休暇も半分過ぎ、ハロウィンの夜を迎えた。ベンジーは包帯を巻いて、イーサンはマントを羽織って仮装をし、訪ねてくる子供たちにお菓子を配った。
元気いっぱいの子どもたちが去っていく頃には二人ともだいぶ疲れて、ソファに身体を預けながら軽くワインを煽った。
「はぁー……美味い!」
「お疲れ。今年もベンジーが用意したお菓子は子どもに大人気だったね」
「やっぱあげるんなら楽しんでもらいたいしな」
イーサンが用意したつまみも食べながら、やりきったとベンジーは身体を伸ばす。しかし、まだやり残したことが一つあった。
「イーサン! トリック・オア・トリート!」
ベンジーはソファの端に隠しておいた小さなかごを取り出し、イーサンに突き出す。用意した菓子は配りきったので今は手ぶらのはずだ。今年こそイーサンにいたずらを仕掛ける、とベンジーは意気込んでいた。
「ベンジー……」
「菓子はないのか? イーサン」
いつもならすぐ菓子を取り出すイーサンが何もしないので、期待が膨らむ。表情にもそれが表れていて目を輝かせて自分を見るベンジーに、イーサンはにっこりと笑みを返した。
「はい、どうぞ」
テーブルの下に手を伸ばしたイーサンは、袋を取り出すとかごの中にどっさりと菓子を入れる。いっぱいになったかごを見てベンジーは一気に肩を落とす。嬉しいけれど嬉しくない。まさにそんな気持ちだ。
「残念だったね。でもほら、ベンジーの好きなメーカーのを集めたんだよ。食べてみて」
「あ……本当だ。えっ、しかも激レアの新作もあるじゃん!」
「ベンジーと同じで、楽しんでもらいたいからね」
よくよく見るとベンジーが普段食べているものから滅多に手に入らない高級菓子までよりどりみどりだ。とりあえず一つ選んで食べると、オランジェショコラで甘さと少しの苦味が口に広がる。
「うっまぁ……」
いたずらを仕掛けるのは失敗したが、これはこれで悪くない。そんな風に気持ちを切り替えてベンジーはすすめられるまま菓子を食べた。ワインもすすみ、疲れた身体に甘味とアルコールが沁みる。
「さぁ、今度は僕の番だ」
菓子も食べ切り、だいぶ酔いがまわってきたところでイーサンが切り出した。
「トリック・オア・トリート?」
「あ……えっとー」
たまに見せるいたずらっ子のような笑顔のイーサンに、何も渡せるものがなくて視線を逸らす。
「じゃあ、いたずら決定でいいかな」
「……ずるいぞ」
「作戦勝ちだよ」
イーサンは可愛くむくれたベンジーを抱き寄せると、まわした手で脇腹をくすぐる。小さく漏れる笑い声と軽く身をよじる様子に、さらに服の中に手を入れてくすぐると反応が明らかに変わった。
「ちょ、イーサンッ」
「なに? いたずらはまだ終わってないよ?」
「んっ……はぁ、あっ」
ヘソの周りや足のつけ根、首筋や脇の下をくすぐるとベンジーの息はすぐに上がる。胸や股間の辺りの布地がやや膨らんで窮屈そうだ。
「はい、終了。いたずらはまた来年」
笑い声が完全に艶っぽい声に変わったところでイーサンは手を止めた。完全に身を任せていたベンジーは唐突な終わりにポカンとしている。
「それとも、もっとイタズラしてほしい?」
先ほどまでの雰囲気と違い、明確な欲を露わにしたイーサンの声と表情にベンジーの身体は一気に熱くなった。腹の奥が疼き、皮膚に擦れる布の感覚がとても敏感になる。
「もっと……して、ほしい」
「ベンジーが望むなら、たくさんしてあげる」
可愛らしくねだるベンジーにキスの雨を降らし、服を脱がしていく。これから長い長いいたずらの始まりだ。