそうなのだと慕情は思う。復縁などあり得ない、これからも私の在り方は変わらない。それが正しいのだ、そう自分に言い聞かせる。
何も言わない風信に苛立ち、握られたその手を力強く振り払った
「触るな、馬鹿が移る。お前とやり直す気など一ミリも無い」そう言って立ち上がり去ろうとすると、腕が掴まれ大きな力で向いてる方向と反対側に引き戻される。
風信の腕の中に抱きしめられたのだ。
「〜〜っ!何をする?!」
もう泣き出して大声で叫びたい衝動に支配された。胸が早鐘のように鳴りうるさい、顔の熱もあり得ないほど熱い。ドタバタとその腕から逃れようとするがその手はがっしりと慕情の背中に手を回し抑え込んでいる。
「好きなんだ」
ひどく苦しそうな掠れた声が慕情の耳元を犯した、その顔が首元を伝い肩口に顔をうずくめる。
ドクン、と胸が鳴る。頭が痺れて肩口にあるその甘い重みから熱が広がっていき今にも沸騰しそうなほどでどんどん冷静な判断ができなっていく不安とそれを上回る期待でもうどうにかなってしまいたい。
激しく鳴る自身の高鳴りと一緒に、背中から自分とは調子の異なった心音が肌を伝って聴こえてくる
慕情より少しゆっくりで、でも力強いその音。