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    nekonekomfmf

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    心理描写のみなのでまだまだだけども

    無題こちらをただただ見る目、何の悪意も敵意もない(警戒はあるようだけど)興味を寄せるような色でじぃっと数分も見られれば、いくら友人でもある少女であっても、どうしてか問うだろう。少女は目を一度まばたきして一呼吸分おいて、まれそうな目、淀んだ目と散々な言われようだったこの目を綺麗と言われるのは珍しくて目を丸くすると、きょとんとした顔で更に言われた。
    ─何度見ても色が濁らないから
    それを何と返したかは忘れてしまったが、おちびちゃんですら絶句していたその発言は当然ながら、俺の記憶に色濃く残っている。何度目かの少女の討伐任務に着いていった、よく晴れた日の話だ。

    お嬢ちゃんの目は誰が見ても美しい。鼈甲を透かしたような色合いは一部の狂った好事家が欲しがるだろうと邪推してしまうくらいには。ころころと表情を変える少女らしく、それがもっとも色を濃くするのは感情が表に出てきてしまっているときでとても好ましい。臨時収入があった時、予定外の出費が重なった時、美味しい料理を目にして食べている時、そして闘ってる時─特にこのときは透明度も上がっていて宝石のようだ、と内心思うくらい─表情と共に色を変える目は飽きることなく、もっとと手を伸ばしたくなるほど。当然ながら旅人である少女からの答えはつれないものだ、残念に思うが、誰もお嬢ちゃんを捕まえれないのだ。この子は旅人なのだから。背に伝う汗はじっとりと服を濡らしていくが、日向の下にいる少女はパチャパチャと波打ち際を軽やかに走っては貝殻を拾っている。我ながら役に立ってないと自覚はあった。
    「タルタリヤ」
    思ったより近くで声が聴こえた。
    「……すまない、ぼおっとしていたよ」
    「熱射病かな、顔も真っ赤だよ」
    「そうかも、俺が言ったのにすまないね」
    「体調は万全じゃないと駄目だって言ってたのにね、まあこの日光は苦しいよね」
    ぽつぽつと記憶に残らない会話を続けていく。多分こんなことを言っていただろう記憶。幼い頃母と父に手を引かれたように、だけどもとても小さくて華奢な手が身体を支えて日陰へと連れていってくれた。柔らかい光の色、雪国の、故郷を思わせる光に、疲れていた身体が休むようにと命令してくる。
    「ーーーーーーーー!!」
    何も聞き取れなかったけど、少しだけ焦ったような素振りと目の色に瞼に力を入れた。違う色、温度の違う美しい色。携帯していた彼女のボトルを口に突っ込まれて噎せたがなるほど、身体は水を必要としていたらしい。その間なにかをしているようだったが思い出せない。気づけば北国銀行で服を寛がされて、息のかかった医師から一週間の休養を告げられて、霜氷花の花蕊を入れられた袋が身体のあちこちにつけられていて、初動がよかったとその口から聞けて、まず思ったのがあの子が倒れなくてよかった、ということだった。



    「相棒?」
    貴方の言う"相棒"はどういうものだったのか、よくわからなかった。依頼に無理矢理ついてきたり、モラ片手に手合わせしに来たり、暇だからと何もなくてもどこか楽しそうに言うその言葉は、気づけば心の一部を占有していた。相棒と呼ぶのに扱いはいつまでも"お嬢ちゃん"だった気がしなくもない、手合わせや戦闘になると違うけども。彼が派遣されていた璃月にいけば食事に誘われ、塵歌壺の調度品とは別に生活用品を用意していたのも、その格好で散策するのはお勧めできないと外套を贈られたりと、枠内に入れた人間には貢ぎ癖でもあるのか、それとも"お兄ちゃん"だからか、妙に過保護で何度か口論になったこともある。それがあたり前になってたと気づいて、失敗したと思った。その度にじとっと恨みがましく見つめてると、にんまりした顔を向けられるので慣れざるを得なかった。
    そんなときだ、ふっと目を見るようになったのは。目は一番感情を露にする、だからいつも目を合わせないように努めていた。でもあんまりにも当然のように自分の領域を拡げて来ようとしてくるのだ、釘を刺す為に見て、また失敗してた。彼は"お兄ちゃん"なのに"弟"でもあったのだ。私だってお姉ちゃんぽく振る舞いたいという気持ちがあった、あってしまったからこそ嵌まってしまった。テウセルのおねだり上手は間違えなくタルタリヤの影響だろう。そういう小さなやり取りで目を見るようになってから、だんだんと他のときにも見てしまうようになって、言ってしまった、そう、失言。タルタリヤと関わるとうっかりしてしまう。思っていたことをどんどん洩らしてしまって、だんまりになってしまった彼をみて慌てて誤魔化したが、本音は漏れていないだろうか。自分の事なのに上手くコントロール出来なくて、その後はずっとそわそわしてしまったのを覚えている。ただただ不思議そうにしていた彼はあどけなくて、可愛らしいと思ってしまった私はもう戻れないのだろう。
    タルタリヤについて、知ってることはいくつもある。
    面倒見が良いこと、身内には甘いこと、戦うことが好きだということ、そして殊更、好奇心が強いのだろうと、それなりに長く共に旅をして思った。小さい子供がよくするなぜなに期に近いようで、何にでも興味を示す姿は旅をしていると面倒に巻き込まれることが大半だったが、どれも色褪せることもなく残っている。あの無垢と言うには些かイビツで歪んでいるけども何処までも純粋な生き方で、旅することが羨ましいと彼は言ったけど、彼のあり方は何よりも自由で旅人のようだったと思う。見上げるしかなかったが、彼の目はいつも生きるための力があったから。
    「おーい、無視は酷いんじゃないか」
    「…ごめん」
    「体調でも悪いのかい?」
    「ちょっと考え事してただけ」
    「へえ…」
    心なしかいつもより近い位置でこちらを見てくる。
    「タルタリヤ?」
    「相棒、こういう時は目を見て話すものじゃないのかい?」
    「首が痛くなるからやだ」
    影が完全にこちらを覆ってくるように近づかれる。何故だか近い、と言う気にもならなかった。
    「こっちをむいて」
    「……何?」
    強くなる語気に渋々顎を上げた。やっぱり首が痛いなと思うと同時に、逆光で目の色が見えにくいのを残念に思った。指の背で頬をなぞられるのを眉をしかめて耐えていると、すぅっと離れていく。
    「何?」
    「気になる?」
    線を引かれた、と悟った。同時によかったとも、やはりなとも。何も知らないわけではないのだ、知らなかったら大変な事になるって今までで学んでいるから。それでも惜しく思うのは、それなりに懐に入れてしまったからだろう。ため息を吐くのをやめて、目を閉じて顔を背けた。
    「…くすぐったいからやめて欲しい」
    「そう…残念だね」
    「何が?」
    「…君のそういうところがだよ」
    至極残念そうに言うのを無性に振り向きたくなって、止められなかった。
    「公子」
    「どうかしたかい?」
    「…おなかすいた」
    言い訳1つ咄嗟に差し出したが、夕焼けにぼかされて目の色を見られることはなかったろう。笑いながら何が食べたい、と聞いてくる彼に奢り?と言って、いつもの旅人とその同行者に戻るコレは果たして何度目に終われるのだろうか。"公子"でも"タルタリヤ"でも"誰かの兄"でもないあの顔は私には猛毒のように感じられた。何度目かに見たあの顔は直ぐ様消えてしまったけど、ひょっとしたら私もそんな顔をしてるのかもしれないし、そうではないのかもしれない。ただ、これ以上は駄目だというラインはついぞ越えることなく、いつもと同じように旅立った。いつもと同じでないなのは後ろ髪を引かれるような思いでも、また逢えたらいいなという思いでもなく、ただただ寂しいという感情がいつまでも続くということだった。


    いつかのあの日と似ているような砂浜で、顔を真っ赤にした彼をふと思い出した。あの日は確か貝殻と食料を探していたんだっけ。離れた位置にいる兄も心なしか暑そうだ。たらりと汗が首筋を流れていくだけの、些細なことなのに反応してしまう。憎たらしいほど青い空の下、私に日陰になるように立つ貴方はもういない。そう思ったら、忘れかけてた寂しさすら色濃くなっていく。
    遠くから兄が呼ぶ声が聴こえてくる、それでもその場を動きたくなくて、動きたくて、何処にもあの青がいないことなんて悔しくて泣いてなんかやらないと、脳内で憎らしげに笑う彼に意地をはった。


    ─もし、万が一また会うことが出来たなら、貴方と同じ存在ではなく、貴方自身と、だけども。
    大切なものは大切なままでいいとあたり前のことを言うように難しい事をする貴方へ、
    私の終わりまでの道のりが貴方が楽しめるような冒険譚になればいいなと、切に願う。
    もしかしたら、ではあるけども、
    「嫌いでは決してなかったよ」

    何処かで鯨が跳ねる気配がした。


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    nekonekomfmf

    REHABILI心理描写のみなのでまだまだだけども
    無題こちらをただただ見る目、何の悪意も敵意もない(警戒はあるようだけど)興味を寄せるような色でじぃっと数分も見られれば、いくら友人でもある少女であっても、どうしてか問うだろう。少女は目を一度まばたきして一呼吸分おいて、まれそうな目、淀んだ目と散々な言われようだったこの目を綺麗と言われるのは珍しくて目を丸くすると、きょとんとした顔で更に言われた。
    ─何度見ても色が濁らないから
    それを何と返したかは忘れてしまったが、おちびちゃんですら絶句していたその発言は当然ながら、俺の記憶に色濃く残っている。何度目かの少女の討伐任務に着いていった、よく晴れた日の話だ。

    お嬢ちゃんの目は誰が見ても美しい。鼈甲を透かしたような色合いは一部の狂った好事家が欲しがるだろうと邪推してしまうくらいには。ころころと表情を変える少女らしく、それがもっとも色を濃くするのは感情が表に出てきてしまっているときでとても好ましい。臨時収入があった時、予定外の出費が重なった時、美味しい料理を目にして食べている時、そして闘ってる時─特にこのときは透明度も上がっていて宝石のようだ、と内心思うくらい─表情と共に色を変える目は飽きることなく、もっとと手を伸ばしたくなるほど。当然ながら旅人である少女からの答えはつれないものだ、残念に思うが、誰もお嬢ちゃんを捕まえれないのだ。この子は旅人なのだから。背に伝う汗はじっとりと服を濡らしていくが、日向の下にいる少女はパチャパチャと波打ち際を軽やかに走っては貝殻を拾っている。我ながら役に立ってないと自覚はあった。
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    nekonekomfmf

    REHABILIその内完成までもっていけたらいいなっていうSS
    無題目が綺麗と言われたのは初めてだった。世辞を抜けば、家族以外からだと吸い込まれそうな目、淀んだ目と散々な言われようだったこの目を綺麗と言われるのは珍しくて目を丸くすると、きょとんとした顔で言われた。
    ─何度見ても色が濁らないから
    それを何と返したかは忘れてしまったが、おちびちゃんですら絶句していたその発言は当然ながら、俺の記憶に色濃く残っている。
    反対にお嬢ちゃんの目は誰が見ても美しい。一部の狂った好事家が欲しがるだろうと邪推してしまうくらいに透明度が高いのに色も濃い。それがもっとも色を濃くするのは感情が表に出てきてしまっているときでわかりやすく、とても好ましい。臨時収入があった時、予定外の出費が重なった時、美味しい料理を目にして食べている時、そして闘ってる時─特にこのときは透明度も上がっていて宝石のようだ、と内心思うくらい、俺にとっては珍しく物欲も込みで手が伸びてしまう。当然お嬢ちゃんが生きていて、闘える状態である事が条件ではあるけども。何度もみたいしその状況に飛び込みたいが、そう上手く行くのは少しだけ。宝石のような煌めきが手からすり抜けていくのは、寂しくもあるが誰もお嬢ちゃんを捕まえれないのだ。この子は旅人なのだから。
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