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    サシコラ1周年記念企画
    💙💜の兄弟パロです。
    (お題:兄弟/2段ベッド)
    (テーマ:君と一緒)

    #Ikeshu

    君と一緒アイク7歳 シュウ6歳

    「おにいちゃん...」
     時刻は10時。うちの家では夜9時になったらベッドに入るよう言われている。小学校に入り、色んな科目の授業を受けることなって僕はワクワクして毎日のように教科書を読むのが日課になっていた。特に国語の教科書はたくさんの話が載っているので僕のお気に入りの教科だった。今日もいつもと同じように国語の教科書を読んでいると、申し訳なさそうに僕をよぶ小さい声が聞こえてきた。声の方に視線を向けると、2段ベッドの階段に登り顔だけ出してこちらをみている僕の弟、シュウが眉を下げていた。
    「どうしたの、シュウ。なんかあった?」
     僕がそう声をかけるとシュウは瞳を潤ませ、何かを言いたいのに言うのを躊躇っているのか口をぱくぱくとさせている。ベッドから身体を起こし、シュウの方へと近付いて頭を撫でてあげ、ゆっくりでいいよと声をかけると一度強く目を瞑っておずおずと靴を開く。
    「...こわいゆめ、みた」
    「こわいゆめ?」
     こくんと小さく頷く。僕はシュウの言葉に笑みが溢れてしまう。6歳にしてはシュウは落ち着いている、大人しい、いい子だと言われているけれどシュウはまだ6歳。怖い夢で泣いて眠れなくなるんだ。その事実は僕の心を擽る。僕はベッドの壁側へと寄り、空いたスペースをぽんぽんと叩く。
    「おいで、シュウ。いっしょにねよう?」
     シュウは僕の言葉にパァッと嬉しそうな笑顔を浮かべ、いそいそと階段を登りきってベッドの中へと入っていく。シュウが寝転んだのを確認すれば僕は上から布団を被せてあげる。そしてシュウが安心して眠れるようにとぎゅうっと抱きしめてあげた。
    「シュウのこわいゆめ、ぼくがとってあげる」
    「それはおにいちゃんにこわいゆめがうつらない?」
    「うつらないよ、だいじょうぶ。そんなのはねのけるから」
     胸を叩いて見せるも不安そうな表情が抜けないシュウ。どうすればこの子が不安にならずに眠れるだろうか。うんうんと唸りながら頭を回せば、ポンっと一つのアイデアが思いつき、両手を叩いた。
    「そうだ、シュウ。シュウがねむれるまでおはなしよんであげる。それでこわいゆめ、わすれようよ!」
     背中をぽんぽんと叩きながら昔々...と話し始めた。シュウは話す物語に興味深々のようで眠るどころか目が覚めてしまっていた。僕はそのことに気づいていたけれど、キラキラとした瞳で僕の話を聞いてくれるから嬉しくって話を止めることができなかった。
    「おにいちゃんのはなし、おもしろくってげんきになっちゃったよ」
    「きにいってもらえてうれしいな」
    「ぼく、すごくすきだった、よ...。おもしろくて...わくわくして...」
    「うん」
    「そ、れ...で...」
     頭を撫でながらシュウの言葉を待っていると急にウトウトし始めてそのまま力尽きて寝てしまったようだ。規則正しい寝息が聞こえてきればシュウの前髪を掻き上げて額に唇を押し付けた。おやすみ、悪夢は僕は受け止めるから。いい夢を見てね。

    アイク17歳 シュウ16歳

     ベッドの上でうつ伏せになりながら僕はノートにペンを走らせる。既に電気を消した部屋でベッドランプ一つつけ、夢中で文字を書き続けた。ベッドに入った時間なんて覚えていないけど、多分もう1時間近くはこうやってノートに書き殴っていると思う。電気だっていつ消えたのかもわからない、こうやってノートに書いている時はベッドに入った瞬間にベッドライトをつけるようにしている。最初のうちは僕に電気消してもいい?と聞いていた弟もいつのまにか何も言わずに電気を消すようになった。部屋に入るなりすぐベッドに潜り込んでしまう僕と椅子に座って最近買ってもらったPCを楽しそうに使う弟。同じ部屋にいるというのに僕たちは一緒に過ごす時間は昔に比べてめっきり減った。お互いがお互いのことをする、小さい頃と違い成長するに連れて兄弟揃って同じ時間を過ごすということはなくなってくるのだ。それに伴って僕たちの会話は極端に減った。
    「…あ、終わった?」
     …というわけでもなく、僕たち兄弟は昔と同じようによく一緒に話していた。梯子を登って下から目元だけ出してじっと僕のことを見つめている弟、シュウが僕の作業が終わると同時に話しかけてきた。
    「うん、終わったよ。キリのいいところまで書き上げたんだ」
     パタン、とノートを閉じるとシュウはキラキラとした表情を僕に向け、そのまま僕のベッドへと乗り込んでくる。ギシリ、と音を立てるもんだがら僕は待って待ってとシュウの侵入を阻止した。いくら僕たちが(とてつもなく言いたくはないけれど)小柄だとはいえ、170超えた男二人が乗って耐えられるほどこのベッドは強くはないと思う。不服そうに唇を尖らせるシュウに指を下に向けてトントンと合図を送る。渋々と言ったようにシュウはベッド降りて自分の居場所へと戻っていった。ふぅ、と息を吐いて僕も同じように自分のベッドから降りた。
     シュウはどういう理由か僕のベッドに入りたがる。多分、小さい頃にシュウはよく悪夢を見たせいで1人で寝るのを怖がっていた。その度に僕のベッドで一緒に寝るようになっていたからその習慣が抜けきれないのだろう。僕としては思春期に僕に反抗的にならずに友好な関係を築けていることはとても嬉しいのだが、最近とても困っているのである。シュウは高校生になってからというものの、とても綺麗になった。男に、ましてや弟に、その言葉はどうなんだとは思うけれど、それ以外の言葉が見つからない。中学卒業間近から伸ばし始めた髪はいつ見てもサラサラで、太陽にあたると彼の綺麗な髪に反射して光り輝いて見える。一緒に過ごす友達の影響からかうっすらと化粧をするようになった。シュウが笑った姿は今まで見てきた女性よりも綺麗で美しかった。そんなシュウが僕のベッドで、スプリング音を立てながら隣に寝るなんて、何かの間違いが起きそうで怖くて仕方なかった。これは目の錯覚、可愛い可愛い弟に対するフィルターがかかっているだけ。そう思い込むのに必死だった。

     シュウが自分のベッドに入った後に続き、僕も同じようにベッドに入って横に寝そべる。上から持ってきたノートをどうぞ、と彼に手渡すも、拗ねているのかふいっと顔を逸らしてノートを受け取ろうとしなかった。
    「シュウ〜、読まないの?」
    「アイクが読んでくれないと読めないよ。僕活字苦手だもん」
    「もー…、君も頑固だなぁ…」
     はぁと溜息をつきながら僕はノートを開いて今日書いた部分を声に出して読み始めた。僕は小説家になりたいのだ。昔から本を読むのが好きでたくさんの本を読んできた。本を読んでいる時は別世界の住人になったような気がして楽しくて楽しくて仕方がなかった。だがそれはどんどんと物足りなくなってきて、自分の物語を作りようになったのだ。そのきっかけを作ったのはシュウだ。眠れないシュウのために即興で話を作っていく、いつもキラキラと目を輝かせながら僕の話を聞くシュウを見ると心が満たされた。話の途中で寝てしまったシュウが翌朝目覚めた時、続きは!?と僕に話しかけてくるのは嬉しかった。シュウのために面白い話を作ろう、それはいつしか僕の将来の夢へと変わり、ノートに話を綴るようになったのだ。シュウは今でも僕の話を気に入ってくれているらしく、僕がこうやって物語を書いている日は決まって今日見たくベッドから顔を出して待っているのだった。ノートに書いた物語を読みながらちらりとシュウの表情を確認すると、昔と変わらない目をキラキラと輝かして僕の話を聞き入っていた。嬉しくって自然と上がる口角、だけどそれを見られるのが恥ずかしくってノートで口元を隠しながら読み聞かせた。
     今日の分が終わるとシュウはパチパチと手を叩いてくれる。感想は聞かなくてもわかる、彼の表情が物語っているのだから。どうやら彼好みの話だったようで、今すぐにでも話したいと言ったように口をはくはくと動かしていた。
    「アイク、凄くよかったよ」
    「お眼鏡にかなってなにより」
    「…アイクは絶対売れる小説家になるよ」
    「なれるといいな」
    「なれるよ!」
     シュウは食い気味に返事をする。その姿に僕は思わず笑いが溢れた。手を伸ばしてシュウの頭を撫でると、彼は急に撫でられて困惑した表情を浮かべながらも気持ちよさそうに目を瞑った。
    「こんなにも熱心なファンがいるんだ、絶対なってみせるよ」
    「そん時は僕がファン1号だね」
     ふふっと嬉しそうに、どこか誇らしげに笑うシュウはとても可愛かった。僕は頭を撫でていた手を彼の背中まで伸ばして僕の胸に抱き寄せた。んぐ、と声が聞こえたけれど息苦しそうにはしていなかったのでそのまま抱きしめた。とんとんと一定間隔で背中を撫でてやるとシュウから規則正しい呼吸音が聞こえてきた。昔から変わらない、こういうところも昔から変わらない、シュウの可愛いところだな。僕は彼の長くなった前髪を掻き上げた。いい夢見てね、今日は遅くまで待たせてごめんね。額に僕に手を乗せ、その上から唇をのせた。おやすみ、シュウ。


    アイク27歳 シュウ26歳

     カタカタと画面に向かってキーボードを打ち続ける。僕の思うがまま動かしてきた画面の中の男女が思いを告げて抱き合う、そこで物語の終結を迎えた。
     僕は高校生の頃から本格的に描き始めた小説を度々コンクールへと応募していた。そして大学在学中、ちょうど二十歳の誕生日の時に応募していたコンクールで小さな賞を取ることができた。そこからというものの、僕は俄然やる気に満ち溢れて毎日のように小説を書いた。もっと小説を書くことに集中したいからと親を説得し、ちゃんと学校に通って規則正しい生活を送ることを条件に大学に近いアパートで一人暮らしをする許可をもらった。これで僕は晴れて一人暮らしを初めて物語を書くことに集中することができた。
     だが本当は小説を書くためだけに家を出たわけじゃなかった。もう一つ、家を出たい理由があった。それは弟、シュウのことだ。シュウは成長するにつれてどんどんと綺麗になっていった。大学も学部は違うが同じところに入学し、大学もまた一緒に通学するようになった。満員電車で通学中、後ろから押しつぶされそうになりシュウを壁際まで追いやって守るように壁に手をついてスペースを作ったことがある。その時思った以上に顔が近く、シュウの綺麗な顔を久々にまじかで見ることになった。満員電車のせいで体温が上がり火照った頬、赤いアイシャドウとマスカラのおかげですっぴんの時よりも大きくはっきりとした瞳、大人っぽさを出すためにとアイシャドウと似た色のグロスで塗られた唇。僕の心臓はどくんと大きく音を立てた。まずい、これは、自覚したらダメだと言ったのに。この日から僕はシュウを見ると心臓が高鳴る。ダメだと思っていても一緒にいると手を伸ばして近くに寄せようとしてしまう、僕は弟に恋心を抱いてしまったのだ。こんなこと、許されるはずがない。どうしても家を出て彼から離れたかった。
     家を出て小説に集中する毎日、大学卒業間近の時についに出版社からお声がかかり僕はついに小説家としてデビューすることになった。そして初めて出した小説が切なく涙が止まらないと話題になり映像化することになった。そこからというものの僕の作品は飛ぶように売れ、期待の新人作家として名を馳せることになったのだ。
     ふぅ、と眼鏡を外して目を閉じる。今回の作品は高校生の青春を題材にした恋愛小説だった。高校時代、そんな経験はなかったが妄想だけは得意だ、文字がすらすらと浮かんで止まることを知らなかった。僕もこういう経験がしたかった、恋人と手を繋いで河川敷を歩いて、夕陽をバックに恋人と唇を合わせる。勿論相手は…。…やめだやめだ、こんなこと言ったってもう過去には戻れないんだ。少し切り替えなきゃ、僕は炭酸飲料を取りに行くために席を立つと奥の扉が勢いよく開いた。
    「あ、終わった」
    「ちょっと、優しく開けてよ」
    「ごめんごめん、今手が塞がってて足で開けたら思ったより勢いついてさ」
     んへへ、と舌を出して笑う彼の手には僕が求めていた炭酸飲料の缶を持っていた。彼は近づいてきてお疲れ様、と缶を渡してくれた。ありがとうと受け取ればそれを勢いよく喉に流し込む。
    「ンンン〜〜、原稿終わりの炭酸はたまんないよ」
    「んはは、よかった。タイミングバッチリだったね」
    「さすが僕の弟だね、シュウ」
     シュウはにまりと笑う。僕が家を出た後すぐにシュウは僕の家に転がり込んだ。同じ大学なんだ、僕もこっちの方がいいよね、と当たり前のように部屋に住み着くし、僕が原稿で大変な時は食事も掃除も全てシュウが行ってくれた。僕がちゃんと大学に行き、規則正しい生活を送るためにシュウが世話をしてくれていた。最初の頃は何のために離れたのかわからないと頭を抱えていたが、時間が経つにつれてそんなことすぐに吹き飛んでしまった。書くのに集中しすぎてそんなこと気にしている場合ではなかったのだ。そしてなんやかんやで月日は流れて今までと変わらず2人で暮らしてきたというわけだった。

    「ねぇ、アイク。書き終わったんでしょ?読んで?」
    「もー、本を読んだ方がいいよ。そっちの方が感情移入できるよ」
     シュウは相変わらず僕が書き終われば読んで欲しいとせがる。何度僕が自分で読んで欲しいと言ってもシュウは首を横に振るだけだった。そして諦めた僕が本を読む、それの繰り返し。
    「僕はね、活字アレルギーなんだから読めるわけないでしょ?それに僕はアイクが読んでくれる本が好きなの。アイクが読んでくれなきゃ嫌だ」
     シュウは意外に頑固で一度決めたら絶対に意見を変えない。僕に何かを言われる前に、さっと逃げるように僕のベッドへと潜り込んで早くこいと言ったように隣を叩いた。
     今までと変わらずと言ったけれど、それは少し嘘が混じってる。僕たちは2段ベッドを卒業してクイーンサイズのベッドで寝るようになった。大人になった僕たちを支えてくれる頑丈なベッドへと進化したのだ。それともう一つ、僕たちは兄弟という関係だけではなくなった。
    「シュウ、僕原稿で疲れてるんだ。読み聞かせはまた今度」
    「ちぇ、絶対読んでよ?」
    「わかったよ。…今日は僕を癒してくれるでしょ?」
     ベッドに横になったシュウの頬をするりと撫でる。シュウは瞳を細めてにっこり笑う。なんだ、シュウは本を読んでもらう気なんてなかったじゃないか、始めからこっちが目当てじゃないか。ベッドから腕を伸ばしたシュウは僕の首に腕を回す。そして僕を引き寄せて耳元で囁いた。
    「お兄ちゃんの好きなようにしていいよ?」
    「ずるいなぁ…、悪いことしてるみたいじゃないか」
    「実際悪いことだけどね。僕たち、いい子じゃなくなっちゃった」
     僕は目を細めてシュウの唇に噛み付いた。久しぶりのシュウとの口付けは蕩けるほど甘く、無我夢中に唇を何度も重ねた。そんな僕をシュウは優しく受け止め、背中へと腕を回した。


     夕日をバックじゃなくて、原稿に追われて散らかった部屋だけど、僕は世界で1番幸せなキスをしている自信があるよ。
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