『━━君が協力してくれたら、お母さんの命は私が保証しよう』
━━それが、悪魔との契約だった。
幼いあたしはまだ知らなかった。人は大切な何かの為なら幾らでも愚かになれるのだと言うことを。世間には笑顔で人のことを利用出来る人がいると言うことを。
恩人だった。あたしの何よりも大切なものを助けてくれた人だった。あたしの生きる意味を守ってくれた人だった。あたしの大切なものの為になるからと、何も持っていないあたしに道を指し示してくれた人だった。
それが地獄の茨道になるかなんて想像もしなかったあたしは、愚かにも簡単に信じてしまったんだ。
お母さんを生かしてもらう為にあたしが差し出せるものは、あたし自身しか無かったから。
997