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    ドラロノとかヒュンポプとか、何か色々ぽいぽいする

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    お題を使っていつか漫画に出来たらいいなをメモのようにしていくことにした

    【滴】

    ##ダイ大
    #ヒュンポプ
    hyunpop

    ぱらぱらと窓を叩く音に気がつき、机にかじりついていた頭をあげる。作業に没頭して気が付かなかったが、いつの間にか空は薄暗くなっていた。

    「雨か…」

    窓に近づいて空を眺め、ふと視線を落とすと人影がある。いつから居たのだろう。自室の窓から見えるのはパプニカの城にある小さな庭だ。人は滅多に来ないのだが……今は見知った白い頭が見えた。

    そういえばこの国の復興祭がある時期だった。何年経とうと思うことはあるのだろう。

    独りで居たいなら、そっとしておいてやろうか――――

    そう思うも、窓から離れられず視線を外すこともできない、そんな自分に舌打ちをする。

    ああ――――まったくこれだから

    窓を開け、まだ止みそうにない雨が室内を侵食するのを気にせず飛び降りた。




    「そんなに濡れる程、雨が好きなのかおまえ」

    窓から見た位置から移動もしない相手に声をかけると、振り返るそいつの髪や服は、水気を含んでしっとりとしていた。

    「――――ポップか」
    いつものように答える声は、ただいつもより沈んでいるようだ。
    「どうした、こんな所に来て。雨に濡れるぞ」
    「すでに濡れてんのそっちだろ」
    「風邪をひく」
    「それもこっちのセリフ」

    ――沈黙。
    これ以上かける言葉がないのだろう。まあ急に来たのはおれの方だ。
    「ずっとそこに居るのかよ。雨に濡れるのが趣味ってわけじゃねえならもう城に入れよ」
    「オレを心配してきたのなら、大丈夫だ。おまえこそ部屋に戻るといい」
    「別に…心配なんてしてねえけど…」
    たぶん。どうせ風邪なんて引かねぇだろうし。
    ただ姿を見て放っておけなかったなんて言いたくねぇ。
    帰らないおれに少し困った顔をしているヒュンケルに構わず話しを続ける。

    「雨ってさ…」
    なにを言い出すのかという視線を感じながら、空を見上げる。

    当たる雨が流れて顔の表面を伝って―――

    「雨で流したいモノがあったりするのかもしれねえけど…おれはそれだけじゃねえと思うんだよなあ」

    ぽたりと落ちていった。それを追いかけるように視線を落とす。

    「ほら、雨から得たもので大地はこうやって木々や草を生やし、生き物が育つだろ」
    止まることなく降り注ぐ滴を手で受ける。時に試練を、時に恵みを与えてくれるのも同じモノ。

    「そう考えると、この水滴一つ一つが特別なものに思えるだろ?」

    ヒュンケルの方を見ると同じようにおれの手を見つめている。

    「生きていく中で起こる出来事も、そうなんじゃねえかなって。一つ一つのできごとが降ってきてそれが痛てぇ時もあれば暖かい時もある…それを沢山受けたうえで、人は木々のように成長して、枝葉を広げて行くんだろうな。」
    水滴を乗せたまま、それがとても大事なもののようにそっと手のひらを閉じた。

    「だからこれまでのことを無かったことに出来ないし、しちゃいけねぇ。それに耐えられなくて枯れちまうのもあるかもしれねえけど…」
    「オレは…」
    「おまえはちゃんと成長して枝葉を伸ばしたろ?」
    「そうだろうか」
    「そうだよ。その枝葉でちゃーんと守ったろ、世界」
    「ポップ…」
    「………だからさ、今そうやって、雨に打たれるおまえは一体何を得るんだろうな。おれはそれがちょいと気になったんだよ。まあただ風邪引くだけかもだけどな」

    そう、それだけだから

    「心配した訳じゃねえからな!」

    ちょっと顔が熱くなって来たのを感じながら、あいつが気がつきませんように…そう思ったが、目の前の男がフッと笑う姿に、そのささやかな願いは叶わなかったことがわかった。


    「そうだな…得たものがあるとすれば…雨の滴と共に落ちてきたおまえだ」
    「はあ?」
    「一つ一つに意味があるのならば、おまえもまたその一つなのだろう?」
    「え…まあ…そう…か?」
    「そうだ」
    断言されて返す言葉が見つからずにいるとヒュンケルがこちらに近づいてくる。
    「おまえがオレに与えるものはいつも意義深い。それに見合う事ができるのかは分からん……だが」
    もうあと半歩近寄れば密着してしまう距離で…手が…おれの頬をそっと優しく撫でる。

    「もっと…欲しいと…願う我が身を、浅ましく思うのだ」
    こちらを見る真剣な眼差しの、その奥に別の色が見えた気がして、自分の体温が上がるのを感じる。
    「お、おれはそんなに安かねえぜ」
    「その通りだ。オレなんぞが容易く得て良いものではない」
    頬に当たる熱が離れていくのが、何故かどうしても惜しくてたまらずに手を掴むと、ヒュンケルが少し驚いたような顔をした。
    「でも、びしょ濡れのてめえにタオルと暖かい飲み物くらいは与えてやるよ」
    「…今やおまえもそうだが」
    「うっせえな!おれの部屋、来んの?来ねぇの?」
    「…ポップ……」
    おれの名を呟いたヒュンケルは、さっきよりも近く…互いの体温を感じるところまできて…。



    すでに濡れているのだ、いまさら気になることなんてない。
    冷たさより包み込まれて触れている部分の熱を感じながら目を閉じる。

    さて、まずは風呂に放り込もうか

    なんて考えながら
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