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    SoukaiSky

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    SoukaiSky

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    取り敢えず書き直すつもりではある書き掛け小説【Monochrome】の各章出だしこんなかなと思ってるのを書ける範囲だけ。零の分も書き直すつもりだがどうしようか全然まとまらん。

    『━━君が協力してくれたら、お母さんの命は私が保証しよう』
     ━━それが、悪魔との契約だった。

     幼いあたしはまだ知らなかった。人は大切な何かの為なら幾らでも愚かになれるのだと言うことを。世間には笑顔で人のことを利用出来る人がいると言うことを。
     恩人だった。あたしの何よりも大切なものを助けてくれた人だった。あたしの生きる意味を守ってくれた人だった。あたしの大切なものの為になるからと、何も持っていないあたしに道を指し示してくれた人だった。
     それが地獄の茨道になるかなんて想像もしなかったあたしは、愚かにも簡単に信じてしまったんだ。

     お母さんを生かしてもらう為にあたしが差し出せるものは、あたし自身しか無かったから。



     ━━産声を上げなかった赤子に、父は死産も覚悟したそうだ。

     母体の状態が悪化し、予定日よりひと月近く早く取り上げられた赤子。育ち切っていない小さな身体に、原因不明の呼吸難。保育器に入れられるのは当然だった。
     不妊治療の末漸く授かった子が管を繋がれなければ呼吸の出来ない姿に、母は毎日ガラスの向こうで泣いていたと言う。

     呼吸器に何かしらの欠陥があることは明らかだったが、詳しい原因や疾患は判然としなかった。
     ただ、早生まれなことを除いても同い年より一回り以上小さな身体。喃語すら発せず、ある程度成長してからも声を出すことの出来ない発声障害に、たくさんの心無い言葉を向けられた。
     日に日に憔悴して行く両親が異様なまでの過保護になったのは、ある意味当然だったのだろう。



     ━━興味、って、なんだろう。

     昔から、何にも執着が出来なくて、自我の薄い子供だった。よく親戚のお兄ちゃんや叔父さんが遊びに誘ってくれたりしたけど、私はただ何にも害されずに時間が進むならそれが一番楽だった。
     鈍臭くても、物覚えが悪くても、喋り方が変でも、両親が私を特に咎めることも心配することも無かったのは、両親も私に興味が無かったんだと思う。
     母の目に映っているのはいつだって父だけで、父の視界にいつだって母は居なくて、私は家の中で与えられた"娘"と言う役割をただ全うしていればそれで良かった。
     ただ、それが通じるのは『家の中』だけだと気付くのが遅過ぎた。

     母の妄執と父の義務の中で生きて来た私を、わざわざ攻撃してくる人が居るなんて思ってもいなかったんだ。
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