そして囚われる 視界の端にふと見慣れた色の外套を見付けた。夕暮れ時とはいえ、まだ人手もそこそこある街中で、あの男の姿をすぐに見付けることが出来たのは、触れた者しか見ることの出来ない傷の影響だ。
周囲の気配を察することができるので、ごった返しているような場所でなければ誰かとぶつかるような無様は晒さずに済んでいる。それでも視界の悪くなってきた街中で、その姿を見付けることが出来たのは自分でも少し意外だった。気配を消すことに長けているあの男が本気になれば、きっと人混みに紛れてしまうなど造作も無い。だからこそ、まるで見付けられることを望んでいるような男の行動に好奇心を刺激されて、カインは深緑の外套の消えた路地へと足を向けた。
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