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    誕生日のフォロワーさんにささげた作品です。
    💙💜♀/王子様シリーズ番外編です。

    #Ikeshu

    王子様、プールへ行く 落ち着かない気持ちをお気に入りのイラストを見て平然を保ちながら高鳴る心臓を抑え、目的の相手をプールサイドで待つ。映えを目的にしている場所だからスマホの持ち込みも可能で本当に助かった。無心でスマホをスクロールしてイラストを見ていくが何も頭に入ってこない。お気に入りのイラストたちでいつも見ればテンション上がって声を出してしまうほどだというのに、この後来る大イベントが僕の心を躍ってしまう。
     夏休みに入る1週間前、やっとの思いで交換した連絡先に震える手で文字を打つ。同じクラスの友人、ヴォックスが抽選で手に入れたナイトプールのチケットを僕のために譲ってくれたのだ。これで最近アタックしている子を誘うようにと背中を押され、勇気を出して誘ってみるとOKという言葉と共にゆるくて可愛らしいスタンプを押されて返ってきた。近隣住民に聞こえるのではないかというくらい大きな声であげた喜びと盛大なガッツポーズをして、嬉しさのあまりにカレンダーに書き込んだら母親にニヤニヤしながら誰と行くのかと聞かれてしまった。もらったチケットは来週開店予定のプールでその前に5組10名だけ招待された。本来ヴォックスの知り合いが行く予定だったらしいが出張が入ってしまった為、回り回ってヴォックスのところまで来たらしい。入場条件をみたヴォックスは自分ではいけないからと僕にその招待券をくれたのだ。入場条件というのが「カップル」であること。僕はその券を見た瞬間眉を顰めたが、ヴォックスにこれはチャンスなんだと言い聞かされた。
    「1日だけ恋人になって欲しいと頼むんだ」
    「1日だけ…?」
    「そう、それで彼女をエスコートして距離を縮めればいいんだ。幸い、彼女は君に対して悪い印象は持っていないだろう」
     それに恋人同士なら他の男が彼女に言い寄らないよ。ヴォックスが内緒話をするように僕の耳元で囁いた。距離を、縮める…。その言葉が僕の背中を押してくれて今こうやってプールサイドに立つことができているわけで。イラストを見たのに全く落ち着かない心、それどころかスクロースする指は震え出した。どれくらい待っただろうか、10分、いや、もしかしたらもっと長いかもしれない。くる気配のない彼女に僕は何かあったのではないだろうかと、さっきとは違うことで心が落ち着かない。もしかしたら変な男に絡まれているのではないだろうか。恋人同士だからと安心していたが、恋人以外にも手を出す男だって存在するのだ。…、こうしてはいられない。一度スタッフに話して見てきてもらおう。スマホをから目を離し、スタッフを呼ぼうとした瞬間 に後ろから聞きなれた声が僕の名を呼ぶ。
    「アイク!」
    「しゅ…、…ッ!?」
     彼女の声が聞こえて勢いよく振り返り、目に入った光景に息をのむ。いつも髪をおろしているのに今日は髪を上で1つに纏められていて、動くたびに揺れる髪にも目を奪われてしまう。この前、ポニーテールが好きだという話を彼女にしたから僕の為にしてくれたのではと自惚れてしまう。それだけでも心臓を押さえたくなるほど破壊力がすごいのに、目線を少し下げてまた僕の心臓を締め付ける。だって、だってそんなの聞いていない。彼女、シュウがこんなに色っぽい水着を着るなんて聞いていない!シュウのことだから体があまり見えないフリルのあるワンピースを着てくると思ってたのに!思っていたのに…、こんなに肌を露出してくるなんて…、死んでしまう。濃い色の水着は彼女の白い肌によく映え、胸元でクロスされた水着は彼女の形のいい胸が惜しむことなく晒されて、普段見ることのできない下乳に目が釘付けになってしまう。あまり見すぎるのはよくないとさらに視線を下げれば、細いけれど肉付きのいい柔らかそうな太ももが目に入り、僕は両手で顔を覆ったこれ以上は目に毒だ。シュウのどこを見ても僕の心臓が持たない。まだ彼女、シュウと出会って5分も立っていないのに僕のライフはもう0だ。
    「無理…。心臓爆発しそう。僕をどうしたいんですか…」
    「んへへ、気に入ってくれた?浮奇がね、アイクが好きだろうからって選んでくれたんだ」
     それまでドキドキとうるさく鳴り響いていた心臓が、彼女の口から出た名を聞いた瞬間鳴るのを辞めて、表情を失う。知ってましたけど!?シュウが浮奇と仲良くて信頼していることぐらい。彼女が一番気を許せる相手だから相談するのも当たり前なんだと思っていたけれど、僕以外の男が彼女の水着姿を見ただなんて悔しすぎる。悔しすぎるけど、感謝するしかない。絶対にシュウが選ばない水着だもん、これが見れるだなんて浮奇に足を向けて眠れない。嫉妬と感謝でぐちゃぐちゃになりそうで頭を抱えようとしたとき、シュウが僕の手を握ってきた。
    「アイク、あそぼ?」
    「…うん、いこうか」
     嫉妬はしているけど、今はそれを置いておこう。今このシュウを独り占めしているのは僕なんだ。彼女の手を握り返してプールへと向かった。
     
    「うわ、思ったよりも深いよ」
     プールは思っていたよりもだいぶ広く、10人いるけれどもみなそれぞれ2人きりでいれるような場所を選んで遊んでいるため殆ど貸切と同じようなもので、僕たちも2人きりになれるような場所を選びプールの中へと入った。プールは僕の胸元まで深さがあり、シュウの慎重だと少し危ない高さだ。シュウも僕の身体を見て危ないと感じたのか、僕の近くに浮いてある浮き輪ボードに手を伸ばしてきた。僕はその姿をみて一ついたずらを思いつき、サッとボードを後ろに下げて掴ませないようにするとシュウはなんで?といったようにぽかんと口を開けて僕を見た。そして僕は彼女に両手を伸ばして笑顔を向ける。
    「ほらシュウ、おいで」
     僕が手を伸ばしたことで理解したのか、シュウは顔を赤くして首を横に振る。ボードがいいと指差すも僕の答えはNoの一択。後ろに押してプールサイドから離すとシュウはムッと僕を睨みつけるけど、そんな赤い顔で睨まれたって何も怖くない、可愛いだけ。もう一度手を伸ばす仕草を見せ、おいでと声をかけると観念したのか僕の首に腕を回して抱きついてくる。彼女が勢いよく落ちないように腰に腕を回して身体を支えてゆっくりとプールの中へと身体を鎮めていく。…自分でやっといてなんだけど、これ結構まずいかもしれない。落ちないようにシュウがしがみつくから素肌同士が触れ合うし、なんといっても柔らかい感触が押し付けられる形になるから何がとは言わないが元気になってしまう。睨んでいた彼女の表情は、抱きしめ合う状況に恥ずかしくなってしまったのか再び耳まで真っ赤にし、それで僕から目を離すことなくじっと僕を見つめていた。…、可愛いなぁ。仮初ではなく本当に僕の恋人だったらこのまま君の唇を奪うのに。ずっとこのまま彼女の瞳の中に僕だけ映してて欲しいけど、この状況は僕にとってよろしくない。遠くへやったボードまで彼女を抱きしめたまま歩き、ひっくり返らないように優しくその上へと乗せた。やっと身体が自由になったシュウは唇を軽く尖らせて再び僕を睨んだ。
    「アイクの意地悪」
    「なんとでも言っていいよ」
     よいしょ、とボードの上に乗りシュウの隣に座る。ここで腰や肩を抱いて身体を寄せれれば格好付くところだけど、生憎僕にはそんな度胸はない。肩が触れるか触れないかギリギリの位置まで近寄ると途端に恥ずかしくなりシュウの顔が見れずに下を向いてしまった。あー…、本当頑張れよ、僕。あと数回、大きく深呼吸をしたらシュウの顔を見て話しかける。1、2、……、そうやって何回か呼吸を繰り返して話しかけようと顔を上げた瞬間に腕に柔らかいものが当たり勢いよく顔を向けて固まってしまった。僕の腕にシュウが胸を押し当てるように抱きついていて、話しかけようと思っていた内容が全て吹き飛んでしまった。無意識だろうけどそんなことされてしまうと男は誰だって元気になってしまう。抑えるために目を逸らしたいが、シュウが可愛らしい笑みを浮かべて僕の名を呼びながら話しかけてくるから逸らすことができない。
    「アイク、こんな素敵な場所に僕を連れてきてくれたし、許してもいいよ?」
    「そ、れは、…許してもらえて、嬉しいかな」
     んへへと肩に顔を乗せて笑うシュウ、いまだに僕の腕に抱きついたまま離れない。ぉ〜、無理…!可愛い!いつも僕に抱きついたりしないじゃん…!どうしちゃったの…!勘違いするんだけど!そこに意識を逸らしたいのにどうやったって意識してしまって胸がはちきれそうになる。ふーっと大きく息を吐いて心を落ち着かせていると、急に先程まで感じていた柔らかい感触が離れ、シュウの方へと顔を向けようとした瞬間に背中を押されてプールの中へと落とされてしまった。ぷはっ!とプールの中から顔を出し、何が起きたのかわからずあたりを見渡しているとボードの上でお腹を抱えて笑っているシュウを見てやっと理解した。
    「んはは!アイク、僕から意識逸らすからだよ!」
    「シュウ〜〜〜?」
    「んへへ、ふ、ははっ!……え?わっ!」
     バシャン大きな音を立てて笑っているシュウの腕をとりプールの中へと引き摺り込む。プールの中から顔出したシュウは犬のようにぷるぷると顔を振って水気を落とし、僕を睨んでくる。そんなシュウを僕は溺れないようにしっかりと抱きしめて顎を掴んだ。
    「これでおあいこ」
    「…僕ばっかり損じゃない?」
    「気にしない気にしない。ねえ、向こうはもうちょっと浅いみたいだよ、あっちで遊ぼう!」
     むっと頬を膨らませたシュウを抱きしめたまま場所を移動させ、彼女が立てる場所でおろしてあげるとどこからか持ってきた水鉄砲で顔に水をかけられた。
    「ここに来たからもうアイクのペースには乗せられないから」
     ふふんと自信ありげに目を細めて笑う彼女に僕も近くに浮いていた水鉄砲を取り、シュウの顔をめがけて打った。わ、と声を上げて顔についた水を払う。その姿すら色っぽく見え、うっと胸を押さえる。
    「…アイク、僕を怒らせたね」
    「シュウから始めたんだよ?…受けてたつよ」
     僕の言葉を皮切りに僕たちは水鉄砲で撃ち合った。シュウは意外にもエイムがよくて毎回確実に僕の顔をめがけて水を撃ってくる。水に足を入れている中で逃げ切れるわけもなく、僕はすべての弾を顔面で受け止めてた。僕のエイムはそこそこで顔を狙ったつもりが少し下がって胸元に当たった時は思わず目を逸らし、顔に水をかけられて、声を出さずに口元で”えっち”って言われたときは流石に限界を感じたけど、すぐさま顔を水をかけられて頭を冷やすことができたのでよかった。僕たちの打ち合いはお互いの水がきれるまで続き、終わった瞬間二人して顔を見あって笑い出した。
    「あーもう、ナイトプール誘われておしゃれな空間だって思って緊張してたのに、僕たち何してるんだろうね」
    「本当だよ、みんな写真撮ってるのに僕たち写真も撮らずに水鉄砲で必死になるなんてね」
    「んへへ、でも僕たちらしいし、楽しいからいいよね」
     笑いがおさまれば僕はシュウから水鉄砲を取って元の位置に戻し、彼女の手を握りしめて休憩しようとプールサイドへと移動した。少し疲れたのかシュウも頷いて僕の手を握り返してくれて、僕の心臓が飛び跳ねたことは内緒の話。プールサイドには招待客みんなに二人用のデッキチェアが用意されており、僕たちがそこで座るとスタッフがすぐにサービスドリンクを持ってきてくれる。
    「わぁ、フルールいっぱいはいってるよ!おいしそう!」
    「僕のいっぱいイチゴはいってる!あ、シュウのにバナナ入ってる。共食いだ」
    「あ、本当だ。…じゃあアイク、僕を食べてね?」
     はい、と手にバナナをもって唇にちょんっとあてられる。…、いや、まぁ僕が言ったから仕方ないんだけど、その発言大丈夫?ちなみに僕は死にそうです。平然な態度をとれているのかも微妙なところです。震える口を開けて彼女の手からバナナを口に入れる。味なんてわかるわけなく、俯いてただただ口を動かして胃の中にいれる作業をしている。楽しそうにおいしい?ときいてくるシュウに僕は頷くことしかできなかった。やっとの思いで飲み込んで視線を上げると、顔を真っ赤にして驚いたシュウが僕の方をみて口を開けていた。君が食べさせたんじゃないか、どうしてそんなに驚いているの?シュウ、と声を掛けようとした時に違和感を覚える。シュウ、僕を見ているんじゃなくて後ろを見てる…?僕も同じように顔を後ろに向けて彼女がみている方を見てぎょっとする。同じようにデッキチェアで休憩していた招待客の一組が抱き合って口づけを交わしていた。それも触れるだけではなく舌を絡める深い口づけで、さらにはお互いの身体を触っているではないか。公共の場だよ!?何してるの!見てられなくて視線を元に戻すと頬を赤く染めて上目遣いで僕を見つめるシュウと目が合い、ごくりと唾液をのみ込んだ。あの恋人たちにあてられたのかシュウの瞳には僅かに熱を帯びており、僕は彼女の水に濡れて潤んでいる唇に意識が注がれる。手を震わせながらシュウの両肩に添えるとびくんっと身体を震わせた。しかし僕の次の行動が読めたのかシュウはゆっくり瞼を閉じる。…いいのか、しても。これは、もういいだろう。やっと、やっと、僕の想いが通じ合ったんだ。バクバクと心臓をうるさいほど鳴らしながらゆっくりと顔を近づける。彼女の顔がぼやけ始めた頃に瞼を閉じようとしたが、胸元で握りしめていたシュウの手が震えていることに気付き、身体を離した。……馬鹿か、僕は。彼女の口から気持ちを聞く前のこんなことしちゃダメだろ。邪念を取り払うように顔を振り、唇を落とす予定だった場所から上げ、額へと唇を落とした。え?と拍子抜けした声をあげて額に触れるシュウに僕は怖がらせないように精一杯の笑顔をおくる。
    「…、今はまだ。いつか必ずここが欲しい」
     人差し指で彼女の唇をふにっと押して立ち上がる。彼女を見ないように背を向け、暴れていた心臓に手を当てて落ち着かせる。流されちゃダメだ、こういうのはきちんと関係を持ってからでないと。心臓の動きが少し落ち着いたあたりで僕は彼女の方へと身体を戻して手を差し伸べる。
    「シュウ、もう一度遊びに行こうか」
     しかし一向に差し伸べた手を取る素振りはなく、下を向いているシュウが不安になり僕は屈んで彼女と同じ目線になる。
    「シュウ…?」
     声をかけて顔を覗き込んでみると、顔を赤くしてむっと頬を膨らませていた。え、なんか怒ってる…?あまりジロジロと顔を見るのもよくないかと少しだけ距離をとり、行き場を無くした手を下げて頭を掻く。…もしかして、これは僕に都合のよすぎる解釈だけど、…シュウは僕にキスして欲しかったとか。いや、…それはないか。うんうん唸りながら考えても何も思い浮かばない。今まで楽しかったのにこんなところで失敗したくない。頭を抱えていると小さく“アイク”と僕を呼ぶ声が聞こえて顔をあげると、シュウが僕の方に手を出していた。
    「ん?、…、え…、と」
     こうかな、と彼女の手の僕の手を重ねる。シュウが僕の手を握ったことから多分これは間違いではないのだろう。よかった。立ち上がってそのままシュウも一緒に起こそうと思ったが、シュウは踏ん張って立ちあがろうとしない。首を傾げて彼女の名を呼ぶとぐっと手を引き寄せられる。思わずぐっと足を踏ん張ったが、想像するより強い力で引っ張られて顔から彼女の方に転けそうになる。
    「ちょ、しゅ、シュウ!…う、うわぁ!」
     彼女の強い力により僕は踏ん張ることができず、そのまま顔からぶつかりそうになって思い切り目を瞑った。
     ――ドンッ!
    「い、いった…、シュウ、どうしたの…、って、あれ…?」
     身体をぶつけて痛みが走る部分を手で押さえて恐る恐る目を開けるとそこは見慣れた天井だった。ちゅんちゅんと小鳥の囀りが聞こえて視線を動かすと窓から光が差し込んでいる。今、夜じゃ?プールは?シュウは?勢いよく身体を起こしてあたりを見渡すも、僕が探しているものは何一つ見つからず、ため息を吐きながらベッドに顔を埋めた。
    「夢、かよ…」
     ベッドから転げ落ちて目が覚めたようで、先程までの幸せな時間は全部全部僕に都合のいい夢だった。プールの招待券もらったけれどそれはナイトプールなんてオシャレなものじゃなく普通のプールだし、シュウと2人きりでデートではなくヴォックスとルカと遊びに行くだけだし、そもそも僕はまだシュウに、…闇ノさんに話しかけたことすらなかった。ベッドで足をばたつかせて暴れる。悔しい、悔しい。ベッドから落ちて痛む頭を押さえながらじんわりと目の端に溜まった水分を拭った。
     
    「キス、しとけばよかったぁ…」

      ――愛しのあの子に話しかけるまであと4ヶ月
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