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    学園の王子様💙と恋を知らない💜♀のクリスマス話。
    Twitterで書いてたネタの続きです。

    #Ikeshu

    王子様と過ごすクリスマス「闇ノさん!」
     最近、よく聞くようになった声が遠くから僕の名を呼ぶ。声の方に振り向くと、周りにきらきらな星を纏っているのかという程輝いた笑顔を僕に向け、小走りで近づいてくる男子生徒が一人。隣のクラスの王子様、アイク・イーヴランドくんだ。僕の隣まで来れば軽く呼吸を整えて一緒に歩く。
    「おはよう、闇ノさん。突然なんだけどさ、日曜日って暇?」
    「日曜日? 空いてると思うけど」
    「よかったらさ、出かけない? チケット貰ったんだ」
     これなんだけど、と渡されたのは週末に開催されてる動物と触れ合えるイベントのチケットだった。犬や猫はもちろん、ウシやウサギ、ウマといった普段見ることしか出来ないような動物とも触れ合えるというものだった。
    「動物、好きだったでしょ? …どうかな?」
    「…うん、行きたい。みんなで行くんだよね、楽しみ」
     あー…と声を漏らして少しだけ目線を泳がせる彼。なにか僕は変な事を言っただろうか? 急に歯切れが悪くなった彼を不思議そうに見ているとばつの悪そうな表情浮かべて口を開く。
    「…チケット、二枚しかないんだ。だから、その…、君と二人で行きたいんだけど…、だめかな? …あ! そりゃ、もちろん! 友達! 友達としてだよ!? 君の嫌がることは何もしない!」
     あわあわと手を前に出して振って、何もしないからと何度も否定する。別にそこまで疑っている訳ではないし、今までの行動から心配していないんだけどな。まず僕は何も言ってないんだけど、こうやっていろんな表情見せてくれる彼は面白くて、自然と笑みが出る。
    「楽しみだね、日曜日」
    「…! ありがとう!」
     
     ⭐︎
     
     なんとなく、彼と二人で出かける事を自分の中に閉じ込めておく事ができなくて、同じクラスの友人の浮奇に彼と遊びに行く事を報告した。いつもみたいにパーカーとジーパンで行くつもりじゃないよね? と睨まれ、どうして報告したんだろうと後悔したのが昨日の話。学校終わり、浮奇にショッピングモールを連れ回されて服を見繕ってもらった。動物と触れ合うんだから動きやすい格好がいいんじゃないかと抵抗はした。
    「は? 王子様と出かけるんでしょ? そんな格好、絶対に許さないから」
     その時浮奇の顔が恐ろしくてそれ以上何も言えなかった。抵抗した僕が馬鹿だったと思う。大人しく買った服を身に纏った。白の大きめニットに膝丈のベルト付きチェックのスカート。浮奇はミニスカを推してきたけどここは譲れなかった。流石にそれは勘弁して欲しい、僕が着ていいもんじゃないでしょ。そのかわりにスニーカーじゃなくて、黒のショートブーツを履くことで決着がついた。普段、踵のある靴なんて履かないからちゃんと歩けるか不安なんだけどな。こんな格好じゃ寒さが不安だからショート丈のコートを。これで完成、という訳ではなく浮奇の家に寄って化粧を施してもらう。する必要ないんじゃない? 変わらないよという言葉は飲み込んだ。もう僕は失敗したくないので。
     
     ⭐︎
     
     まずい、本当に。何故か浮奇が僕以上に張りきっちゃって、予定してた時間よりも随分遅くなってしまった。一〇分前ぐらいに着く予定だったけど、完全に遅刻で急いで連絡を送る。〝遅くなる、ごめん〟と短い文章を送ると”大丈夫だよ。怪我しないように気をつけて来てね”と優しい言葉で返された。尚更罪悪感が強くなり、慣れない靴でできる限り早く着くように走った。
     
     待ち合わせ場所につけば、彼が携帯を見ながら立っているのが見える。やはり王子様と言われるだけはある、ただ画面を見詰めているだけなのになんだか様になっていた。足を止めてその姿をじっと見ていたけどハッと我に帰る。待ち合わせ! 遅刻している! 慌てて僕は彼の方へと足をすすめた。
     
    「イーヴランドくん!」
     少し大きな声で彼の名前を呼ぶとすぐさま画面から顔を上げて僕のことを探す。僕を見つけるとぱっと明るい表情を向けて小さく手を振った。
    「闇ノさん…っ」
     眩しすぎる笑顔に一瞬目が眩む。僕だから耐えれたけど、こんな笑顔浴びたら同じクラスの女子たちはひとたまりもないよ。急いでいたのと慣れない靴で走ったせいか、後もう少し彼の元に着くというところでつまづいてしまった。
    「うわ、」
    「危ない!」
     前に倒れそうになったところを彼が受け止める。僕は彼の腕の中にダイブしてしまい、申し訳なさと何もないところで転びかけた恥ずかしさでいっぱいになり、すぐに身体を離して謝罪する。
    「ご、ごめん…、あんまり慣れてなくて…」
    「怪我はない? 大丈夫」
    「大丈夫だよ」
     恥ずかしくて下を向いていたところ、心配そうに顔を覗き込んでくる。あまりにも近い距離で顔を逸らしたくなる。ただでさえ、今日の僕の顔はあんまり見られたくないのに。
    「あ、れ…? やみ、のさん? なんか、今日…、違う?」
    「あー、化粧してもらったんだけど…。そのせいで遅刻しちゃって。…あんまり似合ってないよね?」
    「そんなことないよ! とっても可愛い! 今日の服装といい化粧といい凄い似合ってるよ。本当に、…可愛い。ありがとう」
     何か呟いていた気がするが、その声はあまりにも小さくて僕の耳まで届いていなかった。寒さからか頬は赤くなっていて、長いこと待たせてしまったなと罪悪感が募る。待たせたはずなのに、彼は幸せそうな表情を浮かべて僕を見詰めていた。それにしてもありがとう? なんで? 僕はどう返したらいいかわからず、一応どういたしましてと答えておいた。
     
     じゃあ行こうと声をかけて会場へと向かおうとしたが彼はその場から動かず、目線を下げて何かを考えるようにじっと顎に手を添えていた。ようやく視線が上がれば、少し言いにくそうに口を開けては閉じる。
    「あー、えっと、闇ノさん…」
    「どうしたの?」
    「慣れてない靴なんだよね? また転けたら危ないから、…そのっ、手を、繋ぎませんか…? 危ないからっ! せっかく可愛い格好してるから!」
     目を瞑って僕に左手を差し出してくる。差し出している手が少し震えてるのに気付き、それがなんだかおかしくって思わず笑みが溢れてしまった。僕は笑いながら両手で彼の手を握りしめた。
    「んはは、お願いします」
    「…っ、はい!」
     へにゃりと頬を緩めて僕の手を握り返した。彼の笑顔が眩しくて、こんな風に笑うこともあるんだと思いながら目を細める。また新たな表情を見れた気がするよ。
     
     ⭐︎
     
    「か、可愛い~っ!」
     会場に足を踏み入れば、沢山の可愛い動物たちが目に入り思わず声を漏らしてしまう。小動物から産業動物、哺乳類だけじゃなく爬虫類まで勢揃い。可愛い…、幸せ空間すぎるよ。完全に緩みきった頬を手で支えていたら一匹のゴールデンレトリーバーが寄って来た。
    「触っていい?」
     目線を揃えるようにしゃがんで話しかければ、いいよと言うようにワン! と吠えて答えてくれる。ありがとうと頭を撫でてみるとブンブンと尻尾を大きく振っている。あ~~っ! とあまりにも可愛くて、言葉になりきれない声でわしゃわしゃと頭を撫でて可愛がった。少し離れて僕の様子を伺っていた彼がコートのポケットから携帯を取り出して話しかける。
    「ふふ、一緒に写真撮ってあげようか?」
    「いいの!? ねぇ、君。一緒に写真撮ってくれない?」
     こんな事言っても伝わらないよね、と思っているとワンッ! と先程と同じように返事する。よかった、伝わったんだ! と笑っていると僕の方に顔を近づけて唇をぺろぺろと舐めてきた。
    「うわ、ん、へへ…、ダメだよぉ」
     写真を撮るために、少し離れた場所にいた彼がズカズカと大きな歩幅で近付いて来て僕の隣にしゃがみ込んだ。眉間に皺を寄せて僕の肩を掴んで真っ直ぐ見詰めてくる。
    「やっぱ写真撮るの他の子にしない?」
    「え、この子と撮りたい」
     僕の言葉を聞くと彼はがっくりと項垂れる。はぁと大きな溜息をつき、唸りながら犬の方を睨み付けて再び写真を撮るために少し離れていった。一体何があったんだ?
     
     カシャっと何枚かシャッターを切った音が聞こえ、確認のために彼は画面に視線を落とした。犬にお礼を言うと嬉しそうに吠えてこの場を立ち去っていった。なんて聞き分けのいい子なんだろうと思いながらあの子が見えなくなるまで手を振っていた。
     写真をとってからじっと携帯画面を見詰めて動かない彼。写真、上手く撮れなかたったんだろうか? それそう言ってくれればいいんだけど。どうしたんだろうと彼に近付いて声をかけた。
    「イーヴランドくん?」
    「はいっ!?」
     僕は声を掛ければ飛び跳ねて、携帯を身体の後ろに隠した。あまりにも不自然な動きに、僕は不思議に思い首を傾げる。
    「写真、撮れなかった?」
    「い、いや? 撮れたよ、撮れた。あと、後で送ります」
    「うん…?」
     視線を左右に移動させて携帯をポケットの中にしまい込む。写真、見たかったのに。残念。…あ、写真で思い出した。出かける前、浮奇に強く言われていた事をすっかり忘れていたのだった。
    「そうだった。ねぇ、一緒に写真撮って欲しい」
    「いいよ。どの動物がいい? まだ触ってないのはどの子だろう」
    「あ、違う違う。君と」
    「…僕と?」
    「うん、今日の記念に」
     携帯を取り出してカメラアプリを起動する。浮奇に今日の成果を連絡するように、出かける前に言われていた。そのせいで遅刻したんだから浮奇も責任とって謝ってほしい。
     いつもは周りの友達が写真を撮ってくれるからこういう自撮りはあんまり得意ではない。というか今日生まれて初めて写真を撮るので、どのように携帯を持ったらいいのかも分からず何度も携帯を持ち替えて写真を撮ろうとチャレンジする。しかし上手くいくはずがない。見切れるわ、ブレるわ、焦点あわないわ…。うんうん唸りながら携帯を見詰めていたら彼が僕の携帯を持った。
    「…ごめんね、ちょっとだけ我慢して」
     そういうと彼は、僕の手に重ねたまま携帯を上げて位置を固定する。それと同時に僕の腰に手を添えて自分の方に引き寄せた。僕の身体は彼の胸の中にすっぽりおさまって、実際にはすぐに手を離されたが周りから見れば抱きしめられているように見える。彼が僕の方に少し首を傾げたせいか、学校の女の子たちが綺麗だという顔がすぐ近くに来た。たしかに綺麗だよなと思うと、どうしてだか自分の顔に熱が集まってきた気がする。さらに手汗までかいて余計に手が震えてきたが、彼が支えてくれてるおかげでなんとか綺麗に画角におさまってシャッターを押すことができた。撮れた写真を二人で確認し合う。顔を覗き込んで綺麗に撮れたねと優しい笑みを向けられると、きゅっと僕の心臓を誰かに掴まれたような気がした。僕は急にどうしたんだろう。
     
     ⭐︎
     
    「イーヴランドくん、今日はありがとう。凄く楽しかった」
    「こちらこそ、一緒に出かけれてよかったよ」
     時間いっぱいまで動物に触れ合っていると、気が付けばいい時間だった。遅くなると家族が心配するから会場を後にした。最寄りの駅に向かっていると、暗い道の中で一際光が輝いている場所があった。その光の周りには友達や家族、恋人とたくさんの人が集まり、みんなその綺麗な光を見て笑顔を浮かべていた。
    「…あ、今日クリスマスなんだ」
     その光の正体は大きなクリスマスツリーに飾られた電飾だった。チカチカと色を変えて光る姿を見て、今日が何日だったかを思い出した。ぽつりと声を漏らすと隣にいた彼は歩みを止めた。どうしたんだと彼の方を見てみると、とても緊張した様子で見上げていて、大きく息を吐くと覚悟を決めたように身体を向けた。
    「メリークリスマス。これは僕から君に」
     彼は鞄の中から一つの綺麗にラッピングされた袋を取り出して僕に差し出した。それを受け取れば彼は、“開けて“とリボンの部分を指差して笑う。紫色のリボンを引っ張って開いた袋の中身を確認すると、中には紫色で首周りに青い首飾りがついたペンギンのぬいぐるみだった。
    「なんかそれ見てたらさ、闇ノさんみたいだなって思ってさ。気付いてたら買ってた」
     このぬいぐるみが? そんなに僕に似てるのかな? まぁ、確かに前髪の部分を見て、みんなペンギンだ! だなんていうけれど。改めて、僕はペンギンを見る。僕はこんなにつぶらな瞳をしていないし、こんなに笑顔が可愛い表情浮かべてないと思うんだけどな。じっとペンギンを掴み見詰めていると、彼の長い指が僕の手に重なった。目線を上げて彼を見ると、目を細めて微笑んで人差し指でペンギンの首飾りに指を通し、器用に外した。
    「これ、シュシュにもなってるんだ。闇ノさん、たまに髪の毛結うから調度いいかなって」
     僕の首に腕を回して髪を取れば、慣れた手つきで髪をシュシュで纏めた。耳元で音が鳴ったから気付いたが、シュシュには小さなアクセサリーがついていたらしい。手で触ってみれば小さなバナナ型のチャームがついているっぽい。なるほど、これが僕みたいだったんだ。
    「似合ってるよ、凄く」
    「…ありがとう?」
    「可愛い、闇ノさん」
     寒い空の下で頬を赤らめた彼が慈しみに溢れた眼差しでこちらを見るから、僕はこの視線が慣れずに目を逸らしてしまった。たまに向けるこの視線が僕の心臓を煩くするから。
    「っていうか、僕なんの準備もしてないよ」
     つけてもらったシュシュに触れているとふと思い出した。これは彼から僕にと渡した〝クリスマスプレゼント〟。そういう事に疎くて何も気にしていなかったが、貰ったからには自分も返さなければいけない。貰うだけでは僕の気持ちがおさまらない。何もいらないよ、って言いそうな彼をじっと見詰めて、許さないよと目線で訴える。意味が理解した彼は、あーっと頬を掻きながら目線を斜め上に逸らすも、咳払いをして目線を合わせる。
    「じゃあさ、一個叶えて欲しい事があるんだ」
    「…僕にできる事なら」
    「名前で呼んで。イーヴランドくんや君だと距離があるから」
     そんな事でいいんだろうか。簡単な事だけど、本当にこれがプレゼントになるんだろうか。…まぁでも、彼がそういうならプレゼントになるんだろう。ぐるぐる悩んでも仕方がない。
    「アイク、くん?」
    「できたら呼び捨てで…」
    「アイク」
     目を見て彼の名を呼ぶと、僕から顔を逸らしてはぁ~と大きく息を吐いて口元を押さえた。え、それはどういう心境なの…? 君から呼んで欲しいと言ったじゃないか。数秒沈黙が続いて、彼がまた僕の方に顔を戻せばふっと目を細めて微笑んだ。
    「シュウ、」
     心に染み入るような優しい笑顔を浮かべて僕の名前を呼ぶ。僕の名前を呼びながらいつも学校で見せてる、みんなが言う王子様スマイルとは違う彼の本心で見せてる笑顔だ。また僕の心臓は煩くなり始める。彼の笑顔を見るとすぐに煩くなる心臓、なんだかおかしい気がして胸に手を当てる。
    「名前だけでいいの? 釣り合いとれてないよ」
    「じゃあ、もう一ついいかな?」
    「どうぞ」
    「一〇秒だけ僕の恋人になって」
    「…いいけど、キスとかはダメだよ?」
    「わかってる」
     彼は一歩前に足を進めて距離を縮めれば、背中に腕を回し抱きしめて僕との距離を〇にした。外は寒いはずなのに、彼に抱きしめられると身体の底から温かくなってくる。一〇秒だけと言っていたが、体感にして一〇分程こうして抱きしめられているように感じた。
    「好きだよ、シュウ」
     彼は僕にしか聞こえないような小さな声で告げ、その後に頭に柔らかい感触を感じた。何が触れたかはわからないけど、悪いものではないように思う。彼に抱きしめられて、何故だか僕は自然と背中に腕を回そうとしたがその前に彼は離れてしまった。
    「シュウ、帰ろう。遅くなるからね。君の家まで送らせて」
     離れていった彼を寂しいと思ってしまう。なんでだろう、今までそんな事思わなかったのに。危ないからと手を差し伸べてきた彼は、寒さからか頬も鼻も耳も全て真っ赤で、多分僕も同じように真っ赤だろう。寒いからねと僕は彼の手を取って歩き出した。手が触れている部分だけ、とても温かくて心まで温かくなった感じがした。
     
     
     僕にはまだ、恋だとか愛だとかそういうものはわからない。わかることは彼と過ごす時間はとても楽しくて過ぎるのが早い、ほんの少しだけでも彼といる時間が長くなればいいなという事だけだった。
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