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    geshi0510

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    geshi0510

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    魔蛇っ子新作冒頭部分。書きかけなので内容は変わるかもです。というか私はこの話をどうまとめるつもりなのか。そもそもまとまるのか。うむ、不安しかないな!

    魔蛇っ子ブリ大根編 それは、いつもの風景だった。
     無数の人がひしめく電車内。
     帰宅ラッシュの只中においては、車両の床もまともに見えない。
     故に、誰も気づかなかった。
     己の足元を這うものに。
     それが徐々に床へ沈み、車両と同化していくことに。
     入念に、時間をかけてじわりじわりと。
     それは、侵食を進めていく。
     全ての車両を自らの胃袋へと変えながら。
     邪魔な陽が沈み切り、準備が完了する夜更けに向けて。
      

     本日の魔蛇っ子お茶会終了後、小芭内は制服のまま買いものに出ていた。
     煉獄さんのご飯係に就任して以降使用する食材が10倍以上に増えたこともあり、最近は家まで届けてくれるネットスーパーを利用しているのだが、本日便を仕分けする中、切れかけていた味醂を注文しそびれたことに気づいたためである。
     料理酒に使うよう父からもらった日本酒と砂糖で代用することも考えたが、今夜のメインはブリ大根だ。うまそうな艶と照りを出すのに味醂は欠かせない。
     どこぞのボッチ地蔵が届いた食材を見ながら片づけを手伝うでもなく「なぜブリ大根なのか神経を疑う(鮭大根ください)」とか宣っていたのでとりあえずかぶらまるに噛んでもらった。新作ぽいずんにより即座に意識消失もとい寝落ちした緑色の物体はご近所の不死川が帰りがてら家まで届けてくれるとのことだった。優しい。
     近くのスーパーでなるべく女性に近寄らないようにしながらお目当ての味醂とブリ大根の火の番を引き受けてくれたかぶらまる用たまごぼうろを買い、さて帰ろうとマンションに向け歩き出したその時、路地裏から剣呑な音が聞こえてきた。

    「あ? 聞こえねぇなぁ?」
    「すみ、すみませ……っ!」
    「聞こえねえっつってんだよ」

     目を凝らせば、夕闇に紛れた暗がりの中に、大柄な男の背中が見える。龍が描かれた派手なスカジャンのポケットに両手を突っ込んだその男の足元には、並んで土下座する複数の影。肌色面積が多いのは服を剥かれたためだろう。辛うじて下着だけは着用を許されているようだ。
     男は並んだ後頭部を順繰りに踏みつけながらドスの利いた巻き舌で謝罪を要求していた。いや、要求しながらいざ相手が詫びを述べようとすると頭を踏みつけて完遂を遮っていた。モグラ叩き風味で嬲っている。人として明らかにタチが悪い。
     ここは順当に警察を呼んで、間に合わなさそうなら魔蛇っ子ぱわーによる介入を考えよう。
     冷静にそう判断した小芭内が羽織ったコートのポケットに入れたスマホへ手を伸ばしかけた時、焦った少年の声が響いた。
    「あの、もういいですから! 僕は怪我もしてませんし! ですからもうやめてあげて──」
     男の影に隠れていたらしい制服姿の少年が、男を止めようとその腕を引いて必至に言い募る。
    「あめぇなぁ。いいかボクちゃん、こういうチンピラどもにはきっついお仕置きが必要なんだよ。未成年から暴力で金巻き上げようとするような屑どもにはなぁ」
     話が変わった。悪いのは土下座している男たちの方らしい。
    「さて、この俺が骨の髄までてめえらに教育的指導してやるよ。終わった後の指導料、楽しみにしてるぜぇ」
     更に話が変わった。対象が悪者なだけでスカジャン男のやろうとしていることは一緒だった。
     やばい大人に助けられたと知った少年が違う助けを求めて辺りを見回し、小芭内を見つける。
    「た、助けてくださいぃ……っ!」
     泣きそうな顔でこちらへ駆けてくる少年を追って、スカジャン男が顔をぐるりとこちらへ振り向かせる。
     暴力的な振る舞いに似合いの、威圧的な凶相。ギリリと吊り上がった、三白眼を通り越した四白眼が不機嫌に歪んでこちらを睨みつける。
    「ようお嬢ちゃん、おじさんは今からこいつらと大事なお話があるんだ。もう遅いからそこのボクちゃんと一緒に帰んなぁ」
     少年を先に逃がしながら、小芭内は口を開いた。
    「その話とやらが暴力に因るものなら、見逃すわけにはいかない」
     だって、煉獄さんならそうするから。
     強さを得る前ならいざ知らず、それを得たのであれば使いどころを誤ってはならない。
     強き者は弱き者のために。煉獄さんの根幹を成すその教えは、煉獄さん推したる己の規範にもなって久しい。
    「え? 今の低音ボイスどこから? お嬢ちゃん? マジで? ちょ、脳がバグるってか待て待てその制服なんか見覚えがあるってかその目ぇ──」
     何かを確認しようとしてか男が足早に近づいてくる。その容姿になぜか不思議な既視感を覚えつつも、小芭内は力ある音を紡いだ。時の流れさえさし止める、強き音を。

    「あんた、もしかしてうちの──」

    「蛇らんらー!」

    「その子から離れろ下郎!」

     魔蛇っ子ゴスロリ戦闘服に変身した小芭内の背後より、弾丸の如き速さで何かが飛来する。
     路地裏に置いてあった青色ペールだ。
     スカジャン男がギリギリ避けたそれが背後で微動だにしない土下座マン達へヒットする様を見届けきる前に、小芭内の視界が見覚えのある色に遮られる。それが羽織にかかる髪色と認識した瞬間、吠えたける声が辺りに響いた。
    「ゴルルルルァァ! てめぇ人が話してる最中にいきなりゴミ箱ロケット発射してんじゃねぇぞクソがぁぁぁ!」
     ぶち切れたスカジャン男が和装の男性に飛び掛かる。
     スカジャン男より背こそ多少低いががっしりとした体格の男性は、背後の小芭内を庇ってか一切よける素振りを見せず、手四つの体勢に持ち込んだ。
    「チンピラ襲撃ならまだしも子供にまで手を出すとはついにそこまで落ちたか嘆かわしい!」
    「ハァ!? 出してないわ! その無駄に派手な眼は節穴かよボケェ! 俺はむしろそこのゴミまみれになったゴミどもに絡まれてたガキを助けた側だわ!」
    「貴様のことだ助けた後で謝金をふんだくるつもりだったんじゃないのか!」
    「ガキから金巻き上げるほど終わってねぇわ! 俺がいただくのは屑どもの教育指導代ですぅ! 屑どもが二度と道間違わねぇように尻の毛まで毟って身体に教え込む真っ当な慈善事業ですぅ!」
    「それを真っ当とは言わん! いい加減ちゃんと働け! 定職に就け!」
     ビキリ、と男の額に青筋が増える。
    「っかー!嫁さん亡くして一時道場もてめえのガキも放置した無責任ネグレクト野郎がえらっそうに!てめえの道場こそボンボンの道楽程度の収入しかねえだろうが!それで定職気取ってんじゃねえよニート崩れが!ご先祖様が広い土地に優良不動産物件残してくれてなきゃ今頃てめぇ子供ごと路頭に──いや逆か、不労所得があったからこその引きこもりだなそもそも貧乏知らずのボンボン優等生だったてめぇにガキまで食い詰めさせる肝っ玉なんざねぇもんなあこの甲斐性なしビビりチキンが!最初から嫁の稼ぎに一切合切頼りまくりの由緒正しきヒモ人生を選んだ俺の度胸を見習えぇ!」
     男性がぐぬぅぅぅぅと喉の奥から唸り声を上げた。ダメージ判定大らしい。
    「その節は誠に申し訳なく我ながら慚愧に堪えぬ振る舞いであったと思うが貴様に学ぶところは一つもない!堂々とヒモ宣言するな!苦労かけどおしの奥方を労え!いい加減離婚されるぞ!」
     男の頭上からの押し込みをどうにか男性が押し返す。若干涙声なのは聞かないふりをしてあげるべきだろう。邪魔をしてはいけないのでついでに距離も取っておく。
    「あいにく夫婦仲は良好でねぇ!持つべきはお人好しでダメンズ好きの嫁だよなぁ!あーうちの嫁サイッコー!」
    「お、俺の妻だって非の打ち所のない最高の──!」
    「そうだなお前を置いてったこと以外はなぁ!」
     男性へ傍目にもクリティカルヒットが決まったところで空間に揺らぎが生じた。
     紫色の煙の中からかぶらまるが慌てた様子で飛び出してくる。
    「どしたの小芭内!魔蛇っ子ふぃーるどてんかいするとかなにがあったの!?」
     どうやらかぶたんは魔蛇っ子ぱわーの行使を感じ取って駆け付けてくれたらしい。
    「てかなにこのおじさんず!なんで魔蛇っ子ふぃーるどないでうごけてるの!?なんでちからくらべしてるの!?なんでかたほうごうきゅうしてるの!?そしてろうにんぎょうのごとくかたまったおくのはだかどけざまんずはなになんなのー!?」
     いちいちもっともな疑問である。
     しかしどう説明したものか、正直小芭内にもよく分からない。分からないのでとりあえず互いに落ち着くため別の話を振ってみる。
    「……ブリ大根はもう煮えたか?」
    「え?うん、いいかんじににえたわよ。おだいこんにたけぐしがすーってとおるぐらい」
    「そうか、じゃあとは味醂でてりってりにするだけだな。かぶたんこれは火の番のお礼だ」
    「わーたまごぼーろだやったぁ!ね、ね、ちょっとたべていい?」
    「もうすぐ夕飯だから適度にな」
    「はーい」
     掌に出したたまごぼうろを啄むかぶたんの愛らしさにニマニマしていると、強い視線を感じた。組み合ったまま、男たちがじっとこちらを見つめている。
    「……喋る白蛇……魔蛇っ子……?」
     呆然と呟いた男性の双眼に、カッと炎が巻き起こる。
    「貴様、性懲りもなくまた前途ある若者を誑かしたかかぶらまる──!」
    「ちょ、おま、うぉぉぉぉっ!」
     手を組んだまま男を引きずるようにして男性がこちらへ突っ込んでくる。怖い。涙やら何やらで顔がテカってるのがさらに怖い。
    「え!? なになになに! やだやだきゃーこわーい! かれいしゅういやー!」
     小芭内の掌からぽいんと飛んだかぶたんが、目にもとまらぬ速さで男性陣の首元を擦り抜ける。
    「──ねおぽいずん」
     次の瞬間、音を立てて地面に倒れ込んだ男性陣は両者とも緑に染まっていた。
    「またつまらぬものをかんでしまったわ……てかおくちまっずーい」
     ふよふよ戻ってきたかぶたんが口直しにたまごぼうろを啄みながら小芭内を見上げる。
    「で、どうする小芭内このおじさんず。おいてく?おいてこ?おいてっちゃお?」
     小芭内は改めて折り重なるように眠る男達を眺めた。見れば見るほど見覚えがあるというか、特に和装の男性の薄暗がりにも派手な髪色には見覚えしかない。
    「いや、双方に近しい人のDNAを感じるので丁重に我が家へお連れしよう」
     不服そうなかぶたんを追加たまごぼうろで宥めながら、魔蛇っ子ぱわーで二人を軽々担いだ小芭内は家路を急いだ。
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